懲戒解雇(ちょうかいかいこ)とは、社内の秩序を著しく乱した労働者に対するペナルティとして行う解雇のことで、会社からのペナルティの中で最も重い処分です。公務員の場合、懲戒免職(ちょうかいめんしょく)と呼びます。
日本の社会では労働者の立場は手厚く保護されており、会社は容易には労働者を解雇することはできません。
また、労働者を解雇する場合、解雇予告又は解雇予告手当の支払い等の適正な手続きを履践しなければなりません。通常の解雇でさえそれほどハードルが高いのですから、ペナルティとして行う懲戒解雇は、よほどの特別な事情がなければこれを行うことはできないといえます。
今回は、懲役解雇の基準と方法、また、不当性のある懲戒解雇が考えられる方への対処法を解説していきます。
自分の処分の重さに納得がいかない方へ
労働者を懲戒解雇するのは、最も重い処分です。
従って懲戒解雇するには、適切な解雇理由がなければなりません。
また懲戒解雇をされてしまうと、今後の転職活動も不利になることが予想されます。
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この記事に記載の情報は2023年01月24日時点のものです
まず、冒頭でもご説明しましたが、懲戒解雇は会社によるペナルティの中で最も重い処分であり、かつ労働者との雇用関係を直ちに打ち切る重大な処分です。なお、解雇の種類は大きく分けて3つに別れます。
会社の経営不振等の経営上の理由による解雇である「整理解雇」。いわゆるリストラです。経営上の理由以外の理由で労働者との雇用契約を解除する「普通解雇」。そして、今回紹介する、会社から労働者に対するペナルティとして解雇する「懲戒解雇」です。
整理解雇と普通解雇の場合、会社は30日前に解雇予告をして解雇するのが通常ですが、懲戒解雇の場合、解雇予告なしで即時解雇するのが通常です。
ただし、即時に懲戒解雇する場合であっても、労働基準監督署による解雇予告除外認定を受けない場合には、解雇通告手当の支払いが必要となります(したがって、実務的には、懲戒解雇の場合でも解雇予告手当が支払われるのが通常です。)。
詳細は「解雇予告された人が知っておくべき解雇予告手当とは」をご覧ください。
懲戒解雇では退職金が支払われないことが多い
また、懲戒解雇の場合、退職金が支給されないというケースもあります。確かに、会社に対し重大な損害を与えた場合、退職金を支払わないことは、人情的には理解できます。しかし、必ずしも懲戒解雇=退職金の支給不要となるわけではありません。
まず、会社が退職金制度を実施している場合、懲戒解雇の際に退職金を支払わないのであれば、その点を制度上明記しておかなくてはなりません。「懲戒解雇にあたる者には退職金の支給は行なわない」といった内容です。
また、一口に懲戒解雇といっても、事案の重大さはケースバイケースです。退職金の不支給又は減額も、当該事案の重大さや対象者の在籍時の貢献に応じて認められますので、懲戒解雇だから一律不支給とか一律減額ということではありません。
「どのような場合に懲戒解雇とすることが許されるのか?」と疑問に思う方も多いでしょうが、結論から言いますと、明確な基準はありません。もっとも、懲戒解雇が許されるかどうかのチェックポイントはいくつかあります。
就業規則上の規定の有無
それと併せて、懲戒解雇の事由は就業規則に明記されている必要があります。例えば、客観的に誰が見ても企業の秩序を乱すような行為(横領など)を行ったとしても、「刑事犯罪にあたる行為を行なった者は懲戒解雇」といった内容が記載されていなければ、懲戒解雇には出来ません。
大企業や社労士に就業規則の作成を依頼している企業は、そのようなことは考えにくいのですが、従業員10名以下の就業規則の作成義務が無い企業などは、そもそも就業規則が無いこともあります。
就業規則にも雇用契約にも懲戒解雇事由が明記されていない場合、どんなに悪質な行為をしたとしても、懲戒処分として解雇することはできません(この場合は普通解雇により処理することになります。)。
適正な手続
懲戒解雇は労働者に対するペナルティであるため、原則として処分を行う前に対象者に弁解の機会を与える必要があります。このような手続を履践しない場合は適正な手続を踏まないものとして、懲戒解雇は無効となる可能性があります。
解雇の合理的理由及び社会的相当性
懲戒解雇の合理的理由とは、対象者の行為が企業秩序を著しく乱す行為であったかどうか(具体的には、規定された懲戒解雇事由に該当するかどうか)の問題です。また、仮に合理的理由がある場合(懲戒解雇事由に該当する場合)でも、懲戒解雇という選択が社会的に見て相当かどうかも問題となります。
例えば、企業秩序を乱したといえるが、会社に実損が生じていないとか、解雇せずとも秩序の回復が可能であるという場合は、懲戒解雇の社会的相当性は否定されます。

それでは、懲戒解雇に値する重大な問題とはどこからになるのでしょうか。明確な基準はありませんが、一例として以下のような事項が考えられます。
業務上の地位を利用した犯罪行為をした場合
こちらは想像がつきやすいと思いますが、経理職員が不正経理によって横領行為をしていたり、営業職員が架空取引を計上して利益を得ていたという場合は、懲戒解雇となるのが一般的です。
これらが刑事事件として立件されるかどうかは別として、このような行為は会社に対する深刻な背信行為であり、かつ会社の損害も通常大きなものとなりますので、懲戒解雇の理由には十分に当てはまると考えられます。
会社の名誉を著しく害する重大な犯罪行為
業務とは関わりのない私生活上の行為であっても、殺人、強盗、強姦などの重大犯罪や会社の名声を著しく貶めるような犯罪行為がある場合(例えば、鉄道会社の駅員が常習的な痴漢行為で逮捕された等)、懲戒解雇が認められます。
経歴の重大な詐称
会社の採用判断に重要な影響を与える経歴(例えば大卒の有無、特定資格の保有の有無等)を詐称していた場合、会社の採用プロセスへの深刻な背信行為として、懲戒解雇が許される場合があります。
長期間の無断欠勤
長期間の無断欠勤は会社にも損害を与えます。例えば、対象者が正当な理由なく1ヶ月以上無断欠勤を続け、度重なる出勤命令も拒否し続けた場合には、懲戒解雇が認められる可能性があります。
重大なセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント
セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントは、通常は一発で懲戒解雇となるものではありません。しかし、強制わいせつや強姦に類似するようなセクシャル・ハラスメントや恐喝や傷害に至るようなパワー・ハラスメントの場合は、事案の悪質性から懲戒解雇が認められる可能性があります。
懲戒処分を受けても同様の行為を繰り返す
軽度のパワハラ・セクハラ、単純な無断欠勤、業務命令違反等については、当初は注意指導や軽微な懲戒処分 (訓告や減給など)がされることがほとんどでしょう。
しかし、このような是正措置を講じても本人がこれを改善せず、同様の行為を繰り返す場合は事案が悪質であるとして懲戒解雇が認められる可能性があります。
不当に懲戒解雇を受けていないかチェックするポイント
いかがでしょうか。懲戒解雇が許される場面が極めて特別な場合に限定されていることをお分かりいただけたと思います。もしも懲戒解雇をしようとしている又は懲戒解雇されてしまったという方がいれば、その懲戒解雇が有効なものか慎重に検討して下さい。
ワンマン経営の零細企業では、社長が少しでも気に入らないと懲戒解雇にするなどと言うケースもあるようですが、そのような懲戒解雇は往々にして不適法です。
まずは就業規則を確認
ご説明の通り、懲戒解雇をする場合、その該当理由が就業規則や雇用契約書に記載されていなければなりません。懲戒解雇された理由が、就業規則にしっかり記載されているかを確認しましょう。
なお、就業規則は労働者に周知していなければその効力を生じません。そのため、担当部署や上司に「就業規則を見せてください」とお願いしても、断られたような場合、就業規則が周知されていないとして、規則自体が無効となるケースもあります。
解雇理由証明書の発行を申請
懲戒解雇に限らず、解雇されてしまった際は、「解雇理由証明書」の発行をしてもらうことが可能です。これは後に不当解雇であると主張する際の証拠にもなります。
解雇理由が上記のような重大な事項ではなかった場合、懲戒解雇が不当である可能性も高いと言えます。
例えば、「会社の情報を漏洩させた」という理由であっても、「競合会社に情報を伝えていた」ことと、「会社のPCを家に持ち帰っていた」程度では重大さが違います。パワハラ・セクハラなども同じです。
程度によっては、懲戒解雇は行き過ぎだとも考えられます。ただ、この場合、客観的な意見が必要になります。一度弁護士に相談することが賢明です。
それでは、懲戒解雇が不当と考えられる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。こちらでは、不当な懲戒解雇が考えられる方への対処法をお伝えします。
会社に懲戒解雇であるのか普通解雇であるのか確認する
社長や上司から「解雇だ!明日から来なくていい!」と言われたとしても、これが雇用契約を打ち切る解雇の意思表示であるのか、それとも単なる感情的な叱責であるのかは明確ではありません。
後者の場合は謝罪や弁解をすれば済む話ですので、解雇の効力云々の問題ではありません。もし、当該発言が前者の趣旨である可能性がある場合は、発言者に対して「それは雇用契約を一方的に打ち切るという意味ですか」と確認しましょう。
もし、YESであれば会社に「解雇するのであれば書面で通知するように」と求めて下さい。また、仮に解雇の意思表示であっても、これが懲戒解雇であるのか普通解雇であるのかで取扱いが異なります。したがって、可能であれば、解雇がそのいずれかであるかも確認しましょう。
弁護士に相談する
懲戒解雇は、会社での処分の中で最も重いものです。刑法で言えば「死刑」を言い渡されたことと同じです。会社から一方的な解雇(懲戒解雇)を言い渡された場合は、自分一人で戦わず、労働問題を得意とする弁護士に相談して下さい。
また、懲戒解雇は問題行動を起こした労働者側に非があるので、会社も本人の言い分を聞き入れてくれにくく、社内での味方も少ないでしょう。それらを踏まえても、弁護士への依頼が一番だと言えます。
当サイト「労働問題弁護士ナビ」では、労働問題を得意とする弁護士を一覧から探しやすくなっておりますので、不当な扱いでお困りの方は、一度弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。
懲戒解雇されるとその後の転職も不利に
懲戒解雇されると、その後の転職活動が大きく不利になります。「賞罰」の記入欄がない履歴書にわざわざ「懲戒解雇で退職」と書く人はいないでしょうし、面接時に前職の退職理由を聞かれなければ、わざわざ伝える必要もありません。
しかし、懲戒解雇では離職票に「重責解雇」と、しっかり記載されてしまう場合があります。離職票は、雇用保険などの切り替えにも必要になるので、転職先の企業から提出を要求されることも十分に考えられます。
「重責解雇」と記載されていると、以前の会社で何か重大な問題があったことが判明してしまいます。ましてや、面接時に「自己都合で退職しました」などと伝えていれば、それこそ経歴詐称で次の会社でも解雇理由に当てはまってしまいます。
反省も大事
懲戒解雇の有効性とは別の話ですが、仮に懲戒解雇が無効であっても、自分に非があって懲戒解雇を言い渡された場合は、自分の行動について反省することは大切です。
労使間の問題はいずれかが100%悪いということは少なく、どちらにも原因があることが大半です。
もし無反省のままであれば、いずれまたトラブルを起こしてしまう可能性もあり、トラブルを繰り返すとまともな職場では働けなくなってしまうこともあり得ます。
自分の行いを真摯に省みる姿勢も大切なのです。
いかがでしょうか。懲戒解雇は上記の通り重大な処分です。そのままでいると、その後の就職活動にも悪影響があります。少しでも懲戒解雇に疑問を感じたら弁護士への相談・依頼を検討して下さい。
自分の処分の重さに納得がいかない方へ
労働者を懲戒解雇するのは、最も重い処分です。
従って懲戒解雇するには、適切な解雇理由がなければなりません。
また懲戒解雇をされてしまうと、今後の転職活動も不利になることが予想されます。
少しでも自分の処分に納得がいかない方は、弁護士への相談・依頼がおすすめです。
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