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残業時間の上限は何時間?長時間労働で悩んだ際の相談先も解説

更新日
下地 謙史
このコラムを監修
残業時間の上限は何時間?長時間労働で悩んだ際の相談先も解説

働き方改革によって、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。

これまでにも残業時間に対する基準(限度基準告示)はありましたが、現在は労働基準法の改正により明確に残業時間の上限が定められたため、これに違反すると刑事罰が科せられる可能性があります。

しかし、厚生労働省の令和3年度の監督指導結果」の公表によると、監督指導をおこなった対象事業所のうち34.3%で違法な時間外労働が確認されており、残業時間の上限を守っていない企業はまだまだ多くあるといえます。

そこでこの記事では、時間外労働の上限や、違法な長時間労働に関する相談先について詳しく解説します。

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残業時間の上限は何時間?残業時間について知っておくべきこと

働き方改革により時間外労働の上限が明確に決められることになりましたが、具体的には何時間の残業が認められているのでしょうか。

まずは、法律で定められた法定労働時間を確認してみましょう。

引用元:時間外労働の上限規制 | 厚生労働省

このように、法定労働時間は労働基準法によって上限が定められおり、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合には、36(サブロク)協定とよばれる労使協定を結ぶ必要があります。

残業時間の原則|月45時間・年360時間が上限

36協定を結ぶと、時間外労働をさせることが可能となります。

労働基準法の改正により、時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることができなくなりました。

なお、1年単位の変形労働時間制の場合は、原則月42時間・年320時間が上限となります。

残業時間の例外|月45時間以上になっても認められるケース

36協定を結ぶと、時間外労働が月45時間まで可能になりますが、月45時間以上の時間外労働が認められるケースもあります。

特別条項付き36協定が締結されているケース

特別の事情があれば、労働者と特別条項付き36協定を結ぶことで、時間外労働の延長を臨時で申請することが可能です。

しかし、いくら延長の申請をしたからといって何時間でも残業をさせていいわけではなく、残業時間の上限は以下のように定められています。

時間外労働が年720時間以内

時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内

時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

引用元:時間外労働の上限規制 | 厚生労働省

つまり、月45時間の上限時間を超える場合であったとしても、残業時間の延長は「2〜6ヶ月の平均残業時間が80時間以内かつ1年を通して常に時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満」でなければなりません。

なお、残業時間の延長が認められる「特別の事情」は、予算・決算業務のため業務量が一時的に増えた、大規模なクレーム対応をおこなう必要があるため、業務量が突発的に増えたなど、一時的・突発的にに発生する業務量の増加に限られています。

恒常的に業務がひっぱくすることが予測される場合には、残業時間を延長する特別の事情とは認められません。

残業時間の上限適用が猶予や除外となるケース

以下の業務については、業務の特性や取引慣行の課題があることを理由として、時間外労働の上限規制が一定期間(5年間)猶予されたり、適用されなかったりします。

【残業時間の上限が猶予や除外となる事業・業務】

上限規制が猶予になる事業・業務

運送業

建築業

医師業

鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業

上限規制の適用除外になる事業・業務

新技術、新商品などの研究開発の業務

企業が残業時間の上限を守らなかったときの罰則

働き方改革によって、残業時間の上限規制を超過したときの罰則が設けられました。

時間外労働の上限は法律で明確に定められており、これに違反すれば「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります(労働基準法第119条第1号)。

残業時間の「過労死ライン」とは?長時間労働の問題点

過労死ラインとは、健康被害に繋がる可能性がある時間外労働時間を指す言葉で、一般的には血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準(労災基準)として用いられています。

過労死ラインの基準は、月80時間がひとつの目安です。

月に20日(1日8時間労働)出勤する会社であれば、1日4時間以上の残業をひと月継続すると過労死ラインに到達することになります。

ただし、80時間以内なら時間外労働をしていいわけではありません。

そもそも、36協定で認められている残業時間の上限は月45時間ですし、いわゆる36協定指針第2条では「労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべき」とされているため、企業にはできる限り時間外労働を減らす必要があります。

残業時間の上限規制が適正に運用されているかの判断ポイント

ここでは、勤務先が残業時間の上限をしっかり守っているのかを知るためのチェックポイントを解説します。

時間外労働に関する届出がなされている

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて時間外労働をさせる場合には、あらかじめ36協定を会社と労働組合または労働者の代表者との間で締結し、残業時間の取り決めをしておく必要があります。

この36協定は、管轄の労働基準監督署長に届出をする必要がありますが、会社によっては届出をせずにそのまま会社に保管してある場合や、そもそも36協定の締結すらせずに時間外労働をさせている場合もあります。

まずは、36協定の締結をしたかどうか、締結しているのであればそれを管轄の労基署に提出しているのかどうかを会社に確認しましょう。

就業規則や労働契約に定めがある

36協定を締結している場合、使用者はその締結内容を就業規則や労働契約に定めを設けるなどして、従業員に周知する必要があります(労働基準法第106条)。

具体的な周知方法は、誰でも閲覧できるようにパソコンの管理画面のわかりやすいところに設置しておく、書面を各自に配布する、事業所内のわかりやすいところに貼り付けておくなどがあります。

36協定の届出をしていたとしても、従業員への周知を怠っている場合には、労働基準監督署から会社に対して指導が入ることがあり、悪質な場合には「30万円以下の罰金」が科せられることもあります(労働基準法第106条第1項、同法120条第1号)。

残業時間の上限を超えて働かされている場合の相談先

勤務先から長時間労働を強いられていて、対処の仕方がわからない場合にどこへ相談すればいいのかについて解説します。

人事・社内通報窓口

まずは、会社の上司や人事に相談することを検討しましょう。

会社によっては、社内に相談専用窓口を設けていることもあります。

しかし、上司や人事、社内相談窓口の担当者はあくまでもその会社の従業員なので、会社がマイナスになるような問題に対して適切に対応してくれるとは言い難いでしょう。

社外相談窓口が設置されているのであればいいですが、中立性に疑問が残る社内の人間に相談したとしても、こちらの希望するような相談結果にはならず、うまく丸め込まれて話が終わってしまうこともしばしばあるということを頭に入れておくようにしましょう。

労働基準監督署

勤務先が明らかに労働基準法に違反している場合には、労働基準監督署に対応を依頼するのもひとつの方法です。

労働基準監督署に勤務先の違法な時間外労働の申告をすれば、会社に対して監督指導や勧告などの対応をしてくれる可能性があります。その結果、慢性的な長時間労働の改善が望めます。

しかし、労働基準監督署に相談しても、会社に対して残業代の請求ができたり、違法な長時間労働に基づく慰謝料請求ができたりするわけではありません。

弁護士

残業時間についての悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば会社と直接交渉することで話をスムーズに進めることができますし、未払い残業代があれば、請求することも可能です。

また、会社が違法な長時間労働を黙認し、そのせいで健康被害を被ってしまった場合は、慰謝料の請求や労災の手続を依頼することもできます。

問題解決のために実効性のある対応を期待するのであれば、弁護士に相談するのが一番効率的であるといえるでしょう。

労働条件相談ほっとライン

個性労働省の委託事業である「労働条件相談ほっとライン」に相談することで、専門知識を持つ相談員が違法な時間外労働・過重労働による健康障害などに関するアドバイスをしてくれたり、各関係機関の紹介などをおこなったりしてくれます。

電話相談は、労働者・使用者にかかわらず誰でも無料で、全国どこからでも利用でき、匿名でも相談できます。

なお、相談員が直接会社と交渉してくれるわけではないため、実効性のある対応を期待するのは難しいでしょう。

まとめ|長時間労働に悩まされている方は弁護士に相談を!

働き方改革によって現在の残業時間の上限は、36協定を締結している場合で原則「月45時間、年360時間まで」となっています。

しかし、この上限を超えた残業をさせられる特別条項付き36協定があったり、残業時間の上限適用が除外・猶予される業種・事業もあったりして、一般の方が残業時間の上限を正しく把握するのは難しいでしょう。

もし、長時間労働についてどこに相談していいかわからない場合には、弁護士に相談してみてください。

健康被害が出てしまってからでは遅いので、なるべく早めにアクションを起こしましょう。

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この記事の監修者
下地法律事務所
下地 謙史 (第一東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部より、慶應義塾大学法科大学院へ飛び級入学。司法試験に合格後、都内の法律事務所勤務を経て下地法律事務所を開業。(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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