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残業代未払の遅延損害金とは|計算方法と請求手順を解説

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
残業代未払の遅延損害金とは|計算方法と請求手順を解説

未払いの残業代があると「遅延損害金」が請求できると聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、次のような疑問を持っている人もいるでしょう。

 

  • そもそも遅延損害金って何?
  • 付加金とは違うの?
  • 遅延損害金はどれくらいもらえる?
  • 遅延損害金の利率は?
  • 遅延損害金の計算は?
  • 遅延損害金はどうやって計算する? など

 

そこでこの記事では、遅延損害金は何かといった基本的なことから、遅延損害金の利率や計算方法、さらに、適切に請求する方法について解説します。

 

なお、遅延損害金を含めた残業代は、あなた自身で会社と交渉しても適切に支払われるとは限りません。最後には、弁護士に依頼するべき理由についても紹介しますので、あわせて参考にしてください。

残業代が正しく支払われていないあなたへ

残業代が正しく支払われていないけど、どの程度遅延損害金が発生するかわからず悩んでいませんか?

 

結論からいうと、在職中であれば遅延損害金の利率は年3%です。

 

もし、今すぐ未払いの残業代を請求したい場合、弁護士に相談・依頼するのをおすすめします

 

弁護士に相談すると以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遅延損害金がどの程度あるか教えてもらえる
  • 残業代未払いの証拠の集め方を教えてもらえる
  • 依頼すれば、代理人として会社と交渉してもらえる
  • 依頼すれば、裁判手続きを任せられる

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未払い残業代の遅延損害金とは|主な概要と利率

 

遅延損害金とは|支払いが遅れたことのペナルティ

遅延損害金とは、前述の通り残業代などの支払いが遅れたことに損害賠償金のことです。在職中・退職後のいずれでも請求可能で、残業代に加えて請求できる金銭です。

 

遅延損害金が請求できる法的な理由は、未払い残業代が「債務不履行(さいむふりこう)」に該当するからです。

 

債務不履行とは、支払う金銭があったとき、期日までにその金銭が支払われないことをいいます。金銭債務に債務不履行があった場合、債権者は債務者に対して一定の利率で利息を請求できると定めているのです。

 

遅延損害金の利率

遅延損害金は、残業代の元金に一定の利率を掛けて求めます。ただし、適用される利率は在職中か退職後かによって変わります。

 

在職中の遅延損害金の利率

在職中の遅延損害金の利率は、約定がない場合、年3%です。これは、民法第404条によります。

 

(法定利率)

第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

引用:民法404条

 

かつては、商事法定利率の年6%や民事法定利率の年5%が適用されていましたが、商事法定利率は廃止され、民法も改正されたことから、現在では3%となっています(2022年7月現在)。

 

退職後の遅延損害金の利率

退職後の遅延損害金の利率は、年14.6%です。これは、賃金の支払の確保等に関する法律の6条によります。

 

(退職労働者の賃金に係る遅延利息)
第六条 事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年十四・六パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。

引用:賃金の支払の確保等に関する法律第6条

 

なお、同法律では、残業代未払いの原因が天変地異など、厚生労働省令で定めるやむを得ない事情のときには適用されないとしています。厚生労働省令とは「賃金の支払の確保等に関する法律施行規則」のことで、具体的には次のものが該当します。

 

一 天災地変

二 事業主が破産手続開始の決定を受け、又は賃金の支払の確保等に関する法律施行令(以下「令」という。)第二条第一項各号に掲げる事由のいずれかに該当することとなつたこと。

三 法令の制約により賃金の支払に充てるべき資金の確保が困難であること。

四 支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争つていること。

五 その他前各号に掲げる事由に準ずる事由

引用:賃金の支払の確保等に関する法律施行規則

 

遅延損害金と付加金との違い

付加金とは、労働基準法で定められた残業代を払わないときに、残業代と同じだけの金額を支払うペナルティーのことです。これは、未払い残業代や遅延損害金と別途で支払われます。

 

ただし、付加金の支払いが認められるためには、労働者が裁判上で請求し、裁判所に認められなければなりません。裁判外の交渉や、労働審判、裁判手続きでの和解では認められないので注意してください。

 

なお、裁判所が付加金の認めるかどうかは、未払い残業代の金額や理由、その他の事情などが総合考慮されます。

 

(付加金の支払)

第百十四条 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。

引用元:労働基準法第114条

 

未払い残業代に対する遅延損害金の計算方法

未払い残業代の遅延損害金の計算方法は非常にシンプルです。次の計算式に具体的な数字を当てはめると求められます。

 

未払い残業代の遅延損害金の計算方法

遅延損害金 = 未払い残業代合計 × 遅延損害金の利率(年利) ÷ 年間日数(閏年の場合は366日)×遅延日数

 

たとえば、未払い残業代が100万円で、在職中のため利率が3%であり、遅延日数が30日とすると、遅延損害金は、次の通り2,466円となります。

 

100万円×3%÷365日×30日=2,466円

 

なお、残業代は本来、毎月の給料日に支払われるものですから、複数月に渡って残業代が支払われていない場合には、各給料日ごとに遅延損害金を計算しなければなりません

 

残業代に遅延損害金が発生している場合の請求方法

遅延損害金・遅延利息は、未払い残業代の元本とセットで請求するのが一般的です。

 

ここでは、具体的な手順について説明します。

 

 

まずは会社に対して交渉による請求を行う

これは在職中の場合に検討するべき方法ですが、会社と裁判外で協議・交渉して残業代の精算を求めるという方法があり得ます。

 

もっとも穏当かつ簡便な方法であるため、ハードルは低いと言えますが、あくまで裁判外での協議・交渉ですので支払われるべき残業代満額が支払われるかは不透明ですし、会社が交渉に乗ってこない可能性も高いです。

 

紛争処理手続(ADR)の利用

労働局の行うあっせん手続では、雇用上の問題についての協議・交渉の仲介を申し込む事が可能です。

 

裁判に比べて非公開かつスピーディーで低コストというメリットがありますが、そもそも会社にはこれに応じる義務がないため、会社から無視されてしまう可能性もあります。

 

【参考】法務省|裁判外紛争解決手続(ADR)について

 

労働審判

労働審判官(裁判官)1人と専門知識を有する労働審判員2人から成る労働審判委員会に労働問題について申し立て、調停及び審判を求める制度です。

 

原則として3回以内の期日で判断が下されますので、通常の裁判よりもはるかにスピーディーに進行します。

 

また原則として非公開で行われること、低コストであることも特徴。なお、労働審判委員会の判断に異議が申し立てられた場合、自動的に通常の裁判に移行します。

 

訴訟

裁判所に事実を認定して法律を適用し、権利法律関係を確定するよう求める制度です。

 

裁判所は、原告・被告の主張・立証を踏まえて一定の事実を認定し、これを元に権利法律関係の有無について裁定を下します。

 

請求を認める判決が確定すれば、原告は被告の財産に対して強制執行を行うことが可能となります。

 

遅延損害金も含めて未払い残業代を請求したいなら弁護士へ相談を

遅延損害金も含めて、未払い残業代を請求したいのであれば、弁護士への相談がおすすめです。弁護士が代理人になることで、未払い残業代を支払ってもらえる確率がぐんと上がるからです。

 

この記事でも紹介した通り、未払い残業代の請求は、まずは会社との任意での交渉から始まります。しかし、使用者と労働者という立場の違いから、会社が側が未払い残業代の支払いに応じないことも考えられます。

 

しかし、弁護士に依頼すればあなたに代わって交渉してもらえます。弁護士が間に入ったことで会社側がプレッシャーに感じ、任意交渉の段階で会社側が支払いに応じることも少なくありません

 

さらに、労働審判や訴訟は裁判所を通じた手続きですから、弁護士への依頼が必要不可欠です。申立ての手続きもややこしいですし、残業代の支払いを認めてもらうには、適切な証拠を収集し、法的に正しく主張・立証しなければならないからです。

 

いずれにせよ、未払い残業代を請求するには弁護士への依頼が必須です。「ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)」では相談料無料・土日対応の事務所も多数掲載していますので、ぜひお近くの弁護士に相談してください。

 

まとめ

遅延損害金・遅延利息・付加金という未払い残業代のペナルティについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

 

計算方法が複雑で難しい、困ったときには早めに弁護士に相談しましょう。

 

労働事件の実務経験が豊富な弁護士なら、未払い残業代を素早く正確に算出し、請求手続きもしてくれます。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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