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残業月50時間の実態|長時間労働の危険性と違法性・未払い残業代の請求方法まで

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残業月50時間の実態|長時間労働の危険性と違法性・未払い残業代の請求方法まで

毎月50時間を超える残業をしている方で、Twitterで長く残業している方を調べてみると、50時間を超える残業は大半が「しんどい」「辛い」という内容が書かれていますし、法律的な観点から言っても、『36(サブロク)協定』での残業時間の上限(45時間)を超えています。

繁忙期などの単月での50時間超の残業であればまだしも、毎月のように50時間を超える残業をしている方は、明らかに働きすぎですし、そもそも会社が労働基準法に違反している可能性も考えられます。

今回は、残業50時間がどれほど長いのかをご説明し、少しでも残業を減らしていくためにできることについてお伝えします。50時間以上の残業が当たり前という考えはすぐに否定して、現状から改善するためのきっかけにしていただければと思います。

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月50時間以上の残業は明らかに長い|平均残業時間との比較と残業時間の上限

冒頭でお伝えした通り、50時間を超える残業は十分に長いと断言できます。後述するように、平均残業時間よりも長いですし、36協定での上限をも超えています。

可能であれば会社に改善を求めたり、個人で残業を減らす努力をしていき、それでも改善が不可能だと思える場合には、転職も十分に考えて良いくらい労働環境は良くないと言えるでしょう。

50時間残業は平均残業時間よりも長い

企業の口コミなどをまとめたサイト『openwork』が社員約7万人に行った残業時間の調査では、以下の結果が公表されています。

引用:働きがい研究所|openwork

毎月50時間程度の残業は、全体の10%という結果になっており、30時間(14.5%)、40時間(13.7%)、20時間(13.0%)、100時間以上(12.9%) の残業に次いで5番目に多い割合となっていました。

こちらのアンケート結果での全体の平均残業時間は47時間となっており、平均残業時間よりも長いという結果になっています。

ちなみに、厚生労働省が毎月行っている調査では、全国平均の残業時間(所定外労働時間)は、たったの12.4時間しかありませんでした。50時間残業がいかに長いかがお分かりいただけるかと思います。

総実労働時間

所定内労働時間

所定外労働時間

出勤日数

144.5時間

132.1時間

12.4時間

18.2日

参考:毎月勤労統計調査地方調査 令和元年平均分結果概要

50時間残業は1日2時間以上の残業を強いられていることになる

月に50時間残業しているということは、毎日2時間以上は残業していることとなります。仮に1ヶ月20日の出勤であれば、毎日2.5時間は残業していることになりますね。

例えば9時出勤で昼休み1時間を挟んで定時が18時だとした場合、1時間残業して20時半に帰宅するような生活になります。これが週に1~2度であれば多少は乗り切れるでしょうが、毎日続けば疲れも蓄積していきますし、プライベートでやるべきこともおろそかになってしまいがちです…。

【関連記事】労働基準法での労働時間と長時間労働の対処法

50時間残業は36協定による残業時間の上限を超える

労働基準法では、原則として「1日8時間、週40時間(法定労働時間)」以上は働かせてはならないとされています。

もし時間外労働(残業)をさせる場合には、あらかじめ労使で「36(さぶろく)協定」を締結しなければならないのがルールです。

「36協定」があっても時間外労働には原則的な上限時間が定められており、1ヶ月に45時間までしか残業をさせることができません。月50時間の残業は、36協定での残業時間の原則的な上限も超えていることとなります。繁忙期など単月での超過であればまだ良いのですが、毎月50時間を超えて残業しているようであれば、その会社は残業させすぎで、労働基準法違反に該当することも考えられます。

時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。また、月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

引用元:厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

月50時間の残業が続く場合の問題点と健康への影響

50時間の残業を毎月のように行っている方は明らかな働きすぎです。金銭面や身体に対する影響など、様々な問題が出てきやすくなってくると考えられます。

毎月続くようであれば労働基準法違反の可能性が高い

上でもお伝えしましたが、50時間の残業時間は36協定での残業時間の上限時間(45時間)を超えていることになります。

臨時的で特別な事情があり、労使で合意に至っている場合に限って45時間を超えてよい場合がありますが、それでも1年で6ヶ月までです。毎月のように50時間以上の残業を強いられている場合、会社が労働基準法に違反している可能性が考えられ、『6か月以下の懲役または30万円以下の罰金』の罰則を受ける可能性があります。

後述するように、労働基準監督署へ通報するなどの方法も検討してみてください。

長時間労働による心身への影響

過労死』という言葉は聞いたことあるでしょう。過労死と長時間労働の因果関係が強いと考えられる目安の残業時間として、月80時間が過労死ラインとして考えられています

確かに50時間残業であれば、過労死ラインには及びませんが、毎月の長時間労働によって心身ともに疲労が蓄積していくことには変わりありません。

長時間労働により

  • 脳疾患
  • 心疾患
  • うつ病(精神疾患)
  • 注意力低下による事故

などが起こる可能性も高くなってしまいます。

今はまだ影響が目に見えて出ていないかもしれませんが、毎月長時間労働を続け、ご自身も年齢を重ねていくことによって、これらの病気・事故が起こってしまうこともあり得るのです。そのような事態になってからでは取り返しがつきません。今からちょっとずつ、少しでも労働時間を減らしていける方法を模索していってください。

未払い残業代問題

上の計算例でお伝えしましたが、50時間の残業をしていればだいたい10万円前後の残業代が発生していることになります。しかし、実際には残業してもしなくても手取りが変わらない状況の方も少なくありません。

会社からしてみれば、支払う残業代は余計に増えた支出となります。悪質な会社では、あの手この手を使って残業代を払わない理由を作っています(払っているていにする)。

例えば、『固定残業代』です。あらかじめ給与の中に○○時間分の残業代を含ませておき、その時間内の残業であれば、適切に残業代を支払っている根拠とするものです。正しく運用されていれば問題ありませんが、多くのケースで不適切な運用が行われており、残業代が未払い状態になっている方も多いです。

残業しているのに残業代が支払われていない方は、どうか弁護士などに相談して支払われていない残業代が残っていないかどうかを確認されて下さい。

月50時間残業の残業代はいくらになる?残業代の目安と計算方法

こちらでは、実際に50時間残業した場合のおおよその残業代の例や計算方法などについてご説明していきたいと思います。

残業代の計算と言うと少し難しいように思えるかもしれませんが、大まかな計算方法は1時間当たりの賃金を求めて、それに残業時間と割増率をかけるだけですからそこまで複雑というわけではありません。

残業代の基本的な計算式

残業代=【時間外労働の時間】×【1時間あたりの賃金】×【割増率】

残業代の計算式は上記のようになります。

1時間当たりの賃金を求める

上の式に【1時間当たりの賃金】とありましたが、【基準賃金÷1ヶ月あたりの平均所定労働時間】で求めることができます。

所定労働時間とは雇用契約で決められている労働時間のことですが、「1日8時間、週40時間」の法定労働時間の範囲内で決めることになりますので、1ヶ月あたりの平均所定労働時間となるとだいたい160~170時間程度になるでしょう。


実際に年間休日の差などで変わってきますので、ご自身の会社の就業規則を見ながら計算してみてください。

【関連記事】所定労働時間とは|労働時間の定義と法定労働時間との違い

月給の基礎部分から除外する手当の例

また、一般的に言われる月給には、色々な手当等が含まれており、残業代の計算からは除外する必要があるものもあります。

ざっと除外する手当を挙げると、

  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 臨時の賃金(祝い金など)
  • ボーナス

があります。このような賃金は基準賃金には含まれません

他方、これ以外の手当(例えば役職手当、業務手当、調整手当等)は基準賃金に含めることになります。基準賃金は基本給だけではなく、各種手当を含めて計算される点は注意しましょう。

【関連記事】
残業代を計算する際の基本給(基礎賃金)に関する正しい知識

残業代の計算例|基本給30万円(手当なし)の方が50時間の時間外労働をした場合

それでは、基本給30万円(手当なし)と仮定して、50時間残業した場合の残業代を実際に上記の式に当てはめて計算してみましょう。

1時間当たりの賃金の計算

まず残業代を求めるにあたって、1時間当たりの賃金を求める必要があります。ここでは1月の平均所定労働時間を160時間と仮定します。

30万円÷160時間=1,875円

1時間当たりの賃金は【1,875円】ということになります。

残業代の計算

時間外労働の割増率は1.25です。そのため、上記の賃金単価に割増率(1.25)を乗じた上で、50時間に対応する金額を算定してみましょう。

1,875円×50時間×1.25=117,187円

このように【117,187円】が上記例での50時間の時間外労働に対応する残業代ということになります。

賃金単価は人それぞれですし、残業が時間外労働か休日労働か深夜労働かで割増率も違いますので、実際の算定結果はケース・バイ・ケースです(なお、歩合給制の給料の場合、残業代の算定方法が異なり、通常の給料よりも残業代は少なくなります。)。

例を参考にして、実際にご自身の基本給と所定労働時間を当てはめて計算してみてください。

残業時間を極力短くするために出来ることと未払い残業への対処法

ここまでの内容をまとめると、50時間残業は十分に長すぎると言うことができます。働きすぎで、このまま続けていることで心身ともに影響が出てくることが考えられますので、早いうちから改善をしていくことをお考えください。

例えば、1日1時間の残業時間を減らすことができれば、月に30時間程度の残業にまで落ち着かせることができます。そうすることによって、今までより時間的・精神的な余裕も出てくるはずです。

1日1時間の残業であれば、本人のちょっとした工夫で変えられることもあるでしょう。一方、どうしても残業を減らせる状況にない方や残業代が支払われていない粗悪な環境の方は、転職や労基署・弁護士への相談など、外部への協力を得ることも考えてください。

残業をしないための工夫を凝らしてみる

残業が当たり前のようになっている方は、残業することを前提に仕事をしている方も多いかと思います。「本来定時までに○○を終わらせて、それ以降は△△の資料を作って…」などと、あらかじめのスケジュールから残業する上で計画を立てているような場合です。

一度考え方を切り替えて、残業しないように効率的に仕事を終わらせられないかを考えてみてはいかがでしょうか。

明らかに自分だけでは抱えきれない業務は他の方に振ってみたり(その方の負担になり過ぎないように)、効率的に仕事を進められるシステムの導入を検討してみたり、工夫次第では1日1時間程度の労働時間削減は十分に可能な場合もあります。

今より残業が少ない会社・業界に転職する

自分ひとりの努力だけで残業を減らすのが難しいと感じたら、もっと残業の少ない会社に転職することも検討してみましょう。

人材不足に喘ぐ企業が多い中、“働きやすい職場”づくりに真剣に取り組み、積極的にアピールしている会社は意外と多いものです。

50時間残業は平均残業時間よりも長いですから、他の会社に目を向けてみると今よりも労働環境が改善されることも十分に考えられます。

性別
年齢
直近年収

労働基準監督署への通報

長時間労働や未払い賃金などが考えられる場合、労働基準監督署に通報することで、会社に対して是正勧告を行ってくれる場合があります。

これによって会社は改善をしていくようになり、将来的に残業時間削減も期待できるでしょう。ただし、労働基準監督署は労働基準法違反の事実がある状態でないとなかなか行動を起こしてくれません

長時間労働や未払い賃金などの情報を伝えるためにも、就業規則やタイムカードなどの資料を持って相談されることをおすすめします。

未払い残業代の請求をする

退職する際は、弁護士に依頼して未払い残業代を請求することも検討しましょう。もし、後日残業代を請求するつもりであれば、日頃から証拠を集めておくことも大切です。

こちらも、タイムカードや勤怠記録、PCのログイン・ログオフ記録、メールの送受信履歴、就業規則、雇用契約書など、労働時間や賃金体系を明確にする証拠は勤めている内にできる限り沢山収集しておいた方が良いでしょう。

まとめ

50時間残業は十分に長い残業時間うだと言えます。このまま毎月続くようでしたら、会社の労働基準法違反もあり得ますし、心身への負担も蓄積していくことでしょう…。

他にもいくら働いても手取りが増えないといった、未払い残業代問題に該当する方も少なくないでしょう。今回お伝えした内容を参考にして頂きながら、まずは今の職場で改善できる方法を探していってみてください。

どうしても改善が難しいケースでは、転職を検討しつつ、きちんと受け取れていない未払い賃金はしっかり請求していく方向性で考えていきましょう。

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本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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