サービス残業は可能な限り拒否したいものですよね。賃金を支払わないで労働をさせるサービス残業は、労働基準法に違反する行為です。
しかし、実態としては多くの方がサービス残業をしている状況です。日本労働組合総連合会の調査によると働いている方の4割弱が「サービス残業をせざるを得ないことがある」と答えています。
引用元:全国労働総連合会|労働時間に関する調査
今回は、サービス残業を拒否するための方法や労働時間・賃金の考え方についてご紹介します。
サービス残業を拒否したいあなたへ
サービス残業を拒否したいけど、会社で不当な扱いをされないか不安で悩んでいませんか?
結論からいうと、サービス残業を拒否しても基本的には解雇の理由にはなりません。
もし、サービス残業した分の残業代を請求したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします。
弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。
- サービス残業の証拠の集め方を教えてもらえる
- 依頼すれば、代理人として会社と交渉してもらえる
- 依頼すれば、裁判手続きを任せられる
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サービス残業を拒否しても解雇されない
「サービス残業を拒否したら、解雇されるのではなか」と考えている方も多くいると思います。
サービス残業はそもそも労働賃金が支払われていない違法な残業です。このような違法な残業を命じられたことを拒否しても、基本的には解雇の理由にはなりません。
ただし、残業を命じられた際にそれがサービス残業を命じるものかどうかは分からないため、労働者側で「これはサービス残業だ」と決めつけて、これを拒否し続けると、それは解雇理由となる可能性があります。注意しましょう。
会社が労働者を解雇するための要件
労働契約法では労働者の解雇を以下のように規定しています。
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法 第三章 第十六条
サービス残業を拒否することは、労働者としてはむしろ当然の対応であるため、当該残業命令がサービス残業を命じるものが確実ということであれば、これを拒否しても客観的合理的理由にあてはまらない可能性は高いといえます。
ただし、労働者側で「サービス残業を命じるものだ」と一方的に決めつけて行動するのは危険です。この点は会社に残業命令の趣旨をよく確認した上で判断して下さい。
サービス残業は労働賃金未払いの違法労働
サービス残業について労働賃金が支払われていない場合、未払残業代を会社に直接請求することができます。この場合、弁護士などの専門家に相談することもひとつです。
サービス残業は違法|労働時間と労働賃金の考え方
サービス残業は、労働基準法37条に違反する行為です。また、労働法などを理解していない労働者に対して、制度を悪用してサービス残業をさせていることもあるようです。
この項目では、サービス残業と労働法についてご紹介します。
サービス残業の違法性
サービス残業は労働者に賃金を支払わずに残業などの時間外労働をさせるため違法です。
時間外労働の考え方
労働時間は、「1日8時間、週40時間以下」と規定されています。
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法 第四章 第三十二条
法律で定められた時間以上の労働をする場合、会社は労働者に対して割増賃金などの時間外労働手当を支払わなければなりません。
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法 第四章 第三十七条
「名ばかり管理職」は残業代請求が可能
企業の中には、労働者を管理職として取扱い、時間外・休日労働という概念自体をなくしてしまうことがあります。
しかし、会社で管理職とされることが、労働基準法上割増賃金支払義務のない「管理監督者」に該当するということにはなりません。このような名ばかり管理職にされて、サービス残業を強いられているというケースは少なくありません。
関連記事:名ばかり管理職とは|違法性や管理監督者との違い・未払い賃金への対処法まで
割増賃金支払対象にならないケースもある
サービス残業は違法な労働ですが、行なった労働の全てが残業代請求などで支払ってもらえるわけではありません。
- 「上司が明示に禁止したのに残業していた」
- 「労働者が会社の指揮命令を受けない状態(自宅等)で完全に任意の状態で残業をした」
上記のような場合は、作業時間は賃金支払対象となる労働時間と評価されず、割増賃金支払対象とならない可能性があります。
サービス残業を拒否するための方法
サービス残業を拒否する際に重要なことは、会社に残業代が支払われるのか確認し、支払われない場合はきっぱりと断る姿勢を示すことです。
この項目では、サービス残業を拒否する他、違法労働をさせる会社を是正させるための方法についてご紹介します。
残業命令の趣旨を確認する
労働者側で「これはサービス残業に違いない」と独自に判断するのは危険です。
まずは業務が割増賃金などの残業代が支払われるのかを明確にしましょう。会社側が「割増賃金支払対象とならない(残業代は出ない)」と説明した場合には、サービス残業を命じるものと考えて問題ないでしょう。
この場合は次のステップに進んで下さい。
きっぱりと断る
サービス残業は、職場の雰囲気や慣行として行われている場合があるため、断るのに勇気がいりますよね。
しかし、賃金が支払われていない労働は拒否する権利がありますので、きっぱりと断る姿勢を示すことが大切です。
曖昧な態度をとってしまうと、相手に「引き受けてくれる」という印象を与えてしまうため、トラブルが複雑化する可能性もあります。
社内で相談して解決させる
サービス残業は、職場環境を悪化させる可能性もあります。
サービス残業をすることが当たり前になってしまう前に、社内の相談窓口などを利用して、職場全体でサービス残業をしないで済む方法を考えましょう。
労働基準監督署に調査・指導を依頼する
サービス残業が職場で当たり前となって、社内での解決が難しい場合は労働基準監督署に調査・指導を依頼することもできます。
労働基準監督署では、労働者からの訴えなどから、立ち入り調査や指導などを行うことがあります。
サービス残業した分の残業代を請求する方法
サービス残業を会社に請求する際の流れは上記の通りです。この項目では、サービス残業の請求方法について詳しくご紹介します。
サービス残業の証拠を残す
サービス残業の改善を求めたり、残業代の請求を行う際には証拠が重要になります。
サービス残業は社内での記録がつけられないという場合もあるため、いくつかの証拠を併用して証明する必要があります。証拠になるものの例は以下の通りです。
- 会社の勤務記録
- パソコンのログオン・ログオフの記録
- 勤務時間を詳細にメモしたノート
会社の勤務記録とパソコンのログイン記録が大きく異なっているということがサービス残業の証拠になります。
残業代を計算する
集めた証拠を元に、実際に支払われている残業代と未払いの残業代を計算して仕分けていきます。
なお、残業代の割増率などは、労働時間や雇用契約によって異なるため、確認しておくことをお勧めします。
会社に請求書を送付する
請求金額が決定したら、会社に通知書として送付します。
送付する場合は支払い期限なども明記しておくといいで しょう。
会社にサービス残業代の請求を拒否された場合
この項目では、サービス残業を行なった分の残業代の請求に会社側が応じなかった場合の対処方法についてご紹介します。
労働基準監督署に申告する
会社に残業代を請求する旨を通知しても解決しない場合は、労働基準監督署に申告します。労働基準監督署では、「賃金不払い残業」として問題解決のための調査や指導などを行います。
関連リンク:厚生労働省|全国労働基準監督署の所在案内
労働審判を起こす
労働基準監督署での解決が難しい場合は、労働審判を起こすことができます。
労働審判とは、労働問題を専門とする審判官1名と審判員2名が問題解決のための判断を行う制度です。労働審判は地方裁判所で手続きができます。
関連リンク:裁判所|各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧
裁判を起こす
労働審判での結果に納得がいかない場合は、通常訴訟(裁判)に移行します。
訴訟(裁判)の場合は弁護士の力が必要になります。早い段階で相談することをおすすめします。
残業代請求をする前に考えておくこと
残業代請求は労働者に認められた権利です。
しかし、会社にとっては違法労働の事実を認めることになるため、やはり揉めてしまいます。
仮に、未払い分の残業代の支払いが認められたとしても、居心地が悪くなることは避けられないことを考えておく必要があります。
サービス残業の相談先
サービス残業を改善したい場合は、いくつかの相談先があります。この項目では、サービス残業の3つの相談先についてご紹介します。
社内のコンプライアンス相談窓口
サービス残業を上司に押し付けられている場合は、パワーハラスメントの可能性もあります。
また、サービス残業自体も違法なため、社内でコンプライアンスなどを取り扱う相談窓口に報告・相談してみましょう。
関連記事:パワハラとは|3つの定義・6つの行為類型と具体的な対処法
労働基準監督署
サービス残業は労働基準法違反なので、労働基準監督署に申告することもできます。
また、労働基準監督署では、問題解決のための相談や調査・指導なども受け付けています。
弁護士に相談する
サービス残業は残業代請求や損害賠償で請求することができます。
個別のトラブルに関して法的手段での解決方法を提案して欲しい時などは無料相談を利用することも可能です。
まとめ
サービス残業は労働者にとっては、可能な限り避けたいものですよね。
サービス残業は、賃金が支払われていない限りは拒否する権利があります。ただ、残業代をきっちりもらう代わりに日頃の業務もストイックに進めるという意識は持っておきたいものです。
この記事で、サービス残業に悩む方の解決のヒントになれば幸いです。