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残業代の未払い請求は退職後でも可能!退職後に請求する際のポイント

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
残業代の未払い請求は退職後でも可能!退職後に請求する際のポイント

在職中の未払い残業代請求を退職後に行うつもりの方も多いと思います。サービス残業という言葉が当たり前のように浸透していますが、労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、使用者(会社)は「割増賃金」を支払う義務があります。

 

残業代の未払いは違法(労働基準法第37条違反)」ですから、あなたには法律に基づいて残業代を請求する権利があります。

 

 

弁護士

疑問に思うポイントは『退職後でも未払い残業代の請求は可能か?』という部分だと思いますが、残業代請求の権利には3年の消滅時効があります。

逆に言えば、3年の消滅時効期間が過ぎていなければ、未払い残業代は請求可能です。つまり退職後でも請求することはできます

 

 

本記事では、未払い残業代の請求を退職後に行う場合の知識を詳しく解説します。

退職後に未払いの残業代を請求したいあなたへ

すでに退職してしまっているけど、未払いの残業代を請求できるかわからず悩んでいませんか?

 

結論からいうと、未払いの残業代は退職後であっても請求することが可能です。

もし、退職後に未払いの残業代を請求したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

 

弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。

  • 残業代の請求権が消滅していないか判断してもらえる
  • 残業代請求の時に有効な証拠を教えてもらえる
  • 依頼すれば、残業代を正確に請求してもらえる
  • 依頼すれば、裁判所での複雑な手続きを一任できる

ベンナビ労働問題では、未払いの残業代請求を得意とする弁護士を多数掲載しています。
無料相談・電話相談など、さまざまな条件であなたのお近くの弁護士を探せるので、ぜひ利用してみてください。

残業代請求の無料法律相談
個人としてではなく会社に対して対象者全員の残業代の再計算と請求は出来ますか?
20店舗展開している飲食店に勤務しています。変形労働時間を採用しているので、週40時間以上の勤務に該当する人も多数、月間法定労働時間を超えないと、残業代は支給していないとの会社の対応、シフトは毎週金曜に翌週分を作成、前日にシフトが変更になることもしばしば、そもそもの変形労働時間の運用のルールか守られておらず。対象者すべて(おそらく300名以上)3年間の時効まで遡り残業代の再計算を会社に対して要求することは可能でしょうか? ちなみに就業規則はありません。入社時に変形労働時間制採用の説明もありません。
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業務終了後のメール対応について
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未払いの残業代の請求、うつ病に対する損害賠償請求について
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未払い残業代は退職後でも請求できる

在職中は上司や会社に残業代を支払ってくれと言い出しにくく、請求できなかった方もいらっしゃるでしょう。

 

また、会社を退職後は未払い分の残業代は戻ってこないのではと考えている方もいるかもしれません。

 

冒頭でもお伝えしましたが、会社を退職した後でも残業代の未払い分を請求することは可能です。

 

法定労働時間を超えて勤務をした場合には、会社を退職後でも請求権が当然に消滅するわけではありませんのでご安心ください。

 

残業代の請求権には時効があるため注意が必要

気をつけなければならないことは、残業代が発生していることを立証しなければならないことと、『残業代請求には3年間の時効がある』ということです。

 

残業代請求は、会社を退職した後でも可能ですが、その請求権には消滅時効が存在します。この消滅時効は3年間です。

 

この時効期間が経過していれば、会社は権利が事項消滅している旨反論可能であり、そのような反論があれば請求はできません。

 

消滅時効を阻止するには?

このような消滅時効の完成を阻止するためには、催告・訴訟提起という方法があります

 

ただ、催告は一次的に時効完成を阻止するものに過ぎませんので、時効完成を確実に阻止したいのであれば、訴訟提起をするほかありません。

 

また、残業代請求には残業代が発生していることをタイムカードなどで立証する必要があります。この立証が全くできないという場合は、そもそも権利の存在を証明できないということで請求は認められません。

 

未払い残業代と一緒に遅延損害金も請求可能

残業代未払い請求に関しては、未払いの残業代について「遅延損害金」を請求することが可能です。遅延損害金は、在職期間中であれば支払期日の翌日から年6%の割合です。

 

また、退職日の翌日以降は、年14.6%の割合で遅延損害金を請求することが可能となります。

 

さらに、会社が残業代の支払義務に違反していた場合には、裁判で請求すれば、会社が支払わなければならない末払いの残業代と同額である金額を限度として付加金の支払いを裁判所が認容することも。

 

 

弁護士

付加金は、訴訟において判決が下される場合に限り認められており、労働審判の場合は付加金の支払いは認められません

また、付加金は裁判所が事案の悪質性を考慮して認めるかどうか判断しますので、必ず付加金が認められるわけでもないことには留意してください。

 

退職後の未払い残業代請求には在職中から証拠を準備すること

未払い残業代を退職後に請求するためには、在職中から証拠を準備しておくことが重要なポイントになります。

 

残業代請求時に有効な証拠は?

残業時間を立証するための証拠となるものには、「タイムカード」や「勤務記録」「給与明細」などがあります。

 

タイムカードや勤務記録の打刻時間を調べれば、実働時間が把握できます。また、給与明細との照らし合わせをすれば、本来の残業代を算出することが可能です。

 

もしタイムカードにて労働時間を管理していない会社にお勤めの場合には、次のような資料を用いて、証拠とすることができます。

 

表:残業代請求で有効な証拠の例

労働契約の証拠

労働契約書、雇用通知書、就業規則のコピー

残業の事実を証明する証拠

営業メール、タクシーの領収書、LINEなどの日常連絡の記録、業務日誌、出勤表、シフト表、使用するパソコンのログデータ

残業内容の証拠

上司からの残業命名を証明するもの

業務に使用するスケジュールアプリやカレンダー

支給額の証拠

給与明細、源泉徴収票、ICカードの利用明細 など

 

これら有力な証拠となり得る資料等は、在職中でないと入手することができないため、勤務中にコピーを取るなど証拠集めをしておきましょう。

 

そうすることで、会社を退職後でも有利に未払い残業代を請求できます。

 

もし手元に有効な証拠がない場合

すでに退職してるので、上記のような証拠を持っていない場合もあるかと思います。その場合は証拠を集めるのは難しくなります。ただ、退職した後からでも集めることができる証拠はいくつかあります。

 

Suica・PASMOなどのICカード

交通機関に問い合わせることで、履歴を確認することが可能です。通勤の証拠として利用できる可能性があります。

 

会社のアカウントから送信したメール

会社のアカウントから送信したメールの履歴が、自分の携帯電話などにもし残っていれば、証拠となります。

 

証拠が無くても弁護士に依頼することで請求できる可能性がある

訴訟手続の中で文書提出命令、文書送付嘱託などの資料開示手続の利用が可能です。

 

また、通常は此のような手続に依らずとも、訴訟で裁判所から要請されれば会社側は手元にある資料は任意で開示します。そのため、手元に資料がないからという理由で請求を断念する必要まではありません。

 

下記は2017年に厚生労働省が公表した未払い残業代に関する結果です。この中には退職後の未払い請求も含まれています。

 

(1) 是正企業数: 1,870企業(前年度比 521企業の増)
 うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、262企業(前年度比 78企業の増)
(2) 対象労働者数:20万5,235人(同 107,257人の増)
(3) 支払われた割増賃金合計額:446億4,195万円
(4) 支払われた割増賃金の平均額:1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

参考:厚生労働省|監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)

 

もし労働基準監督署に申告されれば、他の労働者からも芋づる式に残業代請求が行われ、最悪の場合は経営が立ち行かなくなる可能性も考えられます。

 

万が一開示請求に応じないのであれば、労働審判や訴訟を提起するといったことで対応していくことになります。

 

 

退職後に未払い残業代を請求する方法

ここでは、退職後の残業代未払い請求に関してその具体的な手順や流れをご説明します。

 

こちらの流れを参考に、ぜひ残業代の未払いにお困りの方はこの問題に詳しい弁護士などに相談してみましょう。

 

弁護士への相談・依頼

未払いの残業代に関して、事前にタイムカードのコピーや給与明細書などの証拠を集めることができたら、労務問題に詳しい弁護士に相談しましょう。多くの弁護士事務所にて初回無料相談を実施しています。

 

また弁護士に相談することのメリットとしては、未払い残業代の場合その計算方法が非常に複雑で、計算ミスが起こりやすいです。残業代請求に詳しい弁護士であれば、法的な見解を合わせて、正確な未払い分を請求することが可能です。

 

さらに残業代未払い請求が可能かどうかは、手元に残る資料によっても左右されてしまいますから、一度弁護士に相談してみましょう。

 

弁護士による残業代の計算

正式に弁護士への依頼が決定しましたら、弁護士より残業代の計算を行います。未払い分の残業代の計算方法は、割増賃金の種類によっても異なります。

 

表:割増賃金を計算する際の割増率

労働時間

時間

割増率

時間外労働(法内残業)
※就業規則上の所定労働時間は超えているが法定労働時間は超えない

 1日8時間、週40時間以内

1倍(割増なし)

時間外労働(法外残業)
※法定労働時間を超える残業

 1日8時間、週40時間超

 1.25倍

 1ヶ月に60時間超

 月60時間を超える時間外労働

 1.5倍

 法定休日労働

 法定休日の労働時間

 1.35倍

深夜労働

22:00~5:00の労働時間

0.25倍

時間外労働(限度時間内) +深夜残業

時間外労働+深夜労働の時間

1.5倍

 法定休日労働 + 深夜労働

休日労働+深夜労働の時間

1.6倍

 

時間単価の算出式

未払い分の残業代を請求するためには、従業員の時間単価を算出しなければなりません。時間単価の算出方法は、次の通りです。

 

時間単価=月給÷(1日の所定労働時間数×(1年の日数-1年の所定休日日数)÷12ヶ月)

 

たとえば、時間単価が1,000円で会社における定時の労働時間が9時〜18時(休憩1時間)であった場合、3時間残業し勤務終了が21時だったとします。

 

この場合の計算式は、時間単価1,000×割増賃金加算1.25×残業時間3時間=3,750円を残業代として支給しなければなりません。

 

このように、未払い分の残業代を請求するためには、複雑な計算が必要です。ですので、労務問題に詳しい弁護士に相談する方が間違いない選択になります。

 

会社へ内容証明郵便の発送

弁護士による未払い分の残業代の計算ができたら、次に弁護士によって内容証明郵便を送付します。内容証明郵便とは、誰が、いつ、誰宛に手紙を出したのかを郵便局が証明してくれる制度です。

 

もちろん内容証明郵便それ自体に法的な拘束力はありませんが、内容証明郵便を利用することで確実に相手に送付した事実が郵便局に残ります。

 

つまり未払い請求を行う先の会社からしても「うちはそのような文書は受け取っていない」という理由を述べることができず、高い証明力によってプレッシャーを与えることが可能に。

 

また、弁護士から内容証明郵便を発送することで、より請求を促す狙いがあります。

 

会社に対して資料開示請求を行う

対象となる会社へ内容証明郵便を発送し、未払いの残業代の支払いに対応してくれる場合は良いのですが、この段階をもってしても支払い拒否や少額での支払いにしか対応できない場合もあります

 

そのような場合には、残業代等の金額を具体的に算定する必要があり、会社側に対して就業規則や、タイムカード等の資料開示を請求します。

 

会社側は、労働者の労働時間を適切に把握する義務があり、また労働関係に関する資料は3年間の保存義務があります。

 

このように労働時間に関係する資料の開示を求めた上で、より正確な労働時間を算出するのです。

 

労働審判申立と訴訟の提起

会社側に労働時間に関係する資料開示を求めても開示請求に応じてくれない場合や、適切に未払い分の残業代が支払われない場合には、労働審判申立や訴訟提起を検討する必要があります。

 

労働審判とは、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関して専門的な知識や経験のある労働審判員2人で構成された労働審判委員会が、原則として話し合いで解決を目指す方法です。

 

話し合いのもと解決が難しい場合には、審判によって判断が下されます。

 

この制度は、労働紛争を早期に解決することが目的のため、争点が複雑だったり、双方の折り合いがつかいない場合には、訴訟に移行することとなります。

 

労働審判や訴訟についても、弁護士と相談のもと、的確な手続きを進めていきましょう。

 

まとめ

残業代の未払い請求に関しては、退職後でも請求権が認められています。しかし、未払い請求自体は時効期間が決まっており、遡ること3年までです。この点も考慮しながら、まずは明確なタイムカードや給与明細などの証拠をもとに弁護士に相談してみて下さい。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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