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リストラの種類と不当解雇に該当しない4つの要件

更新日
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
このコラムを監修
リストラの種類と不当解雇に該当しない4つの要件

リストラとは、リストラクチャリングの略語で、会社側が経営上の理由、経済上の事情により人員削減の手段としておこなう解雇のことをいいます。

2020年から2021年では、新型コロナの影響もあり、多くの会社が人員削減や退職者募集をおこないました。

東洋経済が調査した「正社員を減らした500社」では、正社員数が5年前と比較して50%も減少している企業もあります。

正社員を減らした会社ランキング

引用元:東洋オンライン「正社員を減らした企業」最新500社ランキング

経営難の状況に対し、人員削除をおこなうこと自体違法ではありませんが、解雇までの方法が強引であったり、合意のないまま解雇されてしまった場合は、不当解雇に該当する可能性があります。

この記事では、リストラの種類と正当な解雇といえる要件について紹介します。

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結論からいうと、労働基準法で通告者に対して不当な扱いをしてはならないと定められています。

 

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リストラの5つの種類

勤めている会社の人員削減によって、解雇された場合のみ「リストラ」と考える方が大多数ではありますが、実際は「リストラ」には転籍や転属、賃金のカット、減給、降格などを含む場合もあります。

また、希望退職者を募るなどして従業員を自主退職へと導くことによって、解雇よりも少ないコストで人員を削減することもリストラに含まれています

大前提として、会社側からの一方的な雇用契約打ち切りを解雇といって、被雇用者側から打ち切りの申し出を退職といいます。

すなわち解雇通告以外の次のような通告もその後の自主退職に繋がることによって、リストラとみなされます。

  1. 退職勧奨:いわゆる「肩たたき」と呼ばれる、直接的では無く間接的な表現での打診。
  2. 賃金やボーナスのカット:正当な理由のない給料の減額やボーナスカットなど。また、職場で職歴が同等な従業員と比較した場合の極端な減額、または急に減額された場合。
  3. 配置転換:キャリアアップなどの妥当性が考えられにくい部署への配置転換等。
  4. 降格:降格による精神的な打撃はその後の自主退職へと繋がる事由となります。
  5. 転籍:親会社に籍をおいたまま子会社に勤務する「出向」とは違い、親会社から子会社へと完全に籍を移すことで親会社へ戻ることは非常に難しくなります。

リストラと普通解雇・不当解雇・懲戒解雇との違い

リストラが会社側が経営上の理由、経済上の事情による人員削減であるのに対して、普通解雇や不当解雇、懲戒解雇とは何がちがうのでしょうか。

普通解雇

労働者の労働能力の低下や労働適性の欠如、勤務態度不良など、労働者に起因する理由でおこなわれる解雇のことになります。

リストラによる整理解雇や懲戒解雇とは区別して使われ、一般的に「解雇」といわれるものは、この普通解雇を指しています。

不当解雇

不当解雇とは、労働基準法や就業規則の規定を守らずに、事業主の都合で一方的に労働者を解雇することをいいます。

不当解雇となる例としては、

  1. 「労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇」
  2. 「業務上の負傷や疾病のための療養期間およびその後30日間、ならびに産前産後休暇の期間およびその後30日間の解雇」
  3. 「解雇予告をおこなわない解雇」
  4. 「解雇予告手当を支払わない即時解雇」
  5. 「労基法やそれにもとづく命令違反を申告した労働者に対する、それを理由にした解雇」
  6. 「労働組合に加入したことなどを理由とする解雇」
  7. 「不当労働行為を労働委員会等に申し立てなどをしたことを理由にした解雇」
  8. 「女性であることを理由とした解雇」

が主なものとしてあげられます。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、企業秩序違反行為に対する制裁罰である懲戒処分としておこなわれる解雇のことです。

懲戒すべき事由があるからといって、使用者は自由に労働者に対し懲戒処分をすることはできず、

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

引用元:労働契約法15条

として、法律で懲戒処分の濫用は禁じられています。

整理解雇(リストラ)の4要件とは

整理解雇を有効におこなうためには、通常の解雇の場合と同様客観的合理性があり、社会通念上相当なものである必要がありますが、整理解雇の場合、次の4要件を充足する必要があるとされています。

人員整理の必要性

企業の維持存続のため、人員削減の必要性があることです。

どの程度の必要性があるかについては必ずしも確実な基準はありませんが、客観的にみて企業が高度の経営危機にあり、解雇による人員削減以外に打開の方途がないと認められる場合などといわれています。

解雇回避努力義務の履行

会社が経営危機にあっても直ちに整理解雇に踏み切ることは許されず、解雇以外の方策により経営改善を図っていることが必要となります。

具体的には、残業の削減、新規・中途採用の削減・中止、配転・出向・転籍、希望退職者の募集などが挙げられます。

被解雇者選定の合理性

整理解雇の対象となる労働者の選定方法に客観的合理性があることが必要となります。

過去の勤務成績や会社への貢献といった要素を考慮して選定をおこなえば、比較的、合理性が肯定されやすいといえます。

手続の妥当性

整理解雇について、労働協約に解雇協議条項や解雇同意条項などがある場合には、それによる必要があります。

また、これらがない場合であっても、整理解雇の必要性、時期、方法について十分な説明、協議をせずに整理解雇に踏み切った場合、手続の妥当性が否定され、解雇が無効となる可能性があります。

リストラによる解雇は4要件の妥当性が重要

1~3までは整理解雇をおこなうことへの「合理的な理由」が存在するのかどうかが問題にされています。

実際にリストラによる解雇をおこなうにあたり4の「手続の妥当性」が、非常に重要です。

ほかの3つの案件が揃っていても、労働者の納得を得るための手順を踏まずにいきなり解雇通告することは絶対にできません。

リストラが始まる可能性のある会社の特徴

リストラのような人員削減をおこなわないといけない業績不振に悩まされている会社は、少しずつリストラの準備をはじめているかもしれません。

この項目では、一般的にリストラがおこなわれる前の会社の特徴をまとめてみました。

長期的な仕事を任されなくなる

業務の引継ぎなどのことも踏まえ短期完結できる仕事ばかりを任せることがあります。

徐々に仕事を取り上げて労働者を追い詰めていく「追い出し部屋」などは違法性が高いと言えます。

仕事内容や量が急に変更される

今まで大きな変化がなかったにも関わらず、急に仕事内容や量が減ったり単純な作業ばかり任されるようになったりする場合、会社が労働者の評価や選定を行なっている可能性があります。

社内の雰囲気がピリピリする/コスト削減をよく聞くようになる

上司から今まで無かったコピー用紙の無駄遣いを指摘されたり電気のつけっぱなしを言われたりした場合は、会社の経営がうまくいっていないことも考えられます。

社内の雰囲気がピリピリしてきたと感じたら、なぜそうなったのか冷静に見極める必要があります。

自社や関連会社の株価低下・不祥事

自社や関連会社の株価が極端に下がったり何か不祥事が起きたりした場合は、下請けや労働者にしわ寄せが来るかもしれません。

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レイオフ(雇用調整)とは

レイオフとは再雇用を条件とした一時的な解雇のことを言います。

企業の業績が悪化した際に人件費を抑えるため、リストラによる人員の削減とともに、レイオフをおこない一時的に人員を削減する雇用調整がおこなわれます。

一時的な解雇とも言われている

レイオフによる解雇は、業績が回復し人員を採用する際に優先的に再雇用されることが前提になっていることから、「一時的」な解雇といわれています。

アメリカやカナダでは、独特の雇用慣行として、「先任権」という制度(先任権制度)が広く認められています。

レイオフをされるとどうなるのか?

解雇や再雇用だけでなく、配置転換や昇進、休職などがおこなわれる場合にも、勤務期間の長さによって優先的に扱われるという制度で、「古参権」と呼ばれることもあります。

ある企業でレイオフが実施されると、先任権の低い(勤続期間の短い)従業員から順にレイオフされ、レイオフ終了時には、レイオフ中の従業員のなかでも先任権の高い者から再雇用されます。

ただし現在では、レイオフもリストラ同様、単に大規模な解雇を意味し、再雇用は想定されないといったケースも見受けられるようになってきました。

最近では、東南アジア諸国や中国においても、雇用調整の一つの方策としてレイオフがおこなわれるようになりましたが日本の企業では一般的ではありません

日本での雇用調整は、早期自主退職制度や新規採用者を控えるといった方法でおこなわれます。

リストラにあった際に考えるべき5つのこと

もしも、リストラによる人員削減の対象になってしまった場合は、以下の方法が取れないかどうかをご自身の状況と照らし合わせてみてください。

希望退職者募集は慎重に考える

規模が大きい会社は、リストラをおこなう前に希望退職者を募ることが一般です。

希望退職では退職金が割増されるなどさまざまな好条件が提示されますが、希望退職は慎重に考える必要があります

退職後の就職先や収支バランス、貯金の残高などを自分本位でいいのでしっかり考えて、これを機に転職するのもいいでしょうが、行き先に不安があるようでしたら手を挙げないようにしましょう。

リストラが不当だと感じたら退職後に解雇理由証明書をもらう

もしも、リストラに納得がいっていなければ、会社から解雇理由証明書を貰うようにしましょう。

解雇理由証明書は、従業員からの請求があれば、必ず発行しなければなりません。

解雇理由証明書は不当解雇で抗議する際などで重要な証拠にもなるのです。

執拗な退職勧奨は違法性が高い

正式に会社からリストラの勧告が来る以前に、退職勧奨がおこなわれる場合が考えられます。

退職勧奨とは、「辞めたらどうだ」という雰囲気を従業員に伝え、自己都合による退社を勧めてくる方法です。

退職勧奨は会社と労働者の間で合意があれば問題はないのですが、執拗に退職を勧める行為は強要罪にあたる可能性があります。

リストラが不当だった場合の対処法

なんの前触れもなく解雇された、解雇の理由が明らかに上司からの嫌がらせである、パワハラによって退職を強要されたという場合は不当解雇や違法な退職勧奨の可能性があります。

この項目では、不当解雇や違法な退職勧奨の対処法を紹介します。

不当解雇は損害賠償請求や地位確認を求めることができる

解雇の理由が、合理的ではなく一方的なものである場合は、解雇の撤回を求めることができます

労働契約法16条では、合理的な理由がない解雇は無効であるとしています。

不当な理由による解雇は、この法律と過去の判例から「解雇権濫用法理」として解雇を無効とすることが明文化されています。

第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法

執拗な退職勧奨はパワハラとして訴えることができる

執拗な退職勧奨は、労働者を精神的に追いやる違法性の高い行為です。

退職勧奨自体は違法ではないのですが、人事部などの立場を利用して労働者の雇用を脅かすような言動をおこなった場合はパワーハラスメントにあたるのです。

不当解雇や退職などの不利益処分は弁護士に相談する

不当解雇や退職などの不利益処分は、解雇の撤回や損害賠償を請求することができます

不当解雇によってうつ病などの働けない状態になってしまった、離職して働けなかった分の労働賃金を請求したいなどの場合は弁護士に相談することも考えてください。

まとめ

度重なる緊急事態宣言に伴い、経営がひっ迫し退職希望者を募集したり、退職勧奨にあう可能性があります。

退職勧奨の中には、退職したくなくても上司からの圧が強く、拒否したら仕事を任せてもらえなくなったなどのトラブルも発生しています。

このような退職は不当解雇に当たり、解雇を撤回したり、本来もらえるはずだった解雇手当を請求することが可能です。

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この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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「 不当解雇 」に関するQ&A
会社から不当に解雇されました。この場合、会社に何を請求することが出来るのでしょうか。

不法な解雇により労働者に不利益が生じた場合、労働者は企業相手に慰謝料請求を行うことが出来ます。
その際請求が出来るのは、解雇されたことにより受け取れなかった期待賃金になります。
ただし、解雇の不当性は弁護士を通じて正しく立証する必要があります。

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退職するよう会社から圧力をかけられています。拒否することは出来ないのでしょうか。

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会社から退職を勧められたとしても、それに従う必要はありません。今の会社に残りたいと考えるならば、拒み続けても問題ありませんので、安易に退職届にサインをするのは控えましょう。
それでもパワハラなどを絡めて退職を強要してきた場合には、損害賠償を請求できる可能性が生じますので弁護士に相談するのも一つの手です。

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一方的にリストラを通知され、明日から来なくていいと言われましたが、リストラだからと言って急に辞めされることは合法なのでしょうか。

リストラ(整理解雇)を行うためには、選定の合理的理由や、解雇回避努力の履行など、企業側が満たすべき要件が複数あります。
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懲戒解雇を言い渡されましたが、納得がいきません。懲戒解雇が妥当になるのはどのような場合でしょうか。

就業規則に明記されていない限り、会社が何らかの事由によって懲戒解雇処分を通知することは出来ません。まずは会社の就業規則を確認しましょう。
また、重大な犯罪行為や重大な経歴詐称など、著しく重要な問題に抵触しない限り懲戒解雇を受けることはありません。
会社の裁量基準に納得がいかず、撤回を求めたい方は早急に弁護士に相談しましょう。

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試用期間中に解雇を言い渡されましたが、違法性を主張することは出来ますか。

前提として、企業は求職者を採用する際に長期契約を念頭において雇用契約を結ぶため、試用期間を設けられたとしても「向いてなさそうだから…」や「なんか気にくわない…」という理由で一方的に解雇することは出来ません。
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