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あなたは毎日のように課せられる残業に納得していますか?
「毎月30時間も残業している」
「30時間の残業代ってこの程度なの?」
「残業を減らしたい」
と残業に対して不満をもっている人も多いのではないでしょうか。
日本の労働環境は2019年の「働き方改革」によって改善傾向にありますが、それでもなお残業に悩む人は絶えません。
それどころか、企業のなかには、残業代を支払わなかったり、サービス残業を強いたりするなど、違法行為をおこなっているケースもあり、その悪質性に気づかず働いている従業員がいるのも事実です。
この記事では、残業に関する法概要や日本の平均的な残業時間、残業代の計算方法に触れながら、月30時間の残業が適正なのか、違法性が見受けられた場合はどう対処すべきかを紹介します。
残業に対する疑問を解決するためにも、法的な観点から残業に関する知識をつけておくべきでしょう。
月30時間の残業に疑問をもっている方は参考にしてください。
日本では労働者の心身の健康を維持するため、労働基準法によって企業の労働時間が厳しく規制されています。
まずは、労働基準法で定めてある残業の定義について詳しく見ていきましょう。
一般的にいわれる『残業』とは、労働基準法第32条で定められた『法定労働時間』を超過して働くことを指すことが多いです。
法令用語では『時間外労働』といい、企業は従業員に時間外労働をさせる場合、通常賃金に加えて残業手当を支払わなければいけません。
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法第32条|e-Gov法令検索
また、企業が従業員に時間外労働をさせる場合は、あらかじめ従業員(労働者)の代表者(労働組合や労働者の過半数の代表者)と企業(使用者)の両者間で『36(さぶろく)協定』という労使協定を締結しなければならないのがルールです。
【関連記事】36協定の基礎知識|協定の締結方法と時間外労働の上限規制・罰則内容
前述のとおり、企業が従業員に時間外労働をさせる場合、36協定を締結したうえできちんと所定の残業手当を支払う必要があります。
ここで覚えておきたいのは「残業手当=割増賃金」ではないということです。
実は、残業は以下の2種類があり、それぞれ企業が従業員に支払う手当額が変わってくることが多いです。
法定内残業 |
企業独自が定める所定労働時間は超過しているが、法定労働時間内の労働。 |
法定外残業 |
法定労働時間を超過している労働。 |
前述の2種類の残業のうち、企業が従業員に対して割増賃金を支払わなければいけないのは、企業が法定内残業について割増賃金を支払う旨定めたり合意したりしていない限り、『法定外残業』(法定時間外労働)のみです。
この際のかけ率は、通常賃金の1.25倍と定められています。詳しい算出方法は記事の後半で説明します。
会社の定時は過ぎているけれど法定労働時間内に収まる残業(法定内残業)についても、企業は従業員に対価を支払わなければいけません。
ただし、基本的に金額は割増にならず、通常賃金を超過した分だけ支払うに留まります。
「毎月30時間も残業しているのに割増賃金額が少ない」と感じてしまうこともあるかもしれませんが、その理由にはこのような仕組みが関係していることもあるのだということを理解しておきましょう。
いくら労使間で36協定を締結しているからといって、従業員をいくらでも残業させていいわけではありません。
大企業では2019年4月以降、労働基準法の一部改正に伴い時間外労働や休日労働にも上限が設けられるようになりました。(※中小企業は2023年4月1日施行)
各労働時間における上限規制は、以下のとおりです。
区分 |
法定時間内労働 |
法定時間外労働(原則) |
特別条項に基づく法定時間外労働 |
|
36協定の締結 |
不要 |
必要 |
必要 ※特別条項付き |
|
限度時間 |
1日8時間 週40時間 |
月45時間 年360時間 |
時間外労働 |
年720時間 |
時間外労働+休日労働 |
月100時間未満 月平均80時間 |
|||
期間 |
いつでも |
いつでも |
月45時間を超える時間外労働は 年間6ヵ月まで |
上記のとおり、各区分において定められた時間を超過する労働は禁止されています。
というのも、従業員の働き過ぎは健康障害や過労死を招く危険性が高いため、最悪のケースを防ぐためにもこのような法律が定められたからです。
上記の法規制に照らすと、月平均30時間の残業は、法定時間外労働(原則)における上限規制の範囲内です。
とはいえ、日本全体で見たときに「30時間」という数字が長時間労働にあたるのかどうか知りたい人も多いのではないでしょうか。その点に関して、次の項目で詳しく解説します。
日本では法律によって残業が厳しく規制されていますが、実際の労働現場では、どの程度残業がおこなわれているのでしょうか。
ここからは、労働現場における残業事情について、具体的な数値を参考に見ていきます。月平均30時間の残業と比較してみてください。
就職転職情報サイト「openwork」が2021年12月に公表したデータに基づくと、日本全体における月間残業時間の平均は「24時間」となり、ここ10年間で約20時間も減少していることがわかりました。
この結果は、近年における働き方改革の推進や仕事のテレワーク化が大きく影響していると考えられます。
それにともない、世間ではワークライフバランスを重視する傾向が強くなってきました。
業務時間の調整を図る企業が増加していることも、残業短縮につながっているといえます。
こうした残業時間の推移を鑑みると、月平均30時間の残業は平均よりも長く、一般的には「残業が多い仕事」と印象づけられても仕方がないかもしれません。
参考:「働き方」は10年間でどう変わったのか|働きがい研究所 by openwork
日本全体の残業平均時間はわかりましたが、さらに深掘りして業界別の残業時間にも注目してみましょう。
就職転職情報サイト「openwork」によると、2021年において最も残業時間が長かったのは「コンサルティング・シンクタンク(40.7時間)」でした。
これに続いて「建築・土木・設備工事(37.3時間)」「広告代理店・PR・SP・デザイン(35.1時間)」「監査法人・税理士法人・法律事務所(34.9時間)」となっています。
一方、残業時間が最も短いのは「ファッション・アパレル・繊維(13.5時間)」で、続けて「旅行・ホテル・旅館・レジャー(16.1時間)」「百貨店・専門・CVS・量販店等の小売(17.5時間)」がランクインしています。
ちなみに、約30時間の残業があると回答した業界は「情報サービス・リサーチ(30.8時間)」「不動産関連・住宅(29.7時間)」でした。
また、30時間程度の残業がある業界は、全体のおおよそ3割という結果でした。
そうすると、30時間の残業がある職場は比較的少ないのだとわかります。
いずれの業界も、調査開始の2012年と比べて大きく残業時間が減少していますが、どうしても残業が多くなってしまう業界があるのも事実です。
本当に必要な残業なのか、働き方で工夫できることはないかなど振り返ったうえで、残業代が正しく支払われているかも精査しましょう。
参考:業界別に見る残業時間推移|働きがい研究所 by openwork
「月30時間の残業」は、日本の平均残業時間よりも多いことがわかりました。
そうなると気になってくるのが、企業から従業員へ支払われる残業代です。
法定時間外労働をしたからには、企業から残業代を受け取るのは当たり前のことです。
計算式を理解すれば、ある程度自分でも残業代を算出できるようになります。
企業から正しく支払われているのかを確認するためにも、以下の方法を参考にしてください。
まず、残業代は以下の計算式で求められます。
ここでいう「基礎時給」とは、1時間あたりの基本賃金のことであり、金額を求めるには以下の計算式を用います。
(※)月平均所定労働時間は、企業ごとに異なるため、別途計算する必要があります。
また「割増率」は、どのような条件で残業したのかによって変わってきます。以下の表を参考にしながら、計算式に当てはめてみてください
区分 |
条件 |
割増率 |
法定時間内残業 |
所定労働時間を超過したとき |
通常賃金額以上 |
法定時間外残業 |
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超過したとき |
25%以上 |
休日労働 |
公休に勤務したとき(それにより週40時間を超える場合) |
25~35%以上 |
次の項目で、月30時間残業した場合の残業代を実際に計算します。
前述の計算式をもとに、30時間残業した場合の残業代を出してみましょう。より具体的に算出するため、労働条件は以下のように働いたこととします。
【労働条件】
まず、労働者の1時間あたりの基本賃金を算出するにあたり、以下の計算式で1年間の合計所定労働時間を出します。
上記の式に労働条件を当てはめて計算してみましょう。
上記の結果をもとに、1ヵ月の所定労働時間を出します。
最初の労働条件に「月収20万円」とあることから、基礎時給は以下のように算出されます。
先ほど求めた基礎時給をもとに、残業30時間分の残業代を求めましょう。
法定時間外労働の割増率を用いた計算は次のようになります。
少し手間がかかりますが、基礎時給額さえ把握できれば残業時間に応じて残業代を計算できるため、試してみてください。
また、仮に1ヵ月80時間残業した場合や、1ヵ月30時間の残業代が1年間未払いといったケースも、以下のとおり計算できます。
(基礎時給)1,250×(割増率)1.25×(残業)80時間=(残業代)12万5,000円
(30時間分の残業代)4万6,875円×(月数)12ヵ月=(残業代)56万2,500円
残業代は高額になることもあるため、企業からの支払いが不足していたり未払いが続いたりするようであれば、企業に対して請求をしましょう。
ただし、上記金額はあくまでも概算であるため、正しい額を把握したい場合は専門機関に相談することをおすすめします。
月30時間の残業は日本平均から見ると少し長いことがわかりました。
とはいえ、法律で定められた上限を超過していないため、月30時間程度の残業であれば違法といえないことが多いと考えられます。
しかし、場合によっては残業30時間でも違法になることがあります。
以下のようなケースに該当していないか確認してみましょう。
企業がおよそ残業代を支払うことを想定していなかったり、早々とタイムカードを切らせてサービス残業させたりすると違法になる可能性があります。
特に固定残業代制度を導入している企業に関しては、従業員が一定の残業時間を超過して労働しているにもかかわらず、追加の残業代を支払っていないケースがあるため注意が必要です。
また、従業員にタイムカードを切らせたあと作業を自宅に持ち帰らせる「自宅残業」も、労働と認められれば残業代を請求できる可能性が高くなります。
企業が運用している制度や労働条件を適正と思い込まず、まずは残業代がきちんと支払われているか確認してください。
その際は、給与明細を見ながらなるべく正確に計算するようにしましょう。
もし企業が労使間で36協定を締結していなければ、従業員に残業させること自体が違法です。
そもそも企業は、前述のとおり『法定労働時間』である「1日8時間、週40時間」を超過して従業員を労働させる場合、36協定の締結と労働基準監督署への提出が必須となります。
万が一、この手続きがおこなわれていない場合、企業には厳しい罰が科せられるほか、未払い残業代があれば従業員への支払 が命じられます。
月30時間の残業は、それ自体で労災認定がおりるほどの長時間労働とはいえません。
しかし、企業から残業代が正しく支払われていない場合は労働基準法違反の可能性があり、企業へ未払い残業代の請求をすることが可能です。
従業員の残業について企業がどのような対応をとっているのか、就業規則や雇用契約書でしっかり把握することも大切ですが、そもそも残業に関する規定がどこにも記載されていないなど、根本的な問題の存在も考えられます。
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相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
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確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。