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整理解雇とは何か|整理解雇された際の対処法と解雇の4要件を詳しく解説

更新日
中野雅也 弁護士
このコラムを監修
整理解雇とは何か|整理解雇された際の対処法と解雇の4要件を詳しく解説

整理解雇(せいりかいこ)とは、企業が経営危機にある等を理由として人員削減を目的とする解雇のことです。

昨今の新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言による外出自粛、それに伴う飲食店、旅行業界を中心とした急激な業績の悪化が生じており、多くの会社において、事業の維持継続を図るため、「部署の統廃合」や 「過剰人員の削減」が検討されています。

2020/09/01のニュースでは、コロナによる解雇・雇い止めされた人数は5万人を超えるとされています。

コロナ影響で解雇・雇い止め 全国で5万人超 見込み含め 厚労省

新型コロナウイルスの影響で、解雇されたり、契約を更新されない「雇い止め」にされたりして、仕事を失った人は、見込みも含めて全国で5万人を超えたことが、厚生労働省の調査でわかりました。

この調査は、全国のハローワークを通じて把握しているもので、企業の業績悪化などで仕事を失った人は実際にはさらに多いとみられます。

引用元:NHK

表:新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(8月21日時点)

全国

新型コロナウイルスに係る雇用調整

雇用調整の可能性がある事業所数

解雇等見込み労働者数

82,015事業所

48,206人

「雇用調整の可能性がある事業所」は、都道府県労働局及びハローワークに対して休業に関する相談のあった事業所(当面休業を念頭に置きつつも、不透明な経済情勢が続けば解雇等も検討する意向の事業所も含む。)

「解雇等見込み」は、都道府県労働局及びハローワークに対して相談のあった事業所等において解雇・雇止め等の予定がある労働者で、一部既に解雇・雇止めされたものも含まれている。

 

雇用調整の可能性がある事業所数

解雇等見込み労働者数(人)

1

製造業

15,711 (+401)

製造業

7,575 (+150、うち非正規67)

2

飲食業

10,621 (+85)

宿泊業

6,985 (+77、うち非正規17)

3

小売業

8,375 (+147)

飲食業

6,876 (+1,098、うち非正規964)

4

サービス業

7,181 (+141)

小売業

5,931 (+109、うち非正規62)

5

建設業

4,881 (+166)

労働者派遣業

3,845 (+105、うち非正規94)

6

卸売業

4,267 (+54)

卸売業

3,036 (+92、うち非正規9)

7

宿泊業

4,016 (+112)

道路旅客運送業

2,866 (+2、うち非正規0)

8

医療、福祉

3,976 (+93)

サービス業

2,751 (+59、うち非正規13)

9

理容業

3,668 (+25)

娯楽業

1,715 (+116、うち非正規102)

10

専門サービス業

2,882 (+41)

物品賃貸業

1,011 (+0、うち非正規0)

全体

 

82,015 (+1,525)

 

48,206 (+2,556、うち非正規1,863)

括弧内は前週からの増加分。

参考:厚生労働省|新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について

当然企業は、整理解雇や雇い止めを行わないために、役員報酬の削減交際費等の経費の削減残業を禁止するなどのさまざまな施策を講じていると思われますが、そういった状況の下でも、突然、解雇を言い渡され、明日から来なくても良いと通告されたというのであれば、話しは変わってきます。

労働者は、労働基準法および労働契約法等の労働法規によって手厚く保護されており、新型コロナウイルスによって経営が悪化したからといって、全ての解雇が法的に有効になるとは限りません。

また、整理解雇は、落ち度のない労働者を経営上の理由で辞めさせるものであって、労働者の生活や将来設計に大きな影響を及ぼします。

そこで、整理解雇には、解雇権濫用法理の適用において厳格にその有効性が判断されるという制約が課せられています。

今回は、

  • 「整理解雇とは具体的にどのようなものなのか」
  • 「突然、整理解雇の対象になったしまった人ができること」

を中心に解説していきます。整理解雇のことを理解してもらい、少しでもあなたの状況を良くする参考になればと思います。

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整理解雇の4つの要件

業績が悪くなり、事業の存続が厳しくなった場合、いつでも労働者を整理解雇していいというわけではありません

整理解雇は労働者に責任があるものではなく使用者の経営上の理由により行われるものであって、整理解雇の4つの要件(又は4つの要素)によって、その有効性が厳格に判断されています。

使用者側は、基本的にこの4要件を満たしていなければ、労働者を整理解雇することができないと理解しておきましょう。

人員整理の必要性

まず、『①人員削減の必要性が認められること』が必要になります。人員を削減することに企業の合理的な運営上やむを得ないものであるかどうかが重要です。

企業側は、「経営が悪化した事実」を具体的な経営指標や数値をもって、どの程度経営状態が悪化しているのかを明らかにし、どの程度の人員削減が必要であるのかを客観的資料や検討結果に基づいて労働組合や労働者に説明する必要があります。

解雇回避努力義務の履行

次に、「②解雇を回避する義務を履行している」必要があります。人員削減の手段として整理解雇を行う前に、労働者に対する影響が少ない他の手段を行ったか?が重要になります。

使用者は、人員削減を行う場合には、解雇回避の努力をすべき義務があります。

したがって、解雇回避の手段によって対処が可能であるのに、いきなり整理解雇に及んだような場合には、当該解雇は、解雇権を濫用するものとして無効とされる可能性が高いでしょう。

解雇回避の手法には次のようなものがあります。

  • 交際費等の経費削減
  • 新規採用の停止
  • 時間外労働の中止(残業規制)
  • 他部門への配転
  • 役員報酬の減額
  • 賞与の減額・停止
  • 一時帰休(一時的な休業)の実施
  • 希望退職者の募集
  • 雇用調整助成金の利用
  • 非正規社員の解雇

解雇する従業員選定の合理性

さらに、「③人選の合理性」が必要になります。整理解雇の対象を決定する基準(誰を解雇するか)が、合理的かつ公平であり、併せてその運用も合理的であることが求められます。

整理解雇がやむを得ない場合でも、使用者は、客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用するなどして、被解雇者を選定しなければなりません。

具体的には、勤務地、所属部署、担当業務、勤務成績、会社に対する貢献度、年齢、家族構成等の客観的な要素を勘案して、解雇される者が選定される必要があります。

簡単にいえば、整理解雇する従業員を恣意的に選んではいけない。ということです。

従業員への十分な説明

最後に、「④手続の相当性」が必要になります。具体的には、整理解雇を実施するまでの間に、使用者は、労働組合および従業員に対し、整理解雇の必要性やその具体的内容(規模、時期等)について十分に説明をし、誠意をもって協議や交渉をしなければなりません。

なお、労働組合との間に、解雇協議条項の定めがある場合は、労働組合に対する説明や協議は必須になります。

このような個別説明等の手続を全く踏まず、抜き打ち的に整理解雇を実施することは、認められません。

整理解雇を避けるために確認すべき処遇

その整理解雇は正当か?を吟味する

上記で説明した整理解雇の4要件は、解雇が有効なのか?の判断基準の柱となっています。

整理解雇の4要件を欠く解雇は、解雇権の濫用として無効になります(労働契約法16条)。

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法16条

もしも、整理解雇の4要件が大幅に満たされていないのであれば、それは「不当解雇」になります。正当な解雇ではないので、整理解雇は無効であるとして争う余地が出てくるのです。

会社が実施した整理解雇を無効と判断した裁判例は多くあります。会社の行った整理解雇の判断が、正しいとは限らないのです。

あなたが、少しでも「おかしいぞ?」「不合理ではないか?」と感じるのであれば、労働組合や弁護士に相談し、自らがおかれている状況を確認しましょう。

30日前の解雇予告がなく解雇されていないか

使用者が、労働者を解雇する場合、30日以上前に解雇の予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要性があります。

解雇予告解雇予告手当がない場合は、整理解雇の4要件における④手続の相当性において使用者に不利に扱われるでしょう。

何の説明もなく整理解雇通知が来ていないか

整理解雇の通知が、解雇の30日以上前に来ても、それまでに従業員に対して何も説明がなかった場合、整理解雇の4要件における④ 手続の相当性の要件を欠き、解雇が無効になる可能性が高まります。

残業量や役員の報酬が変わらない|求人募集をしているのに解雇されていないか

整理解雇の4要件の会社の解雇回避努力が認められず、解雇が無効になる可能性が出てきます。

他にもケースバイケースで様々な事情があるかと思いますが、会社やあなたの置かれた状況と整理解雇の4要件を比較してみるとよいでしょう。

もしも、疑わしい整理解雇がされているようでしたら、一度弁護士へご相談ください。解雇無効の主張や解雇後の賃金請求などの法的な措置が取れるかもしれません。

整理解雇で退職金はもらえるのか?

会社が就業規則や退職金規程において、「退職金」の支給基準を定めている場合は、基本的に整理解雇であっても退職金が支給されます

しかし、就業規則や退職金規程がない場合は、会社は従業員に対して退職金を払う義務がそもそもありません

会社との間で交渉して退職金を支払うという約束を取り付けなければ、退職金をもらうことはできません。退職金がもらえない場合は、失業手当という国で労働者をサポートする制度があるのでそちらを利用しましょう。

参考:退職金の金額|厚生労働省

整理解雇の際は退職金が上乗せされることが多い

退職金が支払われる会社で、整理解雇が行われた場合は、退職金規程の定めにより、通常の退職金に上乗せして支払うことが多くあります

これは、整理解雇が、会社の経営上の理由とする解雇であることや、希望退職者を募集する際にも退職金の上乗せをすることとのバランスを採るものであると思われます。

また、整理解雇は、会社都合の退職になりますが、確認してもらいたいのが、実際の退職理由が自己都合なのか、会社都合なのかです。

自己都合と、会社都合では、会社の規模や、勤続年数で違いはありますが、もらえる退職金が変わってきます

以下の算定では、金額が100万円違ってきます。

退職金の計算方法

退職金は、会社の退職金規程の定め方、それぞれの勤続年数や役職等で変わってきますので、すべてがこの計算式に当てはまるわけではありませんが、平均的な計算方法を出すと

退職金=1か月分の基本給×勤続年数×給付率

となります。

給付率も会社によってまちまちですが、よくある数値は、自己都合退職で58%、会社都合退社で67%になります。これを計算式に当てはめてみましょう。

例えば、勤続年数25年の50歳、月の基本給が35万円だとしましょう。

  • 自己都合の場合:350,000×25×0,58=507万5000円 となります。
  • 会社都合の場合:350,000×25×0,67=586万2500円 になります。

このように、退職理由が異なるだけで、支給される金額が大きく変わってきます。

会社の退職金規程に計算式等が定められていますので、「退職金の計算がしたい」などと会社に伝えて退職金規程の交付を受けて具体的に計算をしてみましょう。

【関連記事】退職金の未払い・支払われない時の請求手順と3つの重要な証拠

解雇に関して弁護士へ相談・依頼する3つのメリット

不当解雇の疑いがある方が弁護士に依頼することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。

不当解雇かどうかがきちんと判断できる

まずお伝えしたように、弁護士に不当解雇の状況を相談することで、実際にそれが不当解雇なのかどうかをきちんと法的に判断してもらえます。

自分では納得できないけど、会社が言っているしな・・・」と、泣き寝入りしそうになっている方はいませんか?

弁護士から「不当解雇」の可能性が高く争う余地があると言われたのであれば、今後、不当解雇の撤回を要求し、解雇期間中の賃金を請求していく決心が付くでしょう。

解雇の撤回を要求する

それでは、実際に不当解雇だったとして、大きく2つの方法を取ることができます。まずは、解雇が無効であると主張し、解雇を撤回してもらうよう交渉してもらうことです。

解雇期間中の賃金を請求する

そして、解雇が無効であると主張し、解雇期間中の賃金を請求することができます。

解雇が無効であって従業員としての地位が存続しているが、会社が働くことを理由なく拒否しているので、実際に働いていなくても賃金が発生し続けているという理屈になります。

弁護士に交渉を依頼すれば、あなたが会社と直接対峙して交渉しなくてもよくなりますので、精神的な負担は軽減されますし、弁護士の法的知識や経験を借りることができるので、目標とする解決に向かって行動することができます。

まとめ

整理解雇は、会社の経営上の理由による人員削減であり、労働者に非がない解雇であるといえます。

上記したように整理解雇の4要件が厳格に判断されることで、整理解雇が無効になった裁判例が多く存在します。会社の判断が必ず正しいというわけではないのです。

  • 突然の整理解雇で会社からまともな説明がなかったとか、
  • 自分が整理解雇の対象にされたのかの理由が良くわからない など

少しでも不合理であると思うのであれば、弁護士に相談して自分の立ち位置を確認した上で、次にどのような行動に出るべきであるのかを検討することが必要になると思われます。

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この記事の監修者
飯田橋法律事務所
中野雅也 弁護士 (東京弁護士会)
大江忠・田中豊法律事務所を経て飯田橋法律事務所を設立。中小企業法務(契約、労務、債権回収、顧問弁護士等)を中心とし一般民事、労働(解雇)及び家事(相続)事件等のリーガルサービスを提供している。
編集部

本記事はベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ労働問題(旧:労働問題弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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