会社から不当解雇を受けた際は、解雇の無効を主張して復職したり、解決金の支払いを求めて退職に応じたりするなどの選択肢があります。
不当解雇の訴えに時効はないため、解雇されてから時間が経っていても会社と争うことは可能 です。
ただし、だからといって対応を後回しにしてしまうと、不当解雇の主張が認められにくくなったり、裁判にもつれ込んで問題解決が長引いたりするおそれがあります。
さらに、慰謝料や退職金などの不当解雇に関する金銭請求権には時効があるため、時間が経つと時効が成立して請求できなくなるリスクもあります。
本記事では、不当解雇の時効や不当解雇に関係する金銭請求権の時効期間、時効成立が迫っている場合の対処法などを解説します。
会社に解雇されて納得いかない方へ
会社が従業員を解雇するためには、適切な解雇理由がなければいけません。
しかし、なかには従業員が何も知らないことに乗じて、理不尽な理由で解雇してくるようなケースもあります。
もし自分の解雇に納得いかない場合は、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談・依頼すれば、主に以下のようなメリットが望めます。
当サイト「ベンナビ労働問題」では、不当解雇トラブルが得意な全国の弁護士を掲載しています。
多くの法律事務所では初回無料相談を実施しているので、まずは気軽にご利用ください。
自分の解雇が適切か不当か判断してくれる
会社に対して慰謝料請求・損害賠償請求できるか判断してくれる
会社との交渉や裁判手続きを代行してくれる など
【結論】不当解雇を訴えることに時効はない
冒頭でも触れたとおり、不当解雇の主張自体に時効はありません。
不当解雇トラブルでは、解雇された従業員は地位確認請求をおこない、現在も従業員としての地位を有していることの確認を求めることが可能 です。
地位確認請求に時効は定められておらず、解雇後から時間が経っていても対応可能です。
不当解雇であることが認められれば、解雇が撤回されて復職となる場合もあれば、会社から解決金を受け取って退職となる場合もあります。
ただし、不当解雇トラブルでは、時間の経過とともに状況が不利になるおそれがあります 。
詳しくは「不当解雇の主張に時効がなくても早く請求したほうがよい3つの理由」で後述しますが、納得のいく形で決着を付けるためには速やかに動くことが大切 です。
不当解雇に関係する金銭請求権には時効がある
不当解雇の主張自体に時効はありませんが、以下のような不当解雇に関係する金銭の請求権には時効が定められています。
不当解雇に関係する金銭の請求権
時効期間
①未払い賃金・残業代請求の時効
原則3年
②慰謝料請求・損害賠償請求の時効
3年
③退職金請求の時効
5年
④解雇予告手当の時効
2年
ここでは、不当解雇に関係する金銭請求権の時効について解説します。
1.未払い賃金・残業代請求の時効|原則3年
未払い賃金の時効は原則3年です。
不当解雇の主張が認められて解雇が無効になった場合、解雇扱いになっていた期間も従業員として雇用状態が続いていたことになるため、会社に対してバックペイを請求できます。
未払い残業代も賃金の性質を有するものであり、時効は原則3年 です。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法第115条
なお、2020年の民法改正により、2020年4月1日以降の未払い賃金の時効は5年ですが、以下のとおり当面の間は経過措置として3年となっています。
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
引用元:労働基準法附則143条3項
2.慰謝料請求・損害賠償請求の時効|3年
慰謝料請求・損害賠償請求の時効は3年です。
不当解雇トラブルの中でも悪質なケースでは、精神的苦痛に対する金銭的補償として慰謝料の請求が認められることもあります。
慰謝料請求の時効は発生原因などによっても変わりますが、不当解雇トラブルでは「不法行為による損害および加害者を知ったときから3年」が時効となるのが一般的 です。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法724条1号
なお、慰謝料請求の時効については「どこから数えて3年か」で争いになるケースもあります。
なかには「解雇扱いになっていた期間中は不法行為が継続していた」として、解雇日から3年を過ぎていても慰謝料請求が認められる場合もあり、状況に応じた判断が必要です。
3.退職金請求の時効|5年
退職金請求の時効は5年です。
会社から解雇された場合でも、なかには退職金を受給できることもあります 。
会社側に退職金の支払い義務が発生するかどうかは勤務先のルール次第 ですので、詳しくは就業規則や雇用契約書を確認しましょう。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法第115条
なお、就業規則や雇用契約書に明示されていなくても「これまで慣例的にほかの従業員に退職金が支払われてきた」というようなケースでは受給できることもあります。
退職金の受給条件や解雇時の扱い について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
4.解雇予告手当の時効|2年
解雇予告手当の時効は2年です。
会社が従業員を解雇する場合、会社側は解雇日の30日前には予告しておく必要 があります。
解雇日の30日前までに予告をおこなわなかった場合、会社は従業員に対して解雇予告手当を支払わなければいけません (労働基準法第20条1項 )。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法第115条
不当解雇の主張に時効がなくても早く請求したほうがよい3つの理由
不当解雇の主張自体に時効はないものの、対応を後回しにしていると以下のような事態に陥って不利益を被るおそれがあります。
不当解雇の証拠が失われる
解雇を黙認したものと評価される
会社の経営が悪化して回収が困難になる
ここでは、不当解雇トラブルで迅速に対応したほうがよい理由を解説 します。
1.不当解雇の証拠が失われて請求が認められなくなる可能性があるから
解雇されてから時間が経ってしまうと、不当解雇の証拠が失われて慰謝料などの請求が認められなくなる可能性があります。
不当解雇トラブルで会社と争う場合は、以下のような「不当解雇の主張を裏付ける証拠」が必要 です。
解雇理由証明書
解雇について会社と話し合った際の音声データ
解雇理由について会社とやり取りした際のメール記録
人事評価や賞与計算書などの勤務成績に関する資料 など
時間の経過とともに証拠は失われていきますし、なかには会社によって証拠を破棄・改ざんされたりするおそれもあります。
不当解雇の証拠の集め方や、証拠が集まらない場合の対処法 について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
2.解雇を黙認したものと評価されるおそれがあるから
解雇されてから時間が経ってしまうと、解雇を黙認したものと評価されるおそれがあります。
解雇直後であればスムーズに話がまとまることもありますが、長い空白期間があると「なぜ今さら不当解雇を主張してくるのか」などと反論してきて交渉が難航することもあります。
会社との交渉がまとまらない場合は、調停・審判・訴訟などに移行して解決を目指します 。
調停・審判・訴訟でも、これまで不当解雇を主張してこなかった理由について説得力のある主張ができなければ、最終的に不満の残る形で決着が付く可能性があります。
3.会社の経営が悪化して回収が困難になるリスクがあるから
解雇されてから時間が経ってしまうと、会社の経営悪化によって慰謝料などの回収が困難になるリスクもあります。
経営状態は時間の経過とともに大きく変化することもあり、なかには自分が知らない間に経営が大きく傾いてしまう場合もあります。
不当解雇について説得力のある主張ができたとしても、必ずしも納得のいく金額を回収できるとはかぎりません。
会社側に十分な支払い能力がなければ回収は難しく、特に会社が倒産した場合は何も受け取れずに終結となる可能性 もあります。
不当解雇に関する時効成立が迫っている場合の対処法
未払い賃金や未払い残業代などの時効成立が迫っている場合は、時効の完成猶予や更新を検討しましょう。
時効の完成猶予:時効の完成が一定期間だけ猶予される制度のこと
時効の更新:時効のカウントがリセットされて、新たにカウントが始まる制度のこと
たとえば、金銭の支払いを求める旨を記載した内容証明郵便を会社に送付すれば「催告」となり、送付後6ヵ月間は時効の完成が猶予 されます(民法第150条1項 )。
送付後は、完成猶予期間中に裁判手続きの準備を済ませて移行することで「時効の更新」となり、カウントがリセットされて時効成立を防止できます(民法第147条1項 )。
ただし、ミスなくスムーズに手続きを済ませるためには相応の知識や経験が必要 です。
特に時効成立が間近に迫っているようなケースでは、弁護士に相談してサポートしてもらうことをおすすめ します。
不当解雇の時効に関するよくある質問3選
ここでは、不当解雇の時効に関するよくある質問について解説します。
1.不当解雇の訴えの時効は?
不当解雇の訴えに時効はありません。
ただし、不当解雇に関する金銭請求権には以下のような時効が定められています 。
不当解雇に関係する金銭の請求権
時効期間
①未払い賃金・残業代請求の時効
原則3年
②慰謝料請求・損害賠償請求の時効
3年
③退職金請求の時効
5年
④解雇予告手当の時効
2年
上記の期間を過ぎて時効が成立した場合、請求権は消滅して請求できなくなります 。
不当解雇トラブルで会社と争う際は、なるべく早い段階から動いておくことが大切です。
2.不当解雇に関する時効が迫っている場合はどうするべき?
未払い賃金や未払い残業代などの時効成立が迫っている場合は、時効の完成猶予や更新を検討しましょう。
たとえば、内容証明郵便による催告をおこなえば送付後6ヵ月間は時効の完成が猶予され、裁判手続きをおこなえば時効の更新となってカウントがリセット されます。
ただし、ミスなくスムーズに手続きを済ませるためには相応の知識や経験が必要 です。
特に時効成立が間近に迫っているようなケースでは、弁護士に相談してサポートしてもらうことをおすすめ します。
3.会社が倒産しても争うことは可能?
すでに会社が倒産している場合、不当解雇トラブルを争うのは困難です。
ただし「会社から不当解雇を受けて、まだ受け取れていない賃金がある」というようなケースでは、救済措置として未払賃金立替制度を利用できる可能性 があります。
未払賃金立替制度とは、国が未払い賃金の一部を立て替えてくれる公的制度のことです。
利用要件を満たしていれば、退職時の年齢に応じて88万円~296万円を上限に未払い賃金の立て替えが受けられます 。
未払賃金立替制度の利用要件や利用の流れ について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
さいごに|不当解雇で会社と争うなら、ベンナビ労働問題で相談を
不当解雇の訴えに時効はありませんが、不当解雇に関する金銭請求権には時効があります。
また、時間の経過とともに証拠が失われたりして状況的に不利になる可能性も高まるため、不当解雇トラブルを争う場合は速やかに動くことが大切です。
会社と争う際は、まずは弁護士に相談・依頼することを検討 しましょう。
弁護士なら、不当解雇の判断や時効成立の時期をアドバイスしてくれるほか、時効の完成猶予や更新の手続きを代行してもらうことも可能です。
当サイト「ベンナビ労働問題」では、不当解雇などの労働問題が得意な全国の弁護士を掲載しています。
お住まいの地域から対応可能な弁護士を一括検索でき、初回相談無料の法律事務所も多く掲載しているので、まずは気軽にご相談ください。