「残業代がきちんと支払われていない」
「会社に対して請求したいが、必要な証拠がどれかわからない」
上記のような悩みを抱えている方もいるでしょう。
残業代の未払いは、会社が従業員に対して負う賃金支払義務を怠る行為であり、民事上の責任が生じます。
厚生労働省の「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年) 」によれば、残業代・賃金の不払いに対して厚生労働省が監督指導した件数は2万2,354件にのぼり、そのうち96.2%にあたる2万1,495件では未払い分が支払われて解決しています。
残業代未払い問題は、いまだに深刻な社会問題となっており、残業代が支払われない労働者としては今すぐにでも解決策を打ちたいところでしょう。
本記事では、未払いとなっている残業代の請求方法や対処法、会社に支払わせるための手順などを解説 します。
未払いの残業代を請求したい方は、ぜひ参考にしてください。
未払い残業代を請求したいと考えている方へ
会社に未払い残業代を請求したところで、すんなり支払いを認めるでしょうか?
会社に残業代を支払わせるためには、明確な証拠と法的に正しい主張が必要 です。
未払い残業代を請求したい方は弁護士への相談・依頼がおすすめ です。
弁護士に相談・依頼すれば、以下のようなメリットがあります。
残業代を請求できる可能性があるかがわかる
未払い残業代を請求するための証拠集めのアドバイスがもらえる
請求できる残業代を正確に計算してもらえる
会社との交渉を代理してもらえる など
当サイト「ベンナビ労働問題」では、残業未払い問題が得意な全国の弁護士を掲載しており、初回相談無料の弁護士も多数掲載 しています。
まずは無料相談を活用して、未払い残業代の請求方法や証拠収集の助言などを受けてみることをおすすめします。
未払い残業代を請求できるケース・できないケース
そもそも、残業代が発生していなければ請求することはできません。
ここでは、未払い残業代を請求できるケースとできないケースを紹介します。
未払い残業代を請求できる11のケース
一般的な労働者であれば、所定労働時間を超えて働いた場合は残業代の支払いを受ける権利が生じます。
たとえば、以下のような方は未払い残業代を請求できる可能性が高いです。
会社の定める所定労働時間を超えて働いているのに、残業代が支払われていない方
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働したのに、割増賃金(1.25倍)の支払いがない方
22時〜5時までの深夜労働に対して、深夜労働の割増賃金(1.5倍)の支払いがない方
休日労働に対する割増賃金(所定休日1.0倍、法定休日1.35倍)の支払いがない方
本来労働時間に含まれるはずの時間をカウントされていない方(待機時間や移動時間など)
退勤後に持ち帰り残業をしている方
経営者と一体となり仕事をおこなうはずの管理監督者だが、実態は「名ばかり管理職」の方(店長職など)
裁量労働制という理由で、全ての残業代が免除されている方(深夜労働をした場合は深夜割増賃金が発生する)
そもそも裁量労働制の要件を満たしていない労働者の方
変形労働時間制でも、1ヵ月または1年単位で見たときに所定労働時間を超えている方
固定残業制(みなし残業)でどれだけ働いても残業代が一定の方 など
あなたに当てはまるものがひとつでもあれば、残業代を請求できる可能性があります。
なかには、会社の経営者側が正しいルールを知らないということもあり、もし判断が難しい場合は弁護士に相談することをおすすめ します。
未払い残業代を請求できない8つのケース
未払い残業代を請求できないケースとしては、主に以下のようなケースが挙げられます。
雇用形態
具体例
①事業場外のみなし労働制
外回りの営業職などに多く、「一定時間(所定時間分)を働いたものとみなす場合」と「通常その業務を遂行するのにかかる時間分労働したものとみなす場合」がある
②裁量労働制
専門職や経営企画に携わる労働者などに適用され、労働力を労働時間ではなく「一定の成果で評価すべき」という考え方
③フレックスタイム制
一般的には、労働時間を1ヵ月以内の一定単位で管理して賃金精算をおこなう制度のこと。一定期間単位で労働時間を集計するため「1日8時間、1週間40時間」の法定労働時間を超過して働く日があっても、ただちに残業代は発生しない
④固定割増賃金制度
当該固定支給分については割増賃金の支払いをしたものとして処理されるため、固定支給分を超える割増賃金が発生しない限り、別途の精算を求めることはできない
⑤管理監督者
経営者と一体的立場にある労働者。労働基準法の定める「管理監督者」に該当する場合、時間外・休日労働に係る割増賃金の請求はできない
⑥天候や自然条件に左右される労働者
農業・林業・漁業などに携わる労働者
⑦断続的業務の労働者
手待ち時間の多い運転手や事故待ちの業務など
⑧公務員全般
一部の地方公務員、国家公務員、公立の教員など
上記以外にも、適正な割増賃金の計算や、休日労働に対して適切な残業代の計算がなされている場合も未払いの残業代は発生しません。
残業代未払いでよくあるトラブル8選
「うちの会社は残業代が出ないから…」などと、請求が難しいと考えている方もいるかもしれませんが、残業すればそれに対応する賃金を得られるのが原則 です。
ここでは、会社が残業代の支払いを免れるために用いる代表的な手口を解説します。
会社が残業代を支払わないと明言している
定時後はタイムカードを切らせてから仕事をさせる
1ヵ月の残業代の上限を決めて超過分を支払わない
年俸制を理由に残業代を支払わない
会社では残業させずに家で仕事させる
管理職になった途端に残業代がカットされる
残業時間の端数を切り捨てて支払わない
みなし労働時間制を理由に残業代を支払わない
1.会社が残業代を支払わないと明言している
「そもそも、うちは残業代が出ないことを最初に説明している」
「残業代が出ない旨を記載した雇用契約を締結している」
上記のような理由で、残業代を支払わない会社もあります。
しかし、雇用契約書などに残業代は支払わないと書かれていたとしても、法の定める労働者の権利が消滅するわけではありません。
法律には「任意規定」と「強行法規」という2種類の法律があり、残業代の支払い義務は「強行法規」に該当し、当事者間の合意によって適用を排除することはできないのです。
任意規定:当事者間の合意があれば、法規とは異なるルールを定めることができるもの
強行法規:当事者間の合意があっても、法規と異なるルールを定めることができないもの
つまり、強行法規に反するルールを当事者間で定めたとしても無効となります。
2.定時後はタイムカードを切らせてから仕事をさせる
残業が発生する場合、定時終業としてタイムカードを打刻させたあとで、タイムカードに記録しない状態で残業をさせる会社もあります。
残業行為をおこなった事実には違いありませんので、会社は実際に稼働させた残業時間に応じた賃金の支払い義務を負うことになります。
上記のような慣習が会社全体で蔓延しているようなら、ひとりだけ実際の退社時間にタイムカードを打刻することは難しいかもしれません。
対処法としては、PCのログオフ時刻・メールの送受信記録・個人的な業務日誌などの「実際の退勤時刻を証明する証拠」を残しておくのが有効 です。
3.1ヵ月の残業代の上限を決めて超過分を支払わない
会社側が「残業代は月20時間まで」などとルールを定めて、超過分の残業代は支払わないというケースもありますが、原則として違法となります。
残業代の支払いは法律(強行法規)で定められた義務ですので、会社の一方的な説明や労働者との合意によって上限を定めたとしても無効です。
4.年俸制を理由に残業代を支払わない
「年俸制だから残業代は出ない」というような理由で残業代を支払わない場合もありますが、年俸制でも会社側の残業代の支払い義務が消えることはありません。
会社によっては「年俸制」と「固定残業代制」を複合的に導入しているケースもあるようですが、複合的に導入していても残業代の支払い義務が当然に消えることはありません。
たとえば「年俸額に○○時間分の固定残業代を含む」というようなルールが定められているケースが考えられます。
上記の場合、固定残業代(残業時間)を超過する部分について残業代の支払い義務を負うことは当然ですし、場合によっては定額分についても支払いを要求できる可能性 があります。
5.会社では残業させずに家で仕事させる
残業代を発生させないために、社内では定時で退勤させて、帰宅後に自宅で仕事をさせることもあります。
自宅での業務処理の場合、残業代の支払い対象となる「残業であるかどうか」は判断が難しいところです。
たとえば、特に必要性が高くないのに自己判断で自宅で業務しており、かつ当該業務について拘束性が乏しいという場合は、残業時間には該当しない可能性が高い といえます。
少なくとも、自宅での業務について「残業」として賃金を請求するためには、以下のいずれかに該当することを立証しなければなりません。
上司の指示によって自宅業務をおこなった
上司の許可を得たうえで自宅業務をおこなった
どうしても自宅業務をしなければならなかった など
6.管理職になった途端に残業代がカットされる
「課長や部長は管理職だから」などの理由で残業代を支払わない会社もありますが、必ずしも「管理職は残業代を支払わなくてよい」ということにはなりません。
たとえば、係長などの下位の管理職の場合や、管理職といっても名目上のものに過ぎない場合などは、会社側は残業代の支払い義務を免れられない場合 があります。
いわゆる「名ばかり管理職」の問題は、社内で労働者側が声を上げて社内環境の改善を求めたり、労働基準監督署に申告して当局からの指導がおこなわれたりすることで改善すること もあります。
7.残業時間の端数を切り捨てて支払わない
「退勤時刻は15分単位で切り捨てる」というルールを設けている場合もありますが、単位未満の端数を切り捨てることは違法 です。
法律的には、たとえ1分でも残業代は請求可能であり、会社が一方的に切り捨てることは原則として許されません。
ただし、会社が常に1分単位で労働時間を集計して残業代を計算しようとすると事務処理上煩雑なケースも出てくるため、行政通達では例外的な端数処理も認めています。
具体的には、1ヵ月の総労働時間について「30分未満の切捨て、30分以上は1時間への切上げ」「15分未満の切捨て、15分以上は30分への切上げ」というような処理については、必ずしも労働者に不利となるものではないため許されています。
8.みなし労働時間制を理由に残業代を支払わない
みなし労働時間制とは、1日の労働時間のうち事業場外で業務をおこなう時間が含まれており労働時間の算定が難しい場合、あらかじめ一定の労働時間を労働したものとみなす制度 です。
労働時間を算定するには、実際の労働時間を把握することが必要ですが、外回りの営業マンのような実際の労働時間の管理が難しい場合には本制度が適用される傾向があります。
みなし労働時間制が適用された場合、実労働時間が多いか少ないかにかかわらず労働時間は一定として計算されるため、実労働時間に対応する残業代は発生しないということになります。
なお、営業職の社員に対しては「営業手当」といった名目で支払いをしていることを理由に残業代を支払わない会社などもありますが、営業手当がただちに残業代の支払いであると評価されるものではありません。
みなし労働時間制の適用がない場合、営業手当の支払いがされていても、会社側が残業代の支払い義務を免れないケースも あります。
未払い残業代を請求する際の3つのポイント
会社に対して未払い残業代の請求を考えているなら、以下のポイントを押さえておきましょう。
未払い残業代には時効がある
未払い残業代は退職後でも請求できる
未払い残業代だけでなく遅延損害金も請求できる
ここでは、請求にあたって知っておくべき知識について解説します。
1.未払い残業代には時効がある
未払い残業代の請求については、以下のように時効が定められています。
第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。
② 第百十四条の規定の適用については、当分の間、同条ただし書中「五年」とあるのは、「三年」とする。
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索
時効期間は当分の間「3年」となっており、時効が成立してしまうと請求権が消滅し、未払い残業代は請求できなくなります。
すでに残業代の未払いが発生している場合は、時効が成立する前に速やかに請求手続きに移ることが大切です。
2.未払い残業代は退職後でも請求できる
未払い残業代は、すでに会社を辞めたあとでも請求可能です。
退職後に請求する場合、会社に内容証明郵便を送付して支払いを求め、応じない場合は労働審判や訴訟などの手段に移行して回収を図ることになります。
ただし、上記のとおり残業代請求には時効が定められているため、特に退職してから時間が経っている場合は速やかに時効の進行状態を確認して動きましょう。
時効の数え方や今後の対応などについて不安な場合は、弁護士に一度ご相談ください。
3.未払い残業代だけでなく遅延損害金も請求できる
裁判にて未払い残業代の請求が認められた場合、未払い分の残業代に加えて「遅延損害金」もあわせて受け取れる可能性があります。
遅延損害金の利率は「在籍中の場合」と「退職後の場合」で異なり、在職中の場合は年3%、退職後の場合は年14.6% となっています。
ただし、裁判手続きは複雑で手間がかかり、素人だけでは適切な対応が難しいため、弁護士によるサポートが必要不可欠となります。
未払い残業代請求をする具体的な6つの手順
ここでは、具体的にどのような手順で残業代の未払い請求をすればよいかを解説します。
残業代未払いの証拠を準備する
未払い残業代を計算する
会社側と交渉して請求する
内容証明郵便を送付して請求する
労働基準監督署に申告する
労働審判にて請求する
訴訟にて請求する
1.残業代未払いの証拠を準備する
まずは、残業代が未払いになっていることを証明する証拠を集めましょう。
十分な証拠が揃っていないと、会社と話し合っても請求を認めてくれなかったり、裁判に移行したとしても自分の主張が認められなかったりするおそれがあります。
なお、具体的にどのようなものが証拠になるのかは「未払い残業代の請求で有効な証拠・無効な証拠」で後述します。
2.未払い残業代を計算する
請求前の準備として、現在いくら未払いになっているのかも計算しておきましょう。
以下では、未払い残業代の計算方法について解説します。
2-1.残業代の割増率を確認する
賃金については、労働状況によって以下のような割増率が適用されるので確認しておきましょう。
種類
割増率
法定外残業
25%以上
休日労働
35%以上
深夜労働
25%以上
法定外・深夜労働
50%以上(25%+25%)
休日・深夜労働
60%以上(35%+25%)
一例として、どこから割増率が適用されるのか図で表すと以下のとおりです。
以下では、ケースごとの計算式や計算例を解説します。
2-2.法定外残業の場合の計算方法
法定外残業とは、労働基準法で定められた「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えておこなわれた残業のことです。
法定外残業の場合、以下のような式で算出されます。
法定外残業の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1.25(※)
※時間外労働が60時間/月を超えた場合、超える部分については1.5倍で計算
なお、法律上の中小企業などに該当する企業の場合、当面の間は1.25倍で足りる とされています。
2-3.法定内残業の場合の計算方法
法定内残業とは、会社が定める所定労働時間を超えているものの、労働基準法で定められた法定労働時間の範囲内でおこなわれた残業のことです。
法定内残業の場合、以下のような式で算出されます。
法定内残業の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1(※)
※所定労働時間を超える以上は賃金が発生するものの、法定労働時間の範囲内であるため、割増率は適用されません
なお、未払い残業代の計算が難しい場合は、当サイト「ベンナビ労働問題」の残業代計算ツール がおすすめ です。
残業代計算ツールなら、月収・入社日・退職日・平均残業時間などの項目を選択するだけで、未払い残業代の獲得見込み額を計算できます。
検索結果からは、近くで相談可能な弁護士などもあわせて確認できますので、ぜひご利用ください。
3.会社側と交渉して請求する
請求の準備が整ったら、会社に対して請求しましょう。
会社側に法令遵守の意識があり、従業員側もある程度の譲歩が検討できるのであれば、会社と直接話し合うことによって早期に解決することも可能です。
ただし、あくまでも当事者同士で話し合いの意思がなければ解決は困難ですし、正当な権利行使といえども人と人の交渉事になるため、場合によっては交渉決裂となることもあります。
4.内容証明郵便を送付して請求する
すでに会社を退職している場合などは、内容証明郵便を送付して請求するのが一般的です。
内容証明郵便とは「どのような内容の文書を・誰から誰に対して・いつ送ったのか」などを証明してくれる郵便局のサービスのことです。
内容証明郵便を送付することで、通常の郵便とは違って心理的プレッシャーを与えることができたり、裁判に発展した際は証拠として有効に働いたりするなどのメリット があります。
具体的な記載内容はケースによっても異なりますが、一般的には以下のような形で作成します。
令和○年○月○日
株式会社A
東京都新宿区西新宿○-○-○
労働 太郎 殿
催 告 書
(請求書、通知書でも可)
記
私は、貴社従業員として20●●年○月○日まで勤務していた者です。
20●●年○月○日〜20●●年○月○日まで、●時間の時間外労働に従事していましたが、合計○○万円をお支払い頂いておりません。
つきましては、本書面到達後●週間以内に、上記賃金を下記指定の口座までお支払いくださいますよう請求します。
お支払いに応じて頂けない場合、法的手段に移行いたしますので、ご承知ください。
記
金融機関名 □□銀行
支店名 ○○支店
種類 普通預金
口座番号 XXXXXXXXX
名義番号 ○○○○
令和○年○月○日
東京都新宿区○○
アシロ 太郎 印
5.労働基準監督署に申告する
会社が請求に応じてくれない場合、労働基準監督署に申告するという方法もあります。
労働基準監督署とは、会社が労働関係の法令を遵守しているかどうか監督し、違反している会社に対しては指導や是正勧告などをおこなう機関のことです。
残業代未払いに関する証拠が揃っていれば、労働基準監督署による対応も期待できますし、匿名で相談することも可能 です。
一方、十分な証拠がないと労働基準監督署は動いてくれないほか、匿名相談の場合は対応の優先度が下がりやすい傾向にあるなどの点は注意が必要です。
6.労働審判にて請求する
交渉や内容証明郵便などでは解決が望めない場合、労働審判が有効です。
労働審判とは、労働問題を迅速に解決させるための法的手続きのひとつです。
労働審判の場合、裁判所にて労働審判委員会による仲介のもと話し合いをおこなって解決を図り、原則3回以内の期日で終結 となります。
通常の訴訟に比べて短期間での解決が期待でき、労働審判が確定すれば判決と同様の法的効力を持ちます。
7.訴訟にて請求する
労働審判でも解決しない場合、最終的には訴訟に移行することになります。
訴訟とは、裁判所に訴えを起こし、未払い残業代を請求する方法です。
訴訟の場合、裁判所にて当事者双方が証拠とともに主張立証をおこない、十分に尽くされたところで裁判官による判決や和解などによって終結となります。
ただし、裁判手続きは複雑で手間がかかり、素人だけでは適切な対応が難しいため、弁護士によるサポートが必要不可欠 となります。
なお、未払い残業代の支払いを命じる判決が出たにもかからず会社が従わない場合には、会社の保有資産を差し押さえて回収する「強制執行」をおこなうことが可能です。
未払い残業代の請求で有効な証拠・無効な証拠
未払い残業代の請求を検討している場合、まず考えなければならないことは証拠収集 です。
残業代が未払いになっている事実を裏づける証拠がなければ、基本的に支払いには応じてはくれません。
ここでは、未払い残業代の請求で有効な証拠・無効な証拠について解説します。
未払い残業代の請求で有効な6つの証拠
未払い残業代を請求する際、以下のようなものは証拠として有効に働く可能性 があります。
雇用契約書・労働契約書
就業規則
タイムカード・勤怠記録・日報
会社アカウントでのメールの送受信履歴
帰宅時に利用したタクシーの領収書
日記などの備忘録
1.雇用契約書・労働契約書
未払い残業代を請求する際は、雇用契約書や労働契約書などを準備しておきましょう。
使用者である会社側は、労働者を雇用する際に、労働基準法施行規則第5条で定める事項が記載された書面を交付しなければなりません。
雇用条件通知書などには、給与の計算方法や残業代支給についての取り決めが記載されているため、交付された場合はきちんと保管しておきましょう。
2.就業規則
就業規則とは、会社で労働者が働く際の決まりをまとめた書面 のことです。
労働基準法第89条や第106条 では、労働者に対する周知(閲覧しようと思えばいつでも閲覧できる状態)が必要とされています。
労働者が10人以上いるような職場では、就業規則の作成・周知は会社の義務となります。
就業規則には、就業時間・時間外労働の有無・休日などの未払い残業代の計算で必要な情報が記載されている可能性が高いため、内容を確認しておきましょう。
3.タイムカード・勤怠記録・日報
未払い残業代を請求するためには、労働者側で実際の労働時間を立証する必要があります。
証拠が不十分な場合には、たとえ裁判を起こしたとしても請求が認められない可能性が高いです。
会社が従業員の労働時間を管理・把握する方法はさまざまですが、たとえばタイムカード・勤怠記録・日報などがあれば、労働時間算定の証拠として有効です。
しかし、なかにはタイムカードもなく会社が労働時間を正確に管理・把握していないケースや、タイムカードの打刻後に働くようなケースもあります。
上記のような場合には、以下で紹介する証拠を用いて立証を検討することになります。
4.会社アカウントでのメールの送受信履歴
Eメールであれば、送受信のたびに時間が記録されることから、会社アカウントでのメール送受信履歴も証拠として有力です。
たとえば、メール送信時刻は、当該時刻までは社内で業務に従事していたということを推認できます。
5.帰宅時に利用したタクシーの領収書
「仕事を終えたときには終電がなく、やむを得ずタクシーなどで帰宅した」というような場合では、会計時にもらった領収書が証拠として有力です。
多くの場合、領収書には乗車時間帯が記載されているため、退社時間を証明する際に有効な証拠となります。
6.日記などの備忘録
上記のほかにも、従業員が日々つけていた日記や備忘録なども労働時間算定の根拠となり得ます。
たとえば、日記の中で業務内容・始業時間・終業時間などを記載しておけば、労働時間算定の根拠となり得ます。
また、業務終了時に会社の業務メールや自身の携帯電話のメールなどを使って、業務内容や退社時刻を個人のメールアドレスに送信し、日々の退勤時刻を記録するという方法も有効 です。
未払い残業代の請求で無効になりやすい2つの証拠
一方、以下のようなものについては、証拠として価値が低いと評価される可能性があります。
走り書きのメモ・内容が不正確なメモ
私的なメールなどのやり取りの記録
1.走り書きのメモ・内容が不正確なメモ
従業員がつけていた日記や備忘録などは、残業代請求をおこなう際の証拠となります。
ただし、単なる走り書きのメモで趣旨が不明確な場合や、メールの送信時刻や勤怠記録と著しく齟齬があって内容が不正確と思われる場合などは、証拠としては価値が低いと判断されてしまう可能性 があります。
日記や備忘録などを作成する際は、以下のようなことを意識するとよいでしょう。
日記や備忘録を機械的に作成する
趣旨を簡潔かつ明確なものとする
ことの成り行きを途切れ途切れではなく毎日記録する など
なお、一度作成したあとに後日修正してしまうと、内容の正確性を疑わせることになるため極力避けましょう。
2.私的なメールなどのやり取りの記録
業務用のアカウントであれ個人のアカウントであれ、友人などとの間で私的におこなったやり取りの記録は、労働時間の算定において証拠としての価値が低いと判断されやすい傾向にあります。
私的におこなったやり取りは、内容が不正確である可能性が高いですし、メール送信時刻まで業務をおこなっていたということにもなりません。
ただし「自身のサービス残業について前から相談していた相手に、相談の一環として定期的にサービス残業の事実を申告していた」というような場合には、相談内容自体が証拠となることはあり得ます。
未払い残業代の請求時に証拠がない場合の対処法2つ
現在有効な証拠が手元にない場合でも、残業代請求がまったくできないというわけではありません。
ここでは、未払い残業代の請求で必要な証拠がない場合の対処法について解説します。
1.会社に対して資料の提供を求める
現在手元に資料などが何もなくても、請求の前段階として会社側に資料の提供を求めることで収集できる可能性があります。
労働基準法では以下のように定められており、会社には労働関係に関する重要な書類などについて5年間保存する義務があります。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
引用元:労働基準法 | e-Gov法令検索
従業員側は会社に対して「労働時間の管理・把握に係る資料を提供せよ」と要求することが可能であり、会社は正当な理由なくこれを拒むことはできません。
2.弁護士に相談して文書提出命令を申し立てる
もし自力での証拠収集が難しい場合は、弁護士に相談して文書提出命令を申し立てるのも有効 です。
弁護士に相談して文書提出命令の申し立てをおこなった場合、裁判所は会社に対して勤務記録・就業規則・労働契約書などを開示するように命令します。ただし、文書提出命令を利用できるのは、訴訟を申し立てた後です。
文書提出命令とは、民事訴訟手続において当事者が裁判所へ申立てることにより、証拠を所持している相手方、または第三者に対して、所持する証拠文書の提出を求める命令のことです(民事訴訟法221条)。
引用元:文書提出命令とは証拠を提出させる法的手続き|効果・申立て手順を徹底解説
なお、なかには会社側が残業代の支払いを恐れて開示請求に応じない場合もあります。
しかし、会社が文書提出命令に応じない場合には、裁判所が従業員側の残業代未払いの主張を真実として認めてくれる可能性 が高まります。
未払い残業代の請求でよくある3つの失敗事例
未払い残業代を請求しようとしても、なかにはうまく進まない場合もあります。
未払い残業代の請求でよくある失敗事例としては、以下の3つがあります。
証拠不十分のまま請求してしまう
素人が自力で請求手続きを進めてしまう
労働基準監督署に全て任せてしまう
1.証拠不十分のまま請求してしまう
未払い残業代を請求する場合、基本的には労働者側が具体的に「●万円の残業代を支払ってください」と告げて請求するため、前提として未払い金額を計算しておく必要があります。
ほかにも、タイムカード・シフト表・営業日報・手帳・交通ICカードの利用記録・パソコンのログインやログオフ記録などの証拠も集めておかなければなりません。
上記のような準備を済ませないまま請求してしまうと、会社側が請求に対して反論してきたり、裁判に移行したとしても主張が認められなかったりする可能性が高まります。
証拠集めについては退職後でも不可能ではありませんが、難易度は上がってしまうため、可能な限り在職中に集めておきましょう。
2.素人が自力で請求手続きを進めてしまう
残業代請求を訴訟に依らずスムーズに済ませるためには、未払い残業代を正確に計算して証拠を準備し、会社に対して的確に主張を展開することが大切です。
しかし、素人では正確に未払い残業代を計算することも簡単ではなく、会社側の反論に対してうまく対応できずに交渉が難航してしまうおそれがあります。
1日でも早く未払い残業代を回収したいのであれば、速やかに弁護士に相談して力を借りることをおすすめ します。
3.労働基準監督署に全て任せてしまう
「労働基準監督署が全て解決してくれる」と考えている場合も失敗するおそれがあります。
基本的に労働基準監督署は、法令違反などの明確な証拠が揃っていなければ動いてくれませんし、比較的小規模な事件の場合は対応をあと回しにされる可能性もあります。
また、あくまでも行政機関として企業に対する指導勧告や刑事的な責任追及などをおこなうため、個人の代理人となって手厚くサポートしてくれるわけではありません。
本気で未払い残業代を支払ってもらいたいなら、労働基準監督署ではなく弁護士に依頼しましょう。
未払い残業代を請求するなら弁護士に相談するのがおすすめ
未払い残業代を請求する際、弁護士に相談・依頼することで以下のようなサポートが望めます。
証拠集めや請求方法をアドバイスしてくれる
未払い残業代の請求手続きを一任できる
自分で請求するよりも早期回収が望める
ここでは、弁護士によるサポート内容について解説します。
1.証拠集めや請求方法をアドバイスしてくれる
弁護士に相談すれば、未払い残業代の請求で必要な証拠・証拠の収集方法・未払い残業代の計算方法・請求方法などをアドバイスしてくれます。
素人の場合、有効な証拠を集められなかったり、残業代の計算を間違えてしまったり、会社に対してどのように伝えればよいか迷ったりすることもあります。
スムーズに未払い残業代を回収するためには相応の知識が必要不可欠であり、自己判断で動いてしまうと納得のいかない結果に終わってしまうおそれがあります。
弁護士のアドバイスを受けることで、今後の対応が明確になり、残業代回収に向けて的確に動き出すことができます。
2.未払い残業代の請求手続きを一任できる
弁護士に依頼すれば、交渉や裁判などの請求手続きを一任できます。
未払い残業代の請求では、証拠収集・残業代計算・内容証明郵便の送付・交渉・裁判など、さまざまな慣れない手続きに追われることになります。
素人が自力で対応しようとすると、書類の作成方法に戸惑ってミスをしたり、会社との交渉で主導権を握られてしまったりなど、思うように手続きが進まないおそれがあります。
弁護士なら、依頼者の代理人となってミスなく適切に手続きを進めてくれて、請求手続きにかかる手間や精神的負担を大幅に軽減できるというメリット もあります。
3.自分で請求するよりも早期回収が望める
弁護士に依頼することで、未払い残業代の早期回収が望めるというのもメリットです。
残業代を支払わない会社の中には「特に注意なども受けていないから支払っていない」というようなところもあり、場合によっては従業員が個人で請求しようとしてもまともに取り合ってくれないことも考えられます。
しかし、弁護士に依頼すれば、会社側に対して本気度を伝えることができます。
たとえば、これまでまともに取り合ってくれなかった会社が、弁護士名義で内容証明郵便を送っただけで態度が変わり、すぐに未払い残業代が支払われたりするケース もあります。
さいごに|残業代未払いで悩んでいるなら、ベンナビ労働問題で相談を
残業代の未払いが発生しているなら、速やかに証拠を集めて請求手続きを進めましょう。
ただし、ミスなく迅速に請求手続きを進めるためには相応の知識やノウハウが必要となるため、自力で対応しようとせずに弁護士にサポートを依頼したほうが安心です。
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「未払い残業代がいくらあるかわからない」「とりあえず弁護士の話を聞いてみたい」という方も、まずは気軽にご利用ください。
未払い残業代を請求したいと考えている方へ
会社に未払い残業代を請求したところで、すんなり支払いを認めるでしょうか?
会社に残業代を支払わせるためには、明確な証拠と法的に正しい主張が必要 です。
未払い残業代を請求したい方は弁護士への相談・依頼がおすすめ です。
弁護士に相談・依頼すれば、以下のようなメリットがあります。
残業代を請求できる可能性があるかがわかる
未払い残業代を請求するための証拠集めのアドバイスがもらえる
請求できる残業代を正確に計算してもらえる
会社との交渉を代理してもらえる など
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