実際の残業代計算はこのように単純に行かない場合もあります。例えば、基準賃金に含む手当が何か、月平均所定労働時間をどのように算定するかなど、会社毎に応じた調整が必要です。未払いの残業代があっても数十万程度だろうと自分では思っていても、弁護士や社労士に計算してもらったら、100万円を超えていたと判明する場合もあります。そのため、実際に残業代請求を考えているのであれば、回収の可能性も含めて弁護士に依頼してみてはいかがでしょうか。
残業80時間分の残業代っていくら?正しい金額の計算方法と未払いへの対処法
「毎月80時間以上も残業しているけど、残業代がでない…」
80時間を超える残業、肉体的にも精神的にもかなりきついですよね。
それがすべてサービス残業だとしたら、一刻も早く辞めたいと考える方も多いはずです。
仮に残業代がきちんと支払われるとしても、毎日3~4時間の残業…。辛いと感じるのも当然のことだといえます。
大前提として知っておいてほしいのが、現在80時間を超える残業をしているという場合、健康障害のリスクが高まっているということです。
この記事では、80時間を超える残業の危険性や残業代の計算方法、未払いがあった場合の対処法について簡単に解説します。
月80時間に及ぶ時間外労働(残業)の問題点
労働基準法では、月の時間外労働の上限を原則45時間としています。
ですが、働き方改革に基づく改正前は、36協定の特別条項を適用することで、月80時間を超える時間外労働させることも適法とされていました。
月80時間を超えるような時間外労働が当たり前に行われると、労働者は十分な睡眠時間を確保が困難となります。
結果、労働による疲労やストレスの蓄積に伴って心血管に大きな負担が生じ、重大な疾患を発症するかもしれません。
そのため、2~6ヶ月の月平均時間外労働時間が80時間を超えるような場合は、深刻な健康被害が生じる可能性があるとして、「過労死ライン」と呼ばれています。
このような社会的認識を踏まえ、働き方改革に伴う改正法により、時間外労働の特別条項による延長時間も一定の上限が設けられました。
当該上限規定の一つとして、2~6ヶ月の月平均時間外労働時間が80時間以内という条件が新設されています。
参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 | 厚生労働省
80時間の残業をした場合の割増賃金(残業代)の計算例
この項目では、80時間残業があった場合の残業代の計算例を月給別にわけて紹介します。
なお、計算時の月平均所定労働時間は160時間と仮定します。
残業代計算の基礎知識
労働基準法第32条は、法定労働時間を1日8時間・週40時間と定めており、同法37条でこれを超えて働いた場合、使用者に割増賃金の支払い義務があることを定めています。
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以下略)
引用元:労働基準法
割増賃金の計算式は以下の通り。
割増賃金=1時間当たりの賃金×1.25×時間外労働時間 |
1時間当たりの賃金は、月給を月平均所定労働時間で除して計算します。
1時間当たりの賃金=月給÷月平均所定労働時間 |
ただし、割増賃金の計算の際には、月給から一部の手当を除外する必要があります。
詳しくは「残業代計算ツール ~請求可能額を調べる~」をご覧ください。
月給が15万円の場合
残業代=(15万円÷160時間)×1.25×80時間 =937.5円×1.25×80時間 =93,750円 |
月給が20万円の場合
残業代=(20万円÷160時間)×80時間×1.25% =1,250円×80時間×1.25% =125,000円 |
月給が30万円の場合
残業代=(30万円÷160時間)×80時間×1.25% =1,875円×80時間×1.25% =187,500円 |
会社が正しく残業代を支払わないときの対処法
会社がきちんと残業代を支払ってくれないがために、ただ働き同然の状況で泣き寝入りしたくはありませんよね。
この項目では、会社が正しく残業代を支払わない場合の対処法を紹介します。
【超重要】残業を行ったことが証明できる証拠を集める
残業代請求でもっとも大事なのが、根拠となる証拠を集めることです。
できるだけ多くの証拠を集めることができれば、請求手続きがスムーズに行えます。
残業代請求に役立つ証拠には、以下のようなものがあります。
- タイムカード、勤怠表
- 就業規則
- 雇用契約書
- 給与明細
退職してから証拠を集めるのはかなり大変なので、できる限り在職中に集めておきましょう。
特に労働時間を証明する証拠は極めて重要ですので、タイムカードや勤怠表は必須。
これらが存在しない場合は、PCのログイン・ログオフ記録、メールの送受信記録、自身でつけたメモなど、できる範囲で立証のための資料を揃えましょう。
労働基準監督署に相談に行く
労基署は残業代請求を代行することはありませんが、会社の対応が違法かどうかを調査し、違法がある場合は是正するよう指導してくれます。
そのため、労基署に相談した結果、会社に調査が入り、是正措置が講じられて、一定の残業代が支払われるということはあり得ます。
しかし、未払いの残業代がすべて精算されることはあまりないので、全額請求を求めるのであれば、最初から弁護士に相談するべきでしょう。
弁護士に相談する
残業代請求を含め、労働問題で困った場合には弁護士に頼るのも一つの手です。
弁護士に依頼すれば、未払い残業代の計算から会社との交渉まで任せることができるため、自身にかかる負担や手間をかなり減らせます。
弁護士に依頼する費用は発生しますが、回収できた残業代から支払うということもあり得ますので、相談先の弁護士とよく相談して下さい。
転職する
80時間も社員に残業させ、残業代もきちんと支払わないような会社で働き続けるのは、あなた自身の健康的にもキャリア的にもおすすめしません。
今の職場に改善の見込みがないのであれば、早期に転職したほうがよいかもしれません。
確かに転職によって、一時的に年収が減るかもしれないですし、新たな職場に移るのにも勇気が必要ですよね。
ですが、なによりも大切なのはあなたの健康です。
取り返しのつかない事態となる前に、転職したほうがよいでしょう。
転職するにしても、次の職場もまた残業が多かったらと不安な方は、以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ
残業代も80時間分ともなれば、かなりの金額となります。
80時間残業をして、5万円程度しか残業代の支給がないのであれば、一度きちんと計算してみたほうがよいかもしれません。
【残業代の計算式】
1時間当たりの賃金×1.25×時間外労働時間 |
残業代を正確に計算するには、さまざまな事情を考慮しなければいけないため、かなり面倒で手間もかかります。
自分で計算するのは難しそうと感じた場合は、弁護士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。
また、月に80時間を超える残業は過労死のリスクもあるため、職場を変えることを検討したほうがよいかもしれません。
あなたの健康を最優先で考えましょう。
実際の残業代計算はこのように単純に行かない場合もあります。例えば、基準賃金に含む手当が何か、月平均所定労働時間をどのように算定するかなど、会社毎に応じた調整が必要です。未払いの残業代があっても数十万程度だろうと自分では思っていても、弁護士や社労士に計算してもらったら、100万円を超えていたと判明する場合もあります。そのため、実際に残業代請求を考えているのであれば、回収の可能性も含めて弁護士に依頼してみてはいかがでしょうか。
弁護士への相談で残業代請求などの解決が望めます
労働問題に関する専門知識を持つ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。
・未払い残業代を請求したい
・パワハラ問題をなんとかしたい
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など、労働問題でお困りの事を、【労働問題を得意とする弁護士】に相談することで、あなたの望む結果となる可能性が高まります。
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タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
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残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。