パワハラ・セクハラ・未払い残業代・過重労働・リストラなどの労働トラブルが起こった際に、専門家に相談したくても費用がネックになり、相談が出来ず泣き寝入りしてしまう方が多くいらっしゃいます。
そんな方々を、いざという時に守るための保険が弁護士費用保険です。
労働トラブルに限らず、交通事故や離婚トラブル、子供のいじめなど様々な法律トラブルでも利用可能です。
弁護士保険で法律トラブルに備える
会社から「今月支払うべき残業代が払えないので翌月まで待って欲しい」とお願いされた場合、素直に応じて良いものでしょうか?
結論から申し上げますと、労働者にこれに応じる義務はありませんし、労働者がこれに応じたからといって会社が免責されるものでもありません。会社は一定の期日に賃金全額を支払う法律上の義務があるからです。
今回は、残業代を支払うべきタイミングについて簡単に説明します。
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
引用「労働基準法第24条」
例えば、「今月の残業が多かったので、40時間分の残業代は払うが、残り10時間分は翌月に繰り越しとする」というような対応は、労働基準法第24条の『全額払いの原則』に違反しています。
労働基準法により、給料は支払うべき時期に全額を精算することが要請されます。この要請は「賃金全額払の原則」と呼ばれており、会社が一方的に上記のような繰越を行うことは、同原則に違反しているのです。
他方、当該繰越について労働者の同意がある場合は良いのか?という問題があります。結論としては、同意があっても繰越処理は難しいと思われます。
賃金全額払の原則は、労使協定で定めた場合のみ例外を認めており、労使間の同意は例外的取扱いの理由とされていません。
したがって、たとえ労働者が同意したとしても、当該取扱は違法となる可能性が高いと思われます。
なお、就業規則で残業代について「当月分を翌月払」と定めることは、繰越処理の問題ではなく、単なる支払時期の問題であるため、全く問題ではありませんので、誤解しないでくださいね。
残業代は支払われるべき時期に全額精算されなければなりません。したがって、これを徒過したような場合は、遅延の程度に応じて遅延損害金が発生します。
遅延損害金の利息は、在職者は年利6% (商法第514条)、退職後は年利14.6%(賃確法第6条)で計算します。
【関連記事】残業代未払いにかかる遅延損害金とは|遅延利息との違いと請求手順を解説
(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用「労働基準法第37条」
労働基準法第37条は、時間外や休日、深夜労働で働いた分は割増賃金を支払う必要があると定めています。
したがって、残業代を繰り越す行為は、当該繰越までの期間中は、支払われるべき割増賃金が支払われていないという意味で、理論上は同条項違反ということもできます。
労働基準法24条や37条への違反には下記のような罰則が予定されています。
たった一回の違反で直ちに刑事罰まで受けることは考えにくいですが、労基署から是正するよう求められても何ら是正せずに違反を繰り返すような場合は、最終的に刑事責任まで問われる可能性があります。
労働基準法第24条違反
30万円以下の罰金 |
労働基準法37条違反
6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
残業代を遅れて支払うことや、一部を分割払いすることは、明白な労働基準法違反として法令遵守を重視する会社では通常起こらないと思われます。
しかし、そのようなコンプライアンス意識の低い会社では起こり得るかもしれません。このような場合、同対処すればよいでしょう。
上記の通り、残業代の遅配・分割といった行為は労基法違反ですので、労基署による取締の対象となります。
したがって、労基署に違反の事実を相談・申告し調査・対応を求めるということは考えられます。労基署が違反を認めて是正のための指導・勧告を行えば、会社がこれを是正するために、割増賃金を適正に精算するようになるかもしれません。
なお、違反事実に関する資料を持参して相談しに行けば、労基署が対応を要するかどうかをより効率的に判断できて、対応も早いかもしれません。
【関連記事】
「労働基準監督署に相談できる10の労動問題|メリット・デメリットと相談前の準備」
未払い残業代を請求する方法として、弁護士への相談・依頼があります。
無料相談を受けてくれる弁護士事務所も増えてきていますので、まずご自身の置かれた状況から、どのような対応を取っていけば良いのかを具体的にアドバイスをもらうことを検討してみましょう。
弁護士であれば、必要に応じて弁護士名義の書面で残業代を請求することもできますし、万が一労働審判や訴訟に事態が発展してもそのまま対応を任せられます。
もし、会社の経営難で事業が停止して残業代や給与などの賃金が支払えない状態にあるのであれば、国の「未払賃金立替制度」を利用できる可能性があります。
未払賃金立替制度は、会社の破産、特別清算、民事再生や会社更生して事実上倒産したと労働基準監督署が認定した場合、国が金員を立て替えて労働者に賃金の一部を払う制度のことです。
未払賃金立替制度を利用することができれば、国が賃金の8割の金額を補償してくれます。ただし、当然ですが、無制限に給与を立て替えてくれるものではなく、一定の限界があります。
例えば、賃金の立て替えを受けることができるのは、退職日の6ヶ月前から未払賃金立替制度の請求した日までの期間のみです。
請求先は、「独立行政法人労働者健康安全機構」となりますが、利用を検討している方は、まずは労働基準監督署や労働局に相談してみてはいかがでしょうか。
立替払を受けることができるのは、次の要件を満たしている場合です。
(1) 使用者が、
[1] 1年以上事業活動を行っていたこと
[2] 倒産したこと
大きく分けて次の2つの場合があります。
イ 法律上の倒産
([1]破産、[2]特別清算、[3]民事再生、[4]会社更生の場合)
この場合は、破産管財人等に倒産の事実等を証明してもらう必要があります。
必要な用紙は労働基準監督署に備え付けてあります。
ロ 事実上の倒産
(中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合)
この場合は、労働基準監督署長の認定が必要ですので、労働基準監督署に認定の申請を行って下さい。
(2)労働者が、倒産について裁判所への申立て等(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署への認定申請(事実上の倒産の場合)が行われた日の6か月前の日から2年の間に退職した者であること
ご存知の方も多いでしょうが、離職した場合は雇用保険(失業保険)を受けることができます。
受給資格、受給上限額、受給期間は自己都合退職か会社都合退職かで異なりますが、会社都合退職の方が優遇されます。
例えば、会社都合退職の場合は、退職前1年間で半年以上働いていれば受給資格がありますが、自己都合退職の場合は、退職前2年間で1年以上働いている必要があります。
受給期間も、会社都合では7日間の待機期間が過ぎればすぐに受給開始できますが、自己都合退職では7日間の待機期間に合わせて3ヶ月の期間を待たなければ受給も開始されません。
会社の給与遅配により退職せざるを得なかったというようなケースでは会社都合退職として処理される可能性もあります。より具体的なアドバイスが欲しいという場合は、ハローワークなどに相談してみましょう。
参考「基本手当について|ハローワーク」
残業代の翌月繰り越しは、労働基準法第37条や第24条に違反の可能性があります。
万が一会社からそのような提案がされてきたとしても応じる必要はなく、適正な精算を求めるのが筋でしょう。
(ただ、本当にやむを得ない事情があって、一時的な措置に過ぎないような場合には、敢えて違法状態であることにこだわらずに穏便に済ませるということもなくはないと思われます。)。
なお、給料の遅配が進んでおり、何らか対処が必要な場合は本記事を参考にして具体的な行動を開始してみて下さい。
残業代請求の時効は3年間とされています。
先送りしていると、過去の賃金・残業代が受け取れなくなってしまう可能性も出てきます。なるべく早くに対処することをおすすめします。
弁護士への相談で残業代請求などの解決が望めます
労働問題に関する専門知識を持つ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。
・未払い残業代を請求したい
・パワハラ問題をなんとかしたい
・給料未払い問題を解決したい
など、労働問題でお困りの事を、【労働問題を得意とする弁護士】に相談することで、あなたの望む結果となる可能性が高まります。
お一人で悩まず、まずはご相談ください。あなたの相談に、必ず役立つことをお約束します。
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タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
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この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。