残業手当とは?手当の種類・計算方法・請求方法を解説

労働時間は、労働基準法や就業規則等によってあらかじめ決められています。
あらかじめ決められた労働時間を超えて労働をおこなった場合は、残業手当を受け取れる可能性があります。
しかし、あらかじめ決められた労働時間を超えて労働をおこなっているのに、正当な給与が支払われていない・残業手当を受け取ったことがないといったケースも少なくありません。
では、残業手当を請求したい場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。
この記事では、
- 残業手当がどういったものか
- 労働時間の考え方と概要
- 残業手当を請求する場合の方法と注意点
について詳しく解説していきます。
残業手当とは
残業手当とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」や就業規則等で定められた「所定労働時間」を超えた残業分に対して支払われる賃金を指します。
なお、会社によって「残業手当」以外の名称が定められている場合もあります。
労働基準法 第三十七条
『使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。』
引用元:e-Gov法令検索
なお、残業手当の割増率に関しては状況に応じて異なります。
たとえば、法定労働時間である1日8時間、もしくは1週間で40時間を超える場合は1.25倍の割増賃金を支払わなければならないと決められています。
また、ひと月あたりの残業時間が60時間を超えた場合は、1.5倍の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、このルールはこれまで大企業のみが対象でしたが、2023年4月からは中小企業も対象となります。
所定労働時間と法定労働時間の定義
所定労働時間と法定労働時間の定義は、それぞれ以下のとおりです。
- 所定労働時間は「就業規則や雇用契約書に記載されている労働時間」のこと
- 法定労働時間は「労働基準法が定める労働時間(1日8時間以内・週40時間以内)」のこと
所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で定められます。所定労働時間に関しては、就業規則や雇用契約書などに記載されているケースが多いです。
残業には「法定内残業」と「法定外残業」がある
ここからは、法定内残業と法定外残業の定義についてみていきましょう。
法定内残業とは
法定内残業とは、「所定労働時間を超えているが、法定労働時間は超えていない残業」を意味するものです。
たとえば、所定労働時間が7.5時間に対し8時間労働をおこなった場合は、その分の賃金を受け取ることができます。
しかし、実労働時間は法定労働時間内に収まることから、就業規則等に定めがない限り、割増しされた賃金を受け取ることはできません。
法定外残業とは
法定外残業とは、「法定労働時間を超えた残業」を指します。 法定外残業であれば、割増賃金が発生します。
たとえば、1日で9時間の労働をおこなった場合、法定労働時間を超えた1時間分について割増賃金が発生します。
残業手当はアルバイトやパートでも受け取れる
残業手当はアルバイトやパートといった雇用形態にかかわらず受け取ることができます。
原則として1分単位で計算されるため、数分でも残業をおこなった場合、残業手当の支払いが必要となります。
職種・役職によっては受け取れない場合もある
ただし、職種・役職によっては残業手当が受け取れないケースもあります。
【残業手当を受け取れないケース】
- 管理監督者である場合
- 農業等に従事する者である場合など
勤務形態が特殊な場合はケースごとに判断する
年俸制やフレックスタイム制など勤務形態が特殊な場合は、その状況に応じて計算することになります。
通常の勤務形態の場合に比べ、やや計算が難しいため、弁護士に相談するとよいでしょう。
残業手当以外に受け取れる手当
残業手当以外に受け取れる手当には、以下のようなものがあります。
休日出勤手当
休日に出勤した場合は、休日出勤手当を受け取ることが可能です。
割増率は、法律で決まっている法定休日の場合は1.35倍となり、それ以外の法定外休日の場合は就業規則等で定められている割増率となります。
深夜手当
22:00~5:00の時間帯に働いた場合は、深夜手当を受け取ることができます。
深夜手当の割増率は1.25倍となっています。
未払いの残業手当を請求する方法
ここからは、未払いの残業手当を請求する方法についてみていきましょう。
①直接交渉して請求する
費用をかけたくない場合は、会社に直接交渉して請求することが可能です。
ただし、会社が話し合いに応じる姿勢を示さなければ交渉は難しいでしょう。
また、状況によってはトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
②内容証明郵便を送付する
すでに退職している場合などは、内容証明郵便を送付することが考えられます。
ただし、内容証明郵便に関しても会社に支払う意思がなければ無視されるケースも考えられます。
③労働基準監督署に申告する
残業時間を計算したうえで会社と直接やり取りをしたくない場合は、労働基準監督署に申告する方法もあります。
ただし、申告を受けて労働基準監督署が事業主に指導・是正勧告したとしても強制力はありません。
また、申告にあたっては証拠が必要となります。
④労働審判で請求する
①〜③いずれの方法でも応じてくれない場合は、労働審判で請求する方法があります。
労働審判は、労働問題を速やかに解決するための法的手続であり、通常の訴訟と比べ短期間での解決が望めるうえ、労働審判での結果には法的効力もあります。
調停で解決する場合もあれば、労働審判が下されるという流れになる場合もあります。
ただし、労働審判に対し異議の申立てがなされた場合には、訴訟手続に移行することになります。
⑤訴訟で請求する
時間や費用がかかっても、未払いの残業手当を確実に受け取りたい場合は、訴訟を提起しましょう。
個人での対応が難しいケースもあるため、弁護士に依頼することも検討すべきです。
証拠集めのアドバイスなどももらえます。
未払いの残業手当を受け取るためのポイント
ここからは、未払いの残業手当を受け取るためのポイントについてみていきましょう。
証拠を準備しておく
証拠として有効なものは、次のとおりです。
【残業手当の請求に関する証拠として有効なもの】
- 労働契約書、雇用通知書、就業規則など労働契約の内容がわかるもの
- タイムカード、パソコンのログデータなど労働時間がわかるもの
- 業務命令を示すメールやメモ、書類・給与明細や源泉徴収票など
- 取引先への営業メールをはじめ、業務に関連するメールなど
残業手当の請求は時効成立前におこなう
残業手当請求の時効は3年です。そのため、残業手当を請求したい場合は、早めの対処が必要です。
たとえば、入社から10年間継続的に残業が発生していたとしても、遡ることができるのは3年前までということになります。
個人での請求対応が不安な場合は弁護士に依頼する
残業手当を請求するにあたっては、残業手当に関する法的な知識が必要になります。また、会社の反論にも対応しなければなりません。
そのため、個人での残業手当の請求が不安な場合には弁護士に依頼するのがよいでしょう。
個人での請求だとつまずきやすい項目
残業手当の請求について、つまずきやすい項目として以下のものがあります。
- 立場や勤務形態などの会社の反論に対してうまく返すことができない
- 残業手当の正確な計算ができない
- 有効な証拠がわからない
- 労働基準監督署相談・申告したが残業手当が支払われない
残業手当の問題解決を弁護士に依頼するメリット
ここからは、残業手当の問題解決を弁護士に依頼するメリットについてみていきましょう。
残業手当が未払いになっているかどうか計算してくれる
残業手当がどのくらい発生しているのかを正確に計算してもらえます。
残業手当の額を把握することで、その後の方針も立てやすくなります。
どのような証拠を集めればよいかアドバイスしてくれる
現在保有している証拠も含めて、どのような証拠があれば残業手当を請求できるのかをアドバイスしてくれます。
仮に証拠が足りなかった場合でも、証拠集めも手伝ってもらえるため、自分ひとりで対応するよりも効果的に証拠を集めることが可能になります。
請求対応を一任できる
残業手当の請求を弁護士に依頼した場合は、個人で対応する必要がなくなります。
また、裁判後に会社が対応しなかった場合の手続なども依頼することができます。
最後に|残業手当のトラブルは弁護士に相談
残業手当のトラブルは、個人で対応できるケースもあるものの、会社側に問題を解決する意思がない場合には個人で対応するのは難しいことが多いでしょう。
状況に応じて、証拠集めや残業手当を請求するための法的手続も必要となります。
しかし、すべて個人で対応するのは難しく、手間や時間もかかることでしょう。
迅速かつ円滑に問題を解決するためにも、残業手当のトラブルは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、正確な残業手当の金額を把握することができるほか、法的手続になった場合でも対応を一任することができます。
弁護士への相談で残業代請求などの解決が望めます
労働問題に関する専門知識を持つ弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。
・未払い残業代を請求したい
・パワハラ問題をなんとかしたい
・給料未払い問題を解決したい
など、労働問題でお困りの事を、【労働問題を得意とする弁護士】に相談することで、あなたの望む結果となる可能性が高まります。
お一人で悩まず、まずはご相談ください。あなたの相談に、必ず役立つことをお約束します。

【残業代を取り戻そう!】残業代請求・不当解雇は相談料0円◆成功報酬制◆残業代が取り戻せなかったら後払いの費用(弁護士報酬)はいただきません!※事務手数料・実費についてはお支払いを頂きます。※詳しい料金は詳細ページへ※外出不要で相談可能【電話・オンライン相談(予約制)】
事務所詳細を見る
【不当解雇・残業代請求/初期費用0円の完全成功報酬制】「突然解雇された」「PIPの対象となった」など解雇に関するお悩みや、残業代未払いのご相談は当事務所へ!不当解雇・残業代請求の実績多数。年間の残業代回収実績7.8億円!【全国対応|LINEお問い合わせ◎】
事務所詳細を見る
【残業代を取り戻そう!】残業代請求・不当解雇は相談料0円◆成功報酬制◆残業代が取り戻せなかったら後払いの費用(弁護士報酬)はいただきません!※事務手数料・実費についてはお支払いを頂きます。※詳しい料金は詳細ページへ※外出不要で相談可能【電話・オンライン相談(予約制)】
事務所詳細を見る
【未払い残業代の回収/不当解雇/退職代行に対応】◆正当な残業代を弁護士に依頼で簡単に請求◆会社の人と話す必要なし【勤続年数半年以上/月の残業時間が40時間超の方必見!】<料金表は詳細ページに>
事務所詳細を見る当サイトでは、有料登録弁護士を優先的に表示しています。また、以下の条件も加味して並び順を決定しています。
・検索時に指定された都道府県に所在するかや事件対応を行っている事務所かどうか
・当サイト経由の問合せ量の多寡


残業代請求に関する新着コラム
-
本記事では、専門業務型裁量労働制における、残業代や深夜手当・休日手当の考え方、未払いの残業代等の計算方法・請求方法について、具体例を挙げつつ分かりやすく解説しま...
-
労働基準法にもとづいて36協定を結んでいても、月45時間以上の残業が年間7回以上ある場合には違法となります。本記事では、違法な長時間労働に関する相談先について詳...
-
時間外労働が月60時間を超えている場合、1.50%以上の割増賃金を受け取れる可能性があります。そのため、労働基準監督署や弁護士への依頼を検討するのがおすすめです...
-
残業代をボーナス(賞与)に含めて支給する会社があるようですが、労働基準法に照らして不適切な取り扱いです。残業代とボーナスは区別して支給しなければなりません。本記...
-
会社に対して残業代を請求する際には、残業をした事実を証拠によって立証できるようにしておく必要があります。 本記事では、残業代請求をしたいけれどタイムカードがな...
-
毎月支給する給料の額を、残業代込みで労働者に示している企業が多数見られます。 本記事では、残業代込みの給料を定めることの是非、固定残業代制のポイント、追加残業...
-
医師は非常に高度な専門職ですので、時間外労働や残業代がどの程度発生しているかも判断がしにくい職業と言えます。しかし、医師に専門業務型裁量労働制の適用はありません...
-
36協定は残業に関する協定ですが、守られていない会社が多いです。本記事では、36協定とは何か、違反のケース、違反していた場合の対処法などを解説します。
-
会社から残業を強制されても、会社が残業の要件を満たしていれば拒否はできません。しかし、残業の要件を満たしていなければ残業の強制は違法となり、従う必要はないでしょ...
-
変形労働時間制で働いてる場合、残業代が全く支払われないケースも少なくありません。しかし、制度の十分な説明がなく場合によっては悪用されていることもあるでしょう。 ...
残業代請求に関する人気コラム
-
変形労働時間制とは、労働時間を月単位や年単位で調整することで清算する労働制度です。教職員の働き方改革としても導入が検討されている変形労働時間制には、導入の条件や...
-
仕事とプライベートの時間のバランスを保つためにも、労働時間と共に重要になることが、年間休日の数です。
-
裁量労働制は、あらかじめ定められた労働時間に基づき報酬を支払う制度です。本記事では、裁量労働制のメリット・デメリットや仕組み、2024年の法改正における裁量労働...
-
固定残業代とは、残業時間にかかわらず、毎月一定額が残業代として支給されるものです。労働者にとって大きなメリットがある一方、企業が不正に運用すれば、被る不利益も大...
-
「36協定について知りたい」、「残業が多いので会社に違法性がないか確認したい」などのお悩みを抱えている方に向けて、この記事では36協定の締結方法、時間外労働の上...
-
過労死ラインとは労災給付の基準であり、月に80〜100時間を超える労働は深刻な健康障害を引き起こす可能性が高いとして、抑制する取り組みが広まっています。この記事...
-
最近よく耳にするようになった「ブラック企業」というワード。ブラック企業の残業時間はどのくらいなのでしょう。また、残業代を請求するための手順や、請求した際に受け取...
-
みなし残業とは賃金や手当ての中に、予め一定時間分の残業代を含ませておく制度です。みなし残業制度(固定残業制度)だから残業代は出ないという話しはよく聞きますので、...
-
労働基準監督署は域内の事業所が労働基準法を守って運用しているか監督しています。勤務先の会社が労働基準法を守っていない場合、労基署に相談すると指導勧告をしてくれて...
-
休日出勤とは、その名の通り休日に出勤することです。会社によっては休日出勤が当たり前のようになっている所もあるでしょうし、本来払われるべき休日手当が支給されない企...
残業代請求の関連コラム
-
「未払いとなっている残業代を請求しようと思い、雇用契約書を見返してみたが、どうも残業代(時間外労働)の記載がないようである。」今回の記事は上記のようなケースを想...
-
36協定は残業に関する協定ですが、守られていない会社が多いです。本記事では、36協定とは何か、違反のケース、違反していた場合の対処法などを解説します。
-
過労死ラインとは労災給付の基準であり、月に80〜100時間を超える労働は深刻な健康障害を引き起こす可能性が高いとして、抑制する取り組みが広まっています。この記事...
-
店長職には『残業代は出ません』という説明をされた経験はありませんか?労働基準法では『管理監督者』に対しては残業代の支払い義務はありません。しかし、いわゆる名ばか...
-
判例を元に未払い残業代請求をして受け取れる和解金の相場を解説。未払いの残業代を会社へ円滑に請求するために、必要な準備をわかりやすく提案します。
-
今回は、毎月40時間の残業をしている方に、残業時間を減らすポイントや正しく残業代を支払ってもらうための計算方法や残業の基礎知識をお伝えします。
-
文書提出命令とは何か、どのような効果があり、どんな文書の提出を命令してもらえるのかを解説!労働問題では残業代請求や不当解雇などの証拠を取れる可能性が高い「文書提...
-
みなし残業で働いている方の中には、みなし残業の多さに疑問を持った方もいるともいます。労働基準法で定められている残業の上限は45時間。45時間を超えたみなし残業は...
-
本記事では、未払いとなっている残業代の請求方法や対処法、企業に支払わせるための手順などを解説します。未払いの残業代を請求したい方は、ぜひ参考にしてください。
-
残業代請求をしたい方が弁護士を探すときのポイントをご紹介します。インターネット上にある情報の信ぴょう性や、評判のよい弁護士の特徴などを解説していますので、弁護士...
-
残業手当とは、所定労働時間や法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる手当のことです。この記事では、残業手当の計算方法や、未払いの残業手当の請求方法などを解説し...
-
サービス残業は、個人名を出さなくても告発できる場合があります。タイムカードを実際とは違う時間に打刻させたり休日出勤を強制したりするサービス残業は違法です。この記...
相談者様ご自身で保管していなくても、弁護士に依頼することで会社に開示請求を行う事ができます。
タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。