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ホーム > 労働問題コラム > 残業代請求 > 接待は労働時間に含まれるの?残業時間との関係と残業代が支払われるケース

接待は労働時間に含まれるの?残業時間との関係と残業代が支払われるケース

更新日:2020年05月31日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
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接待は取引先との円満な関係を構築するための手段として知られています。

 

近年では経費削減などを理由に積極的な接待を控える企業が増えていますが、それでも完全になくなっているわけではありません。

 

接待に取引先との関係を円滑にする効果が一定程度あることは否定しませんが、就業時間外の接待が続けばプライベートの時間が削られ労働者のワークライフバランスを崩すことにもなりかねません

 

そのため、現代社会では時間外・休日に接待に参加することを疑問視する声が少なくありません。

また、接待に関して、労働時間として賃金支払の対象となるのではないかと、疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

 

そこでこの記事では、接待と労働時間の関係について解説します。

接待が労働時間と評価し得るケース、評価しにくいケースを確認しましょう。

 

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そもそも労働時間とは                           

そもそも賃金支払の対象となる労働時間とはどんな時間を指すのでしょうか。

 

労働時間に関する考え方

労働時間の定義は労働基準法などの法律で明記されているわけではありませんが、最高裁判例により「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と考えられています(平成12年3月9日 三菱重工業長崎造船所事件)。

 

作業服の着脱や準備、移動などの時間が労働基準法の労働時間にあたるとされた事例ですが、労働者に対する拘束時間が労働時間かどうかを判断するための基本的な考え方です。

 

労働者が始業時刻前及び終業時刻後の所定の入退場門と更衣所等との間の移動、終業時刻後の洗身等、休憩時間中の作業服及び保護具の一部の着脱等に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当しないとされた事例

 

裁判年月日 平成12年 3月 9日
裁判所名 最高裁第一小法廷
裁判区分 判決
事件番号 平7(オ)2030号
事件名 賃金請求上告事件 〔三菱重工業長崎造船所事件・一次訴訟・組合側・上告審〕
裁判結果 上告棄却
文献番号 2000WLJPCA03090003

 

使用者の指揮命令下に置かれているかどうかは、実態を踏まえて客観的に評価・判断されるものです。そのため、就業規則や労働契約などで「接待は労働時間としない」と定めていたり、労働者と個別に「接待は労働時間としない」旨合意したとしても、直ちに接待時間の労働時間制が否定されるものではありません

厚生労働省のガイドラインでも使用者の指揮命令下に置かれているかどうかは「労働者の行為が使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであること」とされており、裁判所も基本的にこの見解に立っています。

※参照:厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

 

接待時間が労働時間となる場合の意味

ここで、接待時間が労働時間にあたるとどのような影響があるのか、その意味を整理してみましょう。

 

労働基準法では、労働者が労務を提供した時間については賃金を支払わなければならない旨が定められています(24条、37条等)。

 

そのため、接待時間が労働時間と評価されるのであれば、接待に参加した労働者は当該時間に対応する賃金・割増賃金を請求することができ、会社はこの支払を拒むことはできないことになります。したがって、接待時間が労働時間かどうかは、労働者が接待をした時間について、賃金や割増賃金の請求をできるのかという問題と言い換えることもできるでしょう。

また、賃金支払以外の問題として、接待時間が労働時間となる場合、接待に参加した労働者が接待中や接待の行き帰りに事故に巻き込まれてケガをしたような場合、労働災害や通勤災害と認定されて一定の補償を受けることができます

 

 

接待中の時間は「労働時間」とはなりにくい理由

一般的には、たとえ会社取引先を相手とする接待であっても、これに参加する時間は労働時間とはなりにくいと考えられています

 

労働者の立場からすれば、プライベートの時間を削られて、会社取引先とのやり取りをしなければならないのに、なぜこれが労働時間とならないのか納得できないかもしれません。

 

しかし、以下のような事情を考慮すると、接待時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間とはなかなかに評価しにくいのが現実です。

 

業務との関連性が希薄である

接待は、取引先との良好な関係を維持・構築するために行うことが多く、業務との関連性は否定されません。しかし、接待の場で行われるのは、ゴルフであったり、飲食であったり、必ずしも業務とは直接関係しない事柄が多いと思われます。

 

このように業務との関連性が希薄であることを踏まえると、接待時間を直ちに労働時間と評価しにくい側面は否定できません。

 

具体的な拘束性が乏しい

会社の業務は、その内容、方法について会社から具体的指示があり、業務遂行について一定の管理を受けるのが通常です。他方、接待については、日時、場所、内容、方法等について明確な指示がされることは少なく、また、当日の接待についても会社から管理を受けることも基本的にありません

 

気持ちはわかりますが、これも接待時間を労働時間と評価しにくい理由です。

 

参加が強制されないケースもある

会社の業務について指示があった場合、労働者はこれを拒否することはできません。しかし、接待については、労働者に別途都合があればこれを拒否することができるケースは多いと思われます。

 

このように、労働者において参加について諾否の自由が一定程度認められていることも、接待時間を労働時間と評価しにくい理由といえます。

 

 

接待時間が労働時間になり得るケース

接待時間が労働時間となりにくい理由は上記のとおりですが、逆にこれら理由がクリアされれば接待は労働時間となり得ます。例えば、以下のような場合には接待の時間は労働時間と認められやすくなります。

 

会社から参加を義務づけられている場合

会社が特定の接待への参加を義務づけており、労働者においてこれを拒否することが認められていない、又は実質的に拒否することが困難と認められる場合は、接待時間への参加は労働時間と評価されやすくなります。

 

業務との関連性が強固な場合

接待時間においてなされるやり取りが、業務との関連性が強固である場合、接待時間は労働時間であると評価されやすくなります

 

例えば、接待時間中の大部分が契約交渉・商談にあてられたり、会社からの提案・企画のプレゼンにあてられるというような場合には、接待時間を労働時間と認める余地はあろうかと思われます。

 

接待時間中にやり取りについて会社からの管理を受ける場合

接待の内容・場所・時間について会社に詳細な報告を上げることとなっていたり、接待に参加した上司等がやり取りについて記録・管理するなどしていた場合には、接待時間が労働時間となる余地があります。

 

なお、接待への参加時間が労働時間として認められた事例として以下のような事例があります。この事例は、労働災害の事案ではありますが、一定の参考にはなろうかと思われます。携帯電話端末を扱うノキア・ジャパンの社員が、接待中にくも膜下出血で死亡したのは過労が原因だと認められた事例です。遺族が大阪中央労働基準監督署に対しておこなった労災請求は当初認められませんでしたが、大阪地裁が不支給決定の取消を言い渡しました。

判決の中で接待の業務起因性について、次のような事情から関係者との飲食はそのほとんどが業務の延長であったと述べられています。

 

  1. 接待が顧客との良好な関係を築くためのものであり会社も業務性を認めていた
  2. 協力会社へ無理な対応を依頼する立場であり接待の必要性があった
  3. 会議では議論しにくい技術的な問題点を具体的に議論する場だった
  4. 酒が飲めず接待が苦手だったが週に5回ほどの接待に参加していた
  5. 9か月で48回が交際費として請求されていた

※参照:労政ジャーナル|№1001号 労働判例 「国・大阪中央労基署長(ノキア・ジャパン)事件」

 

 

接待と労働時間について疑問があれば弁護士に相談を

上記の通り、接待への参加が労働時間となる場合、労働者は相応の賃金を請求できます

 

例えば、

 

  • 接待に参加した時間が1日8時間・1週40時間を超えた時間となれば時間外労働に係る割増賃金を請求できますし
  • 接待が法定休日に行われていれば休日労働に係る割増賃金を請求できます
  • 接待が深夜帯8午後10時~午前5時)に行われていれば深夜労働に係る割増賃金

 

を請求できます。

 

しかし、実際に、接待が労働時間であることを的確に指摘して賃金請求を行うことは、労働者個人には困難であることが通常です。そのため、実際にアクションを起こす場合は最低でも弁護士に相談するべきですし、通常は弁護士に対応を依頼するべきでしょう。

 

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まとめ

接待と労働時間の関係と影響について解説しました。接待が労働時間だと認められるには高いハードルがありますが、可能性はゼロではありません。

 

接待が労働時間だと認められた場合には賃金の請求も可能ですので、まずは一度弁護士へ相談してみることをおすすめします。

 

請求に際して必要な証拠収集のアドバイスや賃金の計算、会社との交渉などさまざまなサポートが受けられます。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事は労働問題弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※労働問題弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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