変形労働時間制の悪用とは?事例と対処方法について解説
社会全体で多様な働き方が認められる中で、繁忙期の労働時間が長くなりやすい業種はいくつもあります。
そのため、変形労働時間制と呼ばれる働き方が認められており、会社によっては変形労働時間制を採用しているケースも想定されるでしょう。
そして、変形労働時間制であっても残業代や法定休日の出勤分の割り増し賃金が発生します。
しかし、変形労働時間制のルールをよく把握していなければ、未払いの残業代があることに気づかない場合もあるでしょう。
労働者の知識のなさに便乗して正規の割り増し賃金を支払わない会社も散見されます。 本記事では、
- 変形労働時間制の概要
- 変形労働時間制を悪用している事例
- 悪用されている場合の対処方法
について詳しくみていきます。
変形労働時間制とは?種類と法律上のルール
変動労働時間制とは、労働時間の長さを月単位・年単位などで調整する働き方のことを意味します。
たとえば、繁忙期と閑散期の差が大きい業界では、変形労働時間制によって繁忙期の労働時間を長く、閑散期の労働時間を短く設定することで、業務量と人員のバランスを図ることができます。
3種類の変形労働時間制
変形労働時間制には、次の3種類があります。
1週間単位の変形労働時間制
規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業に限り、労使協定および労働者への事前通知に基づき、1日10時間まで労働させることができます。
1ヵ月単位の変形労働時間制
→労使協定に基づき、1か月以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が週40時間を超えない範囲で、各日の労働時間を調整できます。
1年単位の変形労働時間制
→労使協定に基づき、1か月超1年以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が週40時間を超えない範囲で、各日の労働時間を調整できます。
変形労働時間制の上限ルール
変形労働時間制の労働者に適用される労働時間の上限ルールは、次のとおりです。
- 1週間単位の変形労働時間制―1日10時間以内、週40時間以内
- 1ヵ月単位の変形労働時間制―週平均40時間以内(1ヵ月160時間~177.1時間以内)
- 1年単位の変形労働時間制―1日10時間以内、週平均40時間以内かつ各週52時間以内、1年間であれば2091.4時間以内
所定労働時間を超えれば残業代が発生する
変形労働時間制であっても所定労働時間を超えた場合は、残業代が発生します。
週間や月単位で労働時間を割り振ったとしても、もともと設定していた労働時間を超えた場合は、残業として扱われます。
そのため、「変形労働時間制だから残業代が発生しない」と言われた場合は、未払い残業代が発生している可能性が高いです。
こんな場合は変形労働時間制が悪用されている可能性がある
次のような場合は、変形労働時間制が悪用されている可能性があります。
長時間労働に伴う残業代は、変形労働時間制でも支払いが必須である点にご注意ください。
長時間労働が当たり前になっている
変形労働時間制を適用する場合でも、1週間当たりの平均労働時間は40時間以内とされており、それを超える場合は時間外労働となります。
繁忙期と閑散期の間で調整がなされず、長時間労働が常態化している場合には、変形労働時間制が悪用されている可能性があります。
残業代が全く支払われていない
1週間当たりの平均労働時間が40時間を超える場合、変形労働時間制であっても残業代を支払う必要があります。
変形労働時間制を言い訳にして、労働時間にかかわらず残業代が支払われていない場合は、制度を悪用されている可能性が高いです。
所定労働時間がわかりにくい
変形労働時間制を適用すると、所定労働時間に対してどのくらいの時間働いたのかが、労働者にとってもわかりにくくなる側面があります。
これを悪用して、労働者に過酷な長時間労働をさせ、または正規の残業代を支払わない会社もあるようです。
勤怠記録を確認できないなど、労働者側が労働時間を把握しにくい状態になっている場合は、変形労働時間制の悪用を疑うべきでしょう。
休日出勤が当然のようにおこなわれている
法定休日における出勤には、変形労働時間制にかかわらず残業代(休日手当)が発生します。
また、法定休日における出勤を命じる際には、使用者は労使協定(36協定)の定めに従わなければなりません。
変形労働時間制を理由に、法定休日でも出勤して当然という空気が蔓延している場合や、休日出勤の手当が支払われていない場合には、変形労働時間制が悪用されている可能性があります。
会社が意図的に変形労働時間制を悪用していた場合の対処法
会社が変形労働時間制を悪用していると思われる場合には、以下のいずれかの方法によって対応しましょう。
- 自分で交渉する
- 労働基準監督署に相談する
- 弁護士に相談する
自分で交渉する
変形労働時間制の悪用を指摘して是正を求めれば、労働基準監督署への申告や裁判手続きなどを恐れて、会社が自主的に是正を図る可能性があります。
労働基準法のルールに従い、会社による変形労働時間制の悪用が違法であることを、説得的に指摘することが大切です。
会社との間で合意が成立すれば、その内容をまとめた示談書を締結します。特に未払い残業代が発生している場合には、精算すべき金額は支払方法などを明確に定めましょう。
労働基準監督署に相談する
変形労働時間制の悪用は労働基準法違反に当たるため、労働基準監督署に対してその旨を申告できます。
労働基準監督署へ相談する際には、会社による違法行為を示す証拠資料を持参することが大切です。
労働基準監督署が違法行為の存在を疑うに至れば、事業場に対する臨検(立ち入り調査)や行政指導がなされる可能性があります。
ただし、労働基準監督署は会社に対する行政指導などを行うにとどまり、労働者のために未払い残業代を回収してくれるわけではありません。
会社に対して直接未払い残業代を請求するには、自分で会社と交渉するか、または弁護士に請求を依頼する必要があります。
弁護士に相談する
弁護士には、会社とのトラブルの解決を全般的に相談できます。
未払い残業代の請求、長時間労働の是正、労災の損害賠償請求など、労働者の置かれている状況や希望に合わせてアドバイスやサポートを受けられます。
弁護士を通じて会社と交渉し、法的な根拠に基づく主張をすることで、労働者に有利な形でトラブルを解決できる可能性が高まります。
労働審判や訴訟などの法的手続きが必要になる場合でも、弁護士に依頼すればスムーズに対応してもらえるでしょう。
最後に
変形労働時間制を悪用して、労働者に不当な長時間労働をさせ、または正規の残業代を支払わない会社は少なくありません。
会社による不当な取り扱いに悩んでいる方は、弁護士への相談をおすすめします。
状況に合わせたアドバイスを受けることができ、さらに会社との交渉・労働審判・訴訟などの対応を全面的に依頼できます。
会社に対して長時間労働の是正や未払い残業代の支払いを求めたい方は、お早めに弁護士へご相談ください。
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この記事の監修
ゆら総合法律事務所
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タイムカードはもちろん、PCの起動ログから残業時間を立証できた事例もございますので、証拠が手元に無くても泣き寝入りせず弁護士に相談しましょう。
確かに労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくても良いと明記されておりますが、会社で定める「管理職」が労働基準法で言う「管理監督者」に当たらないケースもあります。
この場合は会社側が労働基準法違反となり、残業代を支払う義務を負います。このような名ばかり管理職問題についてまとめた記事がございますので、詳しくはそちらをご覧ください。
固定残業時間以上の残業を行った場合、その分の残業代は適切に支払われる必要があります。また、36協定の都合上、基本的に固定残業時間の上限は45時間とされております。
固定残業時間を上回る残業を行ったり、会社が違法な固定残業代制度をとっていた場合はもれなく残業代請求が可能です。直ちに弁護士に相談しましょう。
残業代請求に対する企業からの報復行為は、そのほとんどが違法とみなされているため積極的にされることはありません。
ただし、少なからず居心地が悪くなる懸念もあります。一般的には在職中に証拠を集めるだけ集め、その後の生活を守るために転職先を決めてから残業代請求を行うのがベターと言えるでしょう。
残業代請求の時効は3年となっております。
退職してからゆっくり残業代請求を行う場合、どんどん請求可能期間が短くなってしまいますので、一早く請求に対して動き始めましょう。
また、弁護士に依頼して内容証明を会社に送ることで、時効を一時的にストップさせることが出来ます。






