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転職や就職をしようとしている方のなかには、応募しようとする会社が裁量労働制を採用していると知った方もいるのではないでしょうか。
裁量労働制とは、あらかじめ定められた労働時間に基づき報酬を支払う労働時間制度です。
裁量労働制に悩んでいる場合は、無料相談に対応している弁護士をご自身で探したり、労働基準監督署に相談したりする必要があります。
本記事では、裁量労働制のメリット・デメリットや仕組み、2024年の法改正における裁量労働制の変更点を紹介します。
裁量労働制は、労働者のために設けられた措置について把握することが大切です。
現在、裁量労働制のもと働いているが、疑問を覚える点がいくつかあるという場合は、ぜひ本記事を参考にして今すぐ対応を検討してください。
裁量労働制とは、いわゆる「みなし労働時間制」の一種で、実際の労働時間にかかわらず事前に労使協定で定めた労働時間に基づいて給与が支払われる労働時間制度です。
この制度では出退勤時間の制限がなく、労働者は定められた時間内で働いたとみなされます。
実際にそれ以上働いても残業代は支給されないことから、長時間労働の温床になるリスクがあり、裁量労働制の導入には多くの注意点があります。
そのため、このような事態を避けるためにはまず、労働者の健康管理が重要です。
過労が原因で健康を害するリスクも高いため、企業は健康診断の実施やストレスチェックを積極的におこなわなければなりません。
適切な労働環境を提供するためにも、労働時間の実態を把握し、必要に応じて適切な指導をおこなうことが求められます。
さらに、裁量労働制の運用には労使間の合意が必須です。
この合意は書面で明確にされ、労使協定が成立した場合でも、労働者が実際にどのように働いているかを確認する流れを整えることが重要です。
たとえば、定期的なミーティングや労働時間の自己申告制度などが挙げられます。
そのほか、職務の内容や業種によっては裁量労働制が適さない場合もあるでしょう。
特に社会的に重要な役割を担う職業では、適切な労働時間管理が不可欠です。
医療従事者や公共サービスに従事する職員などは、過度な労働時間が直接的に社会全体に影響を与えるため、特別な配慮が必要とされます。
裁量労働制がうまく機能することで、労働者にとっては自己のペースで仕事を進める自由度が増し、効率的に働くことが可能です。
ただし、これがいわゆる「ブラック企業」の温床になる危険性があるため、企業としては透明性の高い運用を確保することが求められます。
それに伴い、労働基準監督署などの外部機関との連携も重要です。
このことからも、裁量労働制は労使双方が協力して適切な運用を心がけることで、労働者の健康と効率的な働き方を両立させることが求められるでしょう。
裁量労働制には、労使間双方にとってメリットとデメリットがそれぞれあります。
導入を検討する際は会社だけでなく、労働者にとってもプラスになるかを総合的に判断することが重要です。
労働条件の透明性を確保し、適切なフィードバックをおこなうことで、健全な労働環境を維持することが求められます。
裁量労働制を導入する企業側のメリットとして、実際の労働時間に関わらず、労使間で定めた時間だけ労働したものとみなされるため、労務管理の負担軽減や人件費の予測が容易になり、社員の働き方の自由度が高まる点が挙げられます。
これにより、社員満足度が向上し、異なる層からの人材確保が期待できます。
一方で、特に企画業務型裁量労働制の導入には、労使委員会の設置やその決議などの複雑な手続きが必要となり、負担が大きいというデメリットがあります。
適切な運用がおこなわれない場合、長時間労働や過重労働を招くリスクがあり、社員の健康管理に対する懸念もあります。
そのため、裁量労働制を導入する企業は社員の労働時間の実態を把握し、適切な働き方を維持するための管理体制が必要となるでしょう。
具体的には、定期的な社員との面談や健康診断の強化、労働時間管理システムの導入などが挙げられます。
社員に対する教育や情報提供を通じて、自己管理能力の向上を図ることも重要です。
さらに、透明性の高い評価制度の構築も重要です。
成果主義の評価制度を採用することで社員のモチベーションを高めるだけでなく、公平かつ公正な労働環境を実現することができます。
加えて、企業文化や労働環境の整備と併せて双方が納得できる運用が重要です。
このように、裁量労働制の導入には多くのメリットがある一方で、適切な管理と運用が求められます。
企業がこれらのポイントを押さえることで、持続可能な働き方を実現し、社員満足度を高めることが可能となるでしょう。
労働者側のメリットとしては、業務の時間配分や進め方を自分でコントロールでき、生活スタイルに合わせた自由度の高い働き方ができる点が挙げられます。
早く仕事を終わらせられればその時点で退勤も可能で、労働時間を短縮できます。
一方、デメリットとしては長時間労働のリスクがあるため、自己管理が重要です。
そのため、自己管理が苦手な人には不向きな制度といえるでしょう。
また、在宅勤務などリモートワークが主流になる場合、家庭環境やプライベートな時間との境界線が曖昧になりがちで、集中力の維持やオンオフの切り替えが難しい点も挙げられます。
業務の進捗や成果が目に見えにくくなるため、上司や同僚とのコミュニケーションが不足しがちで、チームワークの低下や孤立感が生じる可能性もあるでしょう。
自己管理能力のみならず、コミュニケーションスキルやデジタルツールの活用能力も求められます。
自分のペースで働く自由度が高まる一方で、個人の責任やスキルが問われる点がこの制度の特徴といえるでしょう。
このような働き方を導入する場合、企業側も適切なサポート体制を整えることが重要です。
具体的には、定期的なフィードバックの実施やオンラインでのミーティングを通じて、業務の進捗状況を確認する仕組みを構築することが効果的です。
ここからは、裁量労働制と労働に関わるほか制度との違いについて詳しく解説します。
フレックスタイム制は、出退勤時間を自由に決められる点では裁量労働制と同じであるものの、労働時間を「清算時間」として管理します。
労働者は労使間で定めた1〜3ヵ月間の総労働時間の範囲内で、週ごとの労働時間を調整できます(例:ある月は週30時間、別の月は週50時間)。
また、必ず勤務しなければならない「コアタイム」が設定されている場合があり、コアタイムに間に合わないと遅刻、途中で抜けると早退とされます。
フレックスタイム制の利点としては、労働者が自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を設定できるため、仕事とプライベートのバランスを取りやすいことが挙げられます。
たとえば、育児や介護のために特定の時間に家にいる必要がある場合や、通勤ラッシュを避けたい場合などに柔軟に対応できます。
一方で、デメリットも存在します。
特に、チームでの協働が求められる職種では、各メンバーの労働時間がバラバラになることでコミュニケーションの機会が減少し、業務の進行に支障をきたす可能性があるでしょう。
また、労働者が自己管理できない場合、過度な労働時間や逆に不足することによる業務の遂行に影響が出ることも考えられます。
コアタイムの設定は、このようなデメリットを軽減するためのひとつの方策です。
たとえば、毎日10時から15時までがコアタイムと設定されている場合、この時間帯は全員が出勤しているため、会議や打ち合わせなどがスムーズにおこなえます。
しかし、コアタイムの設定が厳しすぎると、フレックスタイム制の柔軟性が失われるおそれもあるでしょう。
企業がフレックスタイム制を導入する際は、労働者の多様なニーズに対応するとともに、業務効率を維持するためのバランスが重要です。
労働者側も自己管理能力を高め、適切な労働時間の配分を心がけることが求められます。
固定残業代制度は、あらかじめ一定の残業時間を想定し、その残業代を固定で毎月の給与に上乗せして支払う制度です。
「みなし残業」とも呼ばれ、実際に残業をしなくても契約違反にはなりません。
ただし、労働者が自由に出退勤のタイミングを決められるわけではないため注意が必要です。
この制度は36協定に関連し、1ヵ月の時間外労働の上限は原則45時間となっています。
固定残業代制度は以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット |
・給与の安定 固定残業代が給与に含まれるため、月ごとの収入が安定しやすいというメリットがあります。 予想外の残業が発生しても、一定の残業代が確保されているため、収入が急減するリスクが少なくなります。 |
・企業側の管理負担軽減 企業にとっては、毎月の残業時間を細かく計算する必要がないため、労務管理の負担が軽減します。 |
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・労働者のモチベーション向上 一定の残業代が保証されていることで、労働者が安心して働ける環境を提供できます。 |
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デメリット |
・固定残業代が超過する場合の課題 固定残業時間を超える労働が発生した場合、その分の残業代を別途支払う義務があります。 企業がこれを怠ると、労働基準法に違反することになります。 |
・不公平感のリスク 実際の残業時間が少ない労働者にとっては、固定残業代が適用されることで不公平感を感じる場合があります。 |
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・労働時間の不透明性 固定残業代が設定されていると、労働時間の管理が曖昧になる場合があります。 その結果、労働時間の過剰や適正な休憩の確保が難しくなるリスクがあります。 |
固定残業代を導入する際には、その内容を労働契約書や就業規則に明確に記載し、労働者に対して詳細を説明することが求められます。
特に、固定残業代に含まれる労働時間の範囲や超過分の支払いについては明確にしておかなければなりません。
また、36協定が必要とされる場合は正しく締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることが不可欠です。
変形労働時間制は、一定期間内で法定労働時間の総枠を守りつつ、繁忙期と閑散期に応じて労働時間を調整できる制度です。
具体的には、忙しい時期に労働時間を増やし、閑散期には減らすことができます。
この制度の特徴は、対象職種や業種の範囲が限定されず、法定労働時間の総枠を超えた部分に対して時間外手当が支払われる点です。
裁量労働制との違いは、法定労働時間の総枠を設定し、その枠を超えた労働に対して時間外手当が適用されることにあります。
また、計算方法についても違いがあるため注意が必要です。
この制度を導入することで、企業は繁閑の波に柔軟に対応でき、効率的な労働力の配置が可能となります。
一方、労働者にとっては繁忙期にこそ労働時間が延びるものの、閑散期には労働時間が短縮されるため、結果的にワークライフバランスを保ちやすくなる利点があるでしょう。
事業場外みなし労働時間制とは、会社外での業務において労働時間の把握が難しい場合に、所定労働時間を働いたとみなす制度です。
対象となるのは、外回りや出張が多く、使用者の指揮監督が及ばない営業職などです。
ただし、時間管理が可能な場合には適用されません。
この制度は会社外での業務のみが対象であり、社内業務にも適用される裁量労働制とは異なります。
最近では、IT技術の進展により会社外でも時間管理が容易となっており、現行の労働環境にはそぐわなくなりつつあるでしょう。
事業場外みなし労働時間制は、労働者の健康管理やワークライフバランスの観点からも、さまざまな議論がなされています。
一部の労働者にとっては、柔軟な働き方が可能になるというメリットがある一方で、この制度が利用されることで実際に労働時間が長くなるケースも指摘されています。
過度な労働時間が健康被害を引き起こすリスクがあるため、企業は労働時間の実態把握と適切なメンタルヘルスのサポートをおこなわなければなりません。
さらに、労働基準監督署による監査やチェックも強化されており、適用条件を厳密に遵守することが求められます。
具体的なルールとして、労働者が自己申告した労働時間を精査する体制や、労働者本人と定期的に面談をおこなうことで実態を把握することが推奨されています。
これにより、不適切な運用や過労のリスクを防ぐことができるでしょう。
企業側も労働者の負担を軽減するために、リモートワークやフレックスタイム制度など、より柔軟な働き方を取り入れる努力が求められています。
IT技術の活用により、業務の進捗状況をリアルタイムで把握するツールや、労働者の健康状態をモニタリングする方法も整備されつつあります。
高度プロフェッショナル制度は、年収1,075万円以上で高度な専門知識を持つ労働者を対象に、労働時間に関する労働基準法の適用を廃止する制度です。
この制度と裁量労働制は、成果や質で報酬を定める点で共通しますが、以下の点で異なります。
高度プロフェッショナル制度の対象労働者は特定の高度な専門知識を持つ職種や業種に限定されています。
一方で、裁量労働制の方がその対象範囲は広く、より多様な職種や業種が含まれます。
高度プロフェッショナル制度では、年収が1,075万円以上であることが要件となっています。
裁量労働制には特定の年収要件がなく、業務の内容や裁量の度合いによって適用されます。
高度プロフェッショナル制度では、労働基準法の労働時間に関する規定が適用されません。
したがって、時間外手当や深夜労働、法定休日労働に対する割増賃金が支払われないのが特徴です。
一方で、裁量労働制では、みなし労働時間に基づく割増賃金が発生します。
また、高度プロフェッショナル制度では、過度な労働を防ぐために以下のような措置が求められます。
これに対して、裁量労働制では労働者の自主性を尊重しつつも、法定労働時間を基準とした給与体系が維持されるため、労働者の権利保護も一定程度確保されます。
したがって、それぞれの制度は目的や適用条件が異なり、労働者の働き方や待遇に大きな影響を与えることから、適切な理解と運用が求められます。
裁量労働制が適用できる職種にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、裁量労働制が適用できる2種類の類型について説明します。
専門業務型裁量労働制は、労働者が自らの業務を効率的に遂行できるように設計された労働制度です。
この制度は、一定の専門性が要求され、業務の遂行方法や時間配分を労働者が自らの裁量で決定することが求められる職種に適用されます。
2024年度より、専門業務型裁量労働制の対象職種は以下のように設定されています。
特に注目すべきは、2024年度から「M&Aアドバイザー」の業務が新たに追加された点です。
この追加により、M&A(企業の合併・買収)に関連する専門的なアドバイスやコンサルティングを提供するプロフェッショナルが、専門業務型裁量労働制の下で働くことが可能となります。
これらの職種に従事する労働者は、自らの裁量で労働時間を管理し、効率的かつ柔軟な働き方を実現します。
したがって、企業側も労働者側もより効果的な業務遂行と成果の向上を目指すことが可能となるでしょう。
このように、専門業務型裁量労働制の導入によって、専門的な知識や技能を有する働き手が、自らのペースやスタイルで働ける環境が整い、労働の質が向上することが期待されています。
企画業務型裁量労働制とは、企業の本社などで企画、立案、調査、分析などをおこなう労働者を対象とした裁量労働制です。
専門業務型裁量労働制と比べて、より厳格な手続きが求められます。
企画業務型裁量労働制を導入するためには、まず該当する事業場の労使委員会の多数による議決を行い、労働基準監督署に届出をおこなう必要があります。
議決には、具体的な業務内容、労働時間の算定方法、健康確保措置などを明記しなければなりません。
また、労働時間の適正さや業務内容が適切であるか、定期的に検証する仕組みも整えておくことが求められます。
企画業務型裁量労働制の適用を受ける労働者は、標準的な労働時間を基準に、その業務に必要な裁量を持ちつつ働くことができますが、実際の労働時間がその標準を超えた場合も残業手当の支払いが義務付けられています。
加えて、長時間労働が常態化しないよう、労働時間の管理や適切な休息の確保に対する企業の責任は重いものとなります。
労働者の側でも自己管理能力が求められ、業務の進行やタイムマネジメントを適切におこなうスキルが必要です。
企業と労働者の双方が互いに協力しながら、この制度の運用を最適化していくことが求められます。
このように、企画業務型裁量労働制は柔軟な働き方を促進する一方で、厳格な手続きや管理が求められることから、その導入には慎重な検討をしなければなりません。
裁量労働制では、決められた労働時間(みなし労働時間)に基づいて給与が計算されるため、残業代や休日手当が支払われないと思われがちです。
しかし、実際には「みなし労働時間が8時間を超える場合」や「深夜業、休日労働をした場合」においては、残業代や休日手当がしっかりと支払われるようになっています。
みなし労働時間とは、実際の労働時間ではなく、労使協定や労使委員会の議決で定めた労働時間を指します。
たとえば、8時間と定められた場合、実際には5時間働いただけでも8時間分の報酬を受け取ることができます。
これは、仕事が早く終わっても割にあった報酬を得られるため、裁量労働制の大きなメリットとなります。
みなし労働時間の制度は、特に専門職に従事する労働者にとって柔軟で便利な仕組みです。
この制度のもとでは、労働者が自分の裁量で仕事の内容や進行を管理できるため、効率的に働くことができます。
労働時間を直接管理する必要がないため、雇用者にとっても管理コストの削減や業務の効率化が期待できます。
裁量労働制の場合でも、契約上の労働時間は法定労働時間内に設定する必要があります。
ただし、労使間で36協定を結んでいれば、使用者は時間外労働を指示できます。
その際、超過分の時間に対して割増賃金を支給しなければなりません。
たとえば、みなし労働時間が10時間の場合、法定労働時間の8時間を超えた2時間分の割増賃金を支給する必要があります。
なお、労働基準法第36条に基づく36協定は、使用者と労働者代表が書面で締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
さらに、36協定によって許容される時間外労働時間は上限が設けられており、一般的には1ヵ月45時間、1年間360時間となります。
これを超える時間外労働をおこなう場合には、特別条項付きの36協定を締結しなければなりません。
裁量労働制においても、22時から翌5時の深夜帯に働く場合には残業代を支払う必要があります。
1日のみなし労働時間が8時間で月の所定労働日数が20日なら、月の労働時間は160時間として計算されます。
このうち12時間が深夜労働であれば、その12時間分の割増賃金が支払われます。
また、法定休日に出勤した場合も割増賃金が支払われますが、会社の規定による法定外休日は必ずしも法定休日と同じ扱いにはなりません。
さらに、裁量労働制においても、労働基準法で定められた休日や休憩時間については遵守しなければならないことが強調されるべきです。
具体的には、6日に1日は必ず休日を設けることや、1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩時間を取ることが必要です。
これらの規定は、労働者の健康と安全を守るための重要な要素になります。
裁量労働制は、正しく活用すればワークライフバランスを実現し、効率的な働き方ができる制度です。
しかし、使用者がこの制度を悪用すると、労働者に不利な状況をもたらす可能性もあります。
裁量労働制を導入すれば残業代を大幅に抑えられますが、一部の企業では対象外の業種にも強引に適用しようとしたり、労使協定を不正に結ぶなどの違法な行為をおこなっていることもあります。
こうした不正な方法で裁量労働制を導入しようとする企業には、くれぐれも注意が必要です。
裁量労働制では、実際の労働時間と事前に設定されたみなし労働時間が乖離することがあります。
みなし労働時間は過去の労働環境を基に設定されますが、実労働時間より短く設定されることがあり、その結果として実労働時間がみなし労働時間を超えても追加の賃金が支払われず、実質的に「ただ働き」となる問題があります。
特に技術職や専門職では、プロジェクトの進行状況やクライアントの要望に応じて業務内容が変動するため、固定されたみなし労働時間では対応しきれない場面が頻繁に発生します。
このような場合、労働者の実労働時間が長時間化しやすく、結果として健康被害やモチベーション低下のリスクが高まるでしょう。
裁量労働制では残業時間に対する感度が低くなり、労働者自身が長時間働くことが常態化しやすいです。
特に建築業やクリエイティブ業ではもともと残業が多いため、この傾向が強いです。
結果として、ワークライフバランスの実現が難しくなり、ストレスの原因となる可能性があります。
裁量労働制は、労働時間を実際の働いた時間ではなく、労使協定や労使委員会の決議で定めた時間で算定する制度です。
令和6年4月1日から、この裁量労働制の適用要件が変更されました。
裁量労働制は労働者に多くのメリットがあるように見えるものの、長時間労働が常態化しやすいという問題があります。
2021年の厚生労働省の調査によると、裁量労働制適用者の月平均労働時間は171時間36分で、非適用者の169時間21分よりも長いことがわかっています。
また、適用職種が厳密に定められているにもかかわらず、不適切に営業職や事務職に適用される例も見られます。
これらの問題点を改善するために制度の見直しが進められています。
専門業務型裁量労働制(専門型)の対象業務が、従来の19業務に加えて銀行や証券会社の顧客のM&Aに関する調査、分析、考察、助言の業務が追加され、20業務になりました。
制度導入には対象労働者の同意が必須で、さらに法改正により労使協定に以下の3点が追加されました。
これにより労働者は制度に同意しない選択や、同意の撤回が可能となり、選択の自由度が増しました。
企画業務型にて、以下の事項の記載が新たに必要となりました。
具体的な説明内容としては、以下の点が挙げられます。
説明方法については、書面、電子媒体、説明会の開催など、労働者が理解しやすいかたちで実施します。
具体的な手順としては、以下のとおりです。
これにより、労働者と使用者の間で定期的なコミュニケーションを図り、双方の意見を取り入れることができるようになります。
さらに、専門型裁量労働制と同様に、企画業務型裁量労働制でも労使協定に「同意の撤回の手続き」に関する項目が追加されました。
同意に関しては、労働者が不利益な取り扱いを受けないことが引き続き必須事項となります。
具体的な撤回手続きとしては、以下のような事項を記載することが求められます。
これらの変更点を踏まえ、労働者が安心して働ける環境を整えることが企業の責務となります。
改正により、専門型にも以下の措置が義務付けられました。
終業から始業まで一定時間の休息確保 |
労働者が十分な休息を取れるよう、終業後から次の始業までに一定の時間を確保することが求められます。 |
深夜業の回数制限 |
労働者の健康維持のため、深夜勤務の回数に制限が設けられました。 |
一定時間超の労働に対する制度適用解除 |
一定時間を超える過長労働が行われた場合、その労働に対する適用制度を解除します。 |
連続有給休暇の取得 |
労働者の連続した休暇の取得を促進し、労働者のリフレッシュと生産性向上を図るための措置です。 個々の労働者の状況に応じた措置(健康状態改善) |
医師による面接指導 |
心身の健康状態が損なわれる可能性がある労働者に対して、医師の面接指導を実施します。 |
代償休日・特別休暇付与 |
労働者の健康維持のため、代償休日や特別休暇を付与します。 |
健康診断の実施 |
労働者の健康状態を把握するため、定期的に健康診断を実施します。 |
相談窓口の設置 |
労働者が気軽に相談できる窓口を設置し、健康や労働環境に関する問題解決を図ります。 |
必要に応じた配置転換 |
労働者の健康状態に応じて、適切な配置転換をおこないます。 |
産業医等の助言・指導 |
産業医や専門家の助言・指導を受け、労働者の健康維持と労働環境の改善を図ります。 |
厚生労働省のアンケート調査により、多くの企業が「連続した有給休暇の付与」や「産業医による助言・指導」を実施していることがわかりました。
これにより、労働者の健康管理がより一層強化され、働きやすい環境の整備が進んでいることが確認されています。
裁量労働制で働く労働者は長時間労働を強いられることが多いため、労働基準法は会社に対して「健康福祉確保措置」と「苦情処理措置」を義務付けています。
健康福祉確保措置には、代償休日や特別休暇の付与、健康診断の実施、年次有給休暇の取得促進、健康相談窓口の設置、健康状態に応じた配置転換、産業医による保健指導などがあります。
苦情処理措置には、苦情処理窓口の設置や苦情の範囲や処理手順の明確化などがあります。
裁量労働制で働く場合は、心身の健康を守るために、会社がこれらの措置を講じているかどうかを確認することが重要です。
さらに、裁量労働制で働く労働者自身も、自らの健康管理に注意を払うことが重要です。
たとえば、以下のような対策を取ることが考えられます。
1.定期的な休憩の確保 |
長時間働くことで集中力やパフォーマンスが低下するため、定期的に短い休憩を取ることでリフレッシュすることが大切です。 |
2.生活リズムの安定化 |
不規則な生活が続くと心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、できるだけ規則正しい生活リズムを保つように心がけましょう。 |
3.適度な運動 |
身体を動かすことはストレス解消や健康維持に役立ちます。忙しい中でも、適度な運動を取り入れることが重要です。 |
4.メンタルヘルスのケア |
ストレスが溜まったときには、カウンセリングやリラクゼーション方法を活用してメンタルヘルスを保つように努めましょう。 |
5.栄養バランスの取れた食事 |
栄養バランスの取れた食事は、健康維持に欠かせません。忙しさにかかわらず、食事の質に気を配ることが大切です。 |
労働環境が整っていることはもちろん重要ですが、個人の健康管理も大切です。
仕事とプライベートのバランスを保ちながら、持続可能な働き方を心がけることが、長期的な健康維持には不可欠となります。
最後に、会社の裁量労働制について悩んでいる方の相談先を紹介します。
裁量労働制や長時間労働に関する問題がある場合、労働問題に詳しい弁護士に相談・依頼することが勧められます。
弁護士は、裁量労働制の適法性や残業代請求の可能性についてアドバイスしてくれます。
特に、法定労働時間を超えて働いている場合や休日・深夜労働がある場合、また裁量労働制の運用や導入方法が違法である場合には、残業代を請求できる可能性があるため、弁護士に相談することが重要です。
裁量労働制や長時間労働の問題に直面した場合、まずは労働条件や契約内容をよく確認することが大切です。
具体的には、労働契約書、就業規則、給与明細などを整理し、自分の労働時間や給与がどのように計算されているかを確認します。
そのうえで、以下のようなポイントに注意しておくとよいでしょう。
これらの情報をもとに、問題があると感じたら、労働問題に詳しい弁護士に相談します。
弁護士は豊富な知識をもとに、あなたの状況に応じた具体的なアドバイスを提供してくれます。
また、弁護士に依頼することで、会社との交渉や裁判の手続きもスムーズに進めることができるでしょう。
労働基準監督署は企業が労働関係法令を遵守しているかを監督し、違反があれば是正勧告や改善指導をおこなう機関です。
裁量労働制を導入する際には労使協定などの届出が必要で、これがない場合や36協定を締結せずに時間外労働をさせる場合は違法となります。
問題があると感じた場合は、近くの労働基準監督署に相談・申告することが推奨されます。
労働基準監督署に相談や申告をおこなう際には、具体的な証拠や事実を集めておくことが重要です。
たとえば、労働時間の記録、給与明細、メールやメモなどの書類が役立ちます。
これらの証拠があることで、より具体的かつ迅速に問題が解決される可能性が高まります。
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労働基準法違反が疑われる場合には、相談内容を労働基準監督署に引き継ぎ、法的措置を講じることもあります。
労働問題において、労働組合やユニオンに相談することも有効な方法のひとつです。
特に「裁量労働制ユニオン」は、裁量労働制の労働者を支援する労働組合で、未払いの残業代請求や適切な裁量労働制の運用を求める団体交渉をおこないます。
また、労働基準監督署への申告のサポートも提供する可能性があります。
裁量労働制は、あらかじめ定められた労働時間に基づき報酬を支払う制度です。
裁量労働制に悩んでいる場合は、無料相談に対応している弁護士を自分で探したり、労働基準監督署に相談したりする必要があります。
ただ、2024年の法改正における裁量労働制の変更点や労働者のために設けられた措など、確認しなければならないことが多くあります。
そのため、ご自身の状況に合わせた最適な弁護士に迅速に依頼しなければなりません。
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36協定は残業に関する協定ですが、守られていない会社が多いです。本記事では、36協定とは何か、違反のケース、違反していた場合の対処法などを解説します。
会社から残業を強制されても、会社が残業の要件を満たしていれば拒否はできません。しかし、残業の要件を満たしていなければ残業の強制は違法となり、従う必要はないでしょ...
変形労働時間制で働いてる場合、残業代が全く支払われないケースも少なくありません。しかし、制度の十分な説明がなく場合によっては悪用されていることもあるでしょう。 ...
変形労働時間制とは、労働時間を月単位や年単位で調整することで清算する労働制度です。教職員の働き方改革としても導入が検討されている変形労働時間制には、導入の条件や...
仕事とプライベートの時間のバランスを保つためにも、労働時間と共に重要になることが、年間休日の数です。
裁量労働制は、あらかじめ定められた労働時間に基づき報酬を支払う制度です。本記事では、裁量労働制のメリット・デメリットや仕組み、2024年の法改正における裁量労働...
固定残業代とは、残業時間にかかわらず、毎月一定額が残業代として支給されるものです。労働者にとって大きなメリットがある一方、企業が不正に運用すれば、被る不利益も大...
「36協定について知りたい」、「残業が多いので会社に違法性がないか確認したい」などのお悩みを抱えている方に向けて、この記事では36協定の締結方法、時間外労働の上...
過労死ラインとは労災給付の基準であり、月に80〜100時間を超える労働は深刻な健康障害を引き起こす可能性が高いとして、抑制する取り組みが広まっています。この記事...
最近よく耳にするようになった「ブラック企業」というワード。ブラック企業の残業時間はどのくらいなのでしょう。また、残業代を請求するための手順や、請求した際に受け取...
みなし残業とは賃金や手当ての中に、予め一定時間分の残業代を含ませておく制度です。みなし残業制度(固定残業制度)だから残業代は出ないという話しはよく聞きますので、...
休日出勤とは、その名の通り休日に出勤することです。会社によっては休日出勤が当たり前のようになっている所もあるでしょうし、本来払われるべき休日手当が支給されない企...
労働基準監督署は域内の事業所が労働基準法を守って運用しているか監督しています。勤務先の会社が労働基準法を守っていない場合、労基署に相談すると指導勧告をしてくれて...
【弁護士監修】残業代請求の裁判事例から残業代請求が認められるケースとできないケース、裁判の進め方、弁護士に依頼した際にかかる費用などを解説します。
みなし労働時間制は、あらかじめ規定した時間分だけ働いたとみなす労働時間制度のことです。この記事では「みなし労働時間制」について、具体的にどんな制度であるか、みな...
変形労働時間制とは、労働時間を月単位や年単位で調整することで清算する労働制度です。教職員の働き方改革としても導入が検討されている変形労働時間制には、導入の条件や...
今回は、毎月40時間の残業をしている方に、残業時間を減らすポイントや正しく残業代を支払ってもらうための計算方法や残業の基礎知識をお伝えします。
日雇いで働いていて、給料が日給制で支払われている方についても、所定の労働時間を超えて労働した場合は残業代を受け取ることができます。この記事では、日給制の場合にお...
【弁護士監修】名ばかり管理職とはどのような存在なのか、名ばかり管理職の実態と、本来の管理監督者と名ばかり管理職の違いについて、肩書だけで残業代などの割増賃金が支...
「36協定について知りたい」、「残業が多いので会社に違法性がないか確認したい」などのお悩みを抱えている方に向けて、この記事では36協定の締結方法、時間外労働の上...
この記事では、未払い残業代の遅延損害金について、計算方法と請求手順を解説します。
社員が残業(時間外労働、深夜労働、休日労働など)をすると、会社(使用者)は「割増賃金(わりましちんぎん)」を払わなくてはいけません。残業代の割増賃金の計算方法を...
毎月支給する給料の額を、残業代込みで労働者に示している企業が多数見られます。 本記事では、残業代込みの給料を定めることの是非、固定残業代制のポイント、追加残業...
残業手当とは、所定労働時間や法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる手当のことです。この記事では、残業手当の計算方法や、未払いの残業手当の請求方法などを解説し...
文書提出命令とは何か、どのような効果があり、どんな文書の提出を命令してもらえるのかを解説!労働問題では残業代請求や不当解雇などの証拠を取れる可能性が高い「文書提...
相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。